(13)Twenty Four 家族
私たち夫婦は、息子ともども、 “Twenty Four”にすっかりはまっている。これは架空の組織CTU(テロ対策ユニット)の活躍を描くアメリカのアクション・ドラマで、毎週、息子が借りて来てくれるDVDを暇を見つけてはポップコーンやアイスクリームを食べながら観るのが日課になっている。アクションも面白いが、私たちが一番魅かれるのは主人公のJack Bauerをめぐる人間関係である。パソコンを自在に操作するChloe O’BrianはJack Bauerの活躍には欠かせないサポート役で、仏頂面で目つきと口の悪い女だが、Jackが無理な仕事を頼んでも献身的に仕事をこなす。CTU内の上司から辛くあたられて落ち込んでいる時や、大事な仲間が任務で傷を負ったり命を落とした時に、元の夫のMorris O’Brianが無言で温かく慰める。ChloeのJackに対する絶対的な敬意ともとれる愛情とMorrisに対する質の違う愛情に心を打たれることが多い。男女間の関係では、しばしば愛情に伴う嫉妬心が憎悪や偏見を生むものだが、それを超えた懐の深いMorrisの愛から学ぶことは多い。法や規則に反してでも、信念に基づいて行動する、決して弁解をしないJackの生き方にも感動する。Jackは大袈裟な表現をしないが、犯人を問い詰める時の射通すような目つきと、子供や愛する人と接する時の穏やかな目つき、心ならずも仲間を失ったり、暴走する仲間すら任務のためには裁かなければならない時の悲しみの目つきは、口数が少ないだけに余計に印象的である。
心を許していた女性捜査官のRenee Walkerをロシアの狙撃手に撃たれて失った時、Jackは執念の鬼になったように行動する。湾岸戦争で共に戦ったJim Rickerに援護を依頼した時、Jimは国を守るという大義のために身の危険をおかしてまで執拗に敵を追うJackに本心を尋ねる。崩れるように椅子に座ったJackが「大切な人が殺された」と吐き出すように言うと、Jimはそれ以上のことは尋ねずに即座に援護を承諾する。国のために命を投げ出すことは崇高なことかも知れないが、愛する人のために生命を賭すことの方がもっと崇高な行為だということに私は共感する。大切な人を失ったという、たったそれだけを聞いて、自分の身の危険も顧みずにJackに手を貸すことを承諾したJimのような友人を持つJackを羨ましく感ずる。 “A friend in need is a friend indeed.”という諺があるが、JackとJimの友情は、そのような諺が薄っぺらに思えるほど遙かに深い領域にあると思う。そのような友情、信頼の基底にはJackの純粋な人柄があるということも事実である。
国のためとは言え、数々の法を破ったJackは国の司法関係者からも追われるが、国外の秘密機関からも命を狙われ、CTUのChloeたちの援護のもと姿をくらますことになる。無人偵察機を経由してChloeと話すJackが「CTUに来てから今まで君には色々援けてもらった。有難う」と言葉少なに初めてお礼の言葉を言う時、Chloeの目から止めどなく涙が溢れた。最後に無人機のカメラに目をやるJackの淋しげな顔をモニターで見ながら「もう消して!」と言ってChloeが立ち去る場面を何度も繰り返して見て、その度に私たちも涙をこらえることが出来ない。色々な形の愛のことを考えさせられ、反省したり愛の喜びを噛みしめたりしながら私たちはアイスクリームを食べている。
《英語教育センター ホームページ》URL:http://www8.plala.or.jp/EECmine4264/*随筆2「ひとりごと」(13)より
(2)〜(4)は私の入院中のこと。(6)は英語教室の授業のことが書いてあります。
*随筆1 は「生い立ちの記」で現在は「ランカスター神学校」までupしてあります。
次は「フィラデルフィア」ですが、近日upします。
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