オリゲネス
真の言葉と題されたケルソスの著作への反論
第一巻
朱門岩夫訳
最終更新日2018/12/22
1 キリスト教を中傷しようとするケルソスの最初の要点は、次のようなものである。「キリスト者たちは、現行法に逆らって、互いにひそかに契約を結んでいる。なぜなら契約の内、法に則したものは明白であり、法に逆らって履行されるものは隠されているものだからである」。そしてケルソスは、キリスト者たちの相互愛が「(彼らに降りかかる)共通の危険から成り立つもので、誓約以上の力を持つ」として、それを中傷しようとしている。さてケルソスは、「公の法」について大々的に語り、キリスト者たちがこの法に違反して契約を立てていると言っているのであるから、このことについて次のように言わなければならない。もしもある人が残虐な法を持つスキタイ人たちのもとにいて、そこを退く機会を持たず、彼らのもとで生活するように強制されたなら[1]、当然その人は、スキタイ人にとっては違法であるが、真理の法のゆえに、自分と同じことを考える人々とともに、スキタイ人たちによって認められた法に逆らって契約を結ぶであろう。それと同じように、真理の法廷の下では、異教の人たちの法、すなわち彫像や冒涜的な神々についての法は、スキタイ人たちの法であり、場合によっては彼らの法よりも冒涜的であろう。それゆえ、真理のために、現行法に逆らって契約を結ぶことは不条理なことではない。実際、国政を掌握した暴君を追放するために、幾人かの人々がひそかに契約を結んだとしても、それは正しいことであろう。これと同じようにキリスト者たちも、自分たちのもとで悪魔と呼ばれる人や欺瞞が専制を振るっている場合には、この悪魔に逆らって、そして、いわばスキタイ人たちと暴君の法律から遠ざかるように説得することができる他の人々の救いのために、悪魔に認められた法律に違反する契約を結ぶのである。