51 さてイエスの誕生の場所について、「ベツレヘム」から「支配者が出てくる」と言われている。すなわち、「そしてエフラタの家、ベツレヘムよ、お前は、ユダの数千人の中でもっとも小さい者。お前の中から、イスラエルに君臨する者が私のために出る。また彼の出生は、元に、永遠の日々にさかのぼる[1]」と。この預言は、ケルソスの書物に登場するユダヤ人が言っているように、(救い主が)上から来たと言っている神憑りか乞食の誰一人にも相応しくないだろう――もしも(キリストが)ベツレヘムに生まれたことが、あるいは別の人が言うように、(キリストが)ベツレヘムから民を支配するために来たということが明瞭に証明されないならば。しかしイエスがベツレヘムで生まれたことについて、もしも人が、ミカの預言やイエスの弟子たちによって福音書の中に書き記されている歴史に続いて、別の典拠から確信を得たいと望むのであれば、その人は、イエスの誕生に関する福音の物語に従って、彼が生まれたベツレヘムの洞窟と彼が産着に包まれていた洞窟の飼い葉桶が(証拠として)示されていることに気づくべきである。しかもいま示された事跡が様々な場所で、また信仰とは無縁の人たちの間でも、有名なのである。実際、この洞窟の中で、キリスト者たちによって拝まれ賛美されているイエスが生まれたのである。また私は、キリストが到来する以前には、民の大祭司たちと律法学者たちが、預言の明晰さと明瞭さのゆえに、キリストがベツレヘムで生まれることを教えていたと思うのである。そしてその話は、ユダヤの多くの人々のところにも届いていた。それでヘロデも、民の大祭司と律法学者に尋ねて、キリストがダビデの生地であるユダヤのベツレヘムに生まれるということを彼らから聞いたと書き記されているのである。そればかりかさらに、『ヨハネによる福音』の中でも、キリストがダビデの生地であるベツレヘムで生まれるとユダヤ人たちが言ったと述べられている[2]。しかしキリストの到来後、彼の誕生が初めから預言されていたというキリストについての推測を何とか無効にしようと努める人々は、こうした預言を民から取り上げたのであった。彼らは、イエスの死者からの復活を目撃して、それを知らせた墓守の兵士たちを説き伏せて次のように指図した者たちにどことなく似ている。「お前たちは、彼の弟子たちが私たちの寝ている間に、夜陰にまぎれて彼を隠したと言いなさい。そしてもしもこのことが支配者の耳に入ったら、我々が説得して、お前たちに面倒なことが起こらないようにする[3]」と。



[1] Mi.5,2.

[2] Jn.7,42.

[3] Mt.28,13-14.

 

次へ