ドミニコ会基本会憲

 

ラテン語規範版からの日本語訳

朱門岩夫 訳

1997


第1項

教皇ホノリウス3世は、本修道会の目的を次の言葉で表明し、聖ドミニコと彼の諸兄弟に書き送っている。「ご自分の教会を新しい子らによって常に豊かになさるおん者は(1)、現代を過ぎ去りし時代と一致させ、カトリックの信仰を広めることを望まれた。そこであなたがたが清貧を受け入れ、律修生活を宣立し、神のみ言葉の勧告に励まされて独身生活を営み、全世界に我らの主イエス・キリストのみ名を告げ知らせるようにと、あなたがたに敬虔な愛の感情を吹き込まれたのである(2)」。

第2項

実に、聖ドミニコによって創立された説教者兄弟会は、「その初めから福音宣教と魂の救いのために設立されたものであることが知られている(3)」。したがって我ら諸兄弟は創立者の掟に従って、「各自の救いと他の人たちの救いとを得ることを望み、どこにおいても誠実かつ敬虔に身を持さなければならない。そして福音の人として、救い主のみ跡に従いつつ、神と共にあるいは神について、自分自身にあるいは隣人たちに語らなければならない(4)」。

第3項

しかし、このようにキリストに従いつつ、神への愛と隣人への愛とにおいて前進するために、我々は、修道誓願によって我らの修道会に加えられ、全面的に神に献身し、新しい方法で、すなわち「神のみ言葉の」余す所なき「福音宣教に全面的に派遣されることによって(5)」普遍の教会に身を捧げなければならないのである。

第4項

我々は、使徒的使命に参与しなければならないと同時に、聖ドミニコによって構想された様式に従って使徒たちの生活を採用し、心を一つにして共同生活を営み、福音的諸勧告の誓願を忠実に守り、共同の典礼祭儀の挙行、取り分けミサ聖祭と聖務日課および祈りに熱心に励み、勉学に精進し、修道戒律を粘り強く遵守しなければならない。これらのことはみな、神の栄光と我らの聖化に役立つだけでなく、さらに人々の救いに直結している。それらは、相和合して福音宣教の備えとなり、福音宣教へと駆り立て、福音宣教に形を与える。また、逆にそれらのことが福音宣教によって形を与えられるのである。これらの諸要素が相互に固く結び合わされ、首尾よく調整され、互いに他方によって豊かにされるとき、それらの諸要素の総合の内に、本修道会固有の生活が、すなわち十全な意味における使徒的生活が組み立てられる。福音宣教と教えとは、この使徒的生活の中で豊かな観想の結果として生まれなければならない。

第5項

我々は、司祭叙階によって司教団の協力者になり、預言職を固有の職務として持つ。この預言職によってイエス・キリストの福音は、人間と時と場所の諸条件に応じて、言葉と模範とによって至る所で告げ知らされる。このようにして信仰が呼び起こされ、あるいはキリストの体の建設のために全生活を一層深く強化するのである。このキリストの体は、信仰の諸秘跡の中で完成される。

第6項

修道団体としての本修道会の形態は、その使命と兄弟的交わりとから生じる。すなわち、み言葉と信仰の諸秘跡との奉仕は、司祭の務めであるから、我々の修道会は、聖職者会である。さらにこの使命には、共通祭司職を特別な方法で行使する協力兄弟も、さまざまな仕方で参与する。また、言葉と行いによる福音宣教への説教者たちの全面的な派遣は、盛式誓願によって彼らがキリストの生涯と使命とに最高度にかつ永続的に結ばれているということによっても表明される。

本修道会は、すべての民に派遣されているのであるから、全教会との一致の内に普遍的性格を帯びている。しかしこの使命をより適切に遂行できるようにするために、本修道会は特権を享受し、かつ堅固な一致の内に本修道会の頭たる総長の下に団結する。すべての諸兄弟は、修道誓願によって、総長に結び付いている。勉学と福音宣教はすべての兄弟の待命を要求している。

本修道会のこの同じ使命から、ここの諸兄弟の責任と天与の才のとが特別な仕方で強調され、かつ促進される。兄弟は各々、養成の終了後、他の人々に教えかつ本修道会における多様な任務を引き受けるとき、成熟した大人として扱われる。それ故、本修道会は、その固有の法律が諸兄弟を罪の下に義務づけることを望まない。それは諸兄弟が、「律法の下にある奴隷ではなく、恵みの下にある自由な人として(6)」それらの法律を賢明に受けいれるためである。

さらに本修道会の目的に鑑みて、長上は、「特に勉学や福音宣教あるいは魂の善益の妨げになる事柄において、みずから適切であると判断するとき(7)」、免除を与える権限を有している。

第7項

我々の修道会の交わりと普遍性とは、その統治にも形を与える。その統治においては、本修道会固有の目的を追求するための全当事者の節度ある有機的参加が際立っている。事実、本修道会は、修道院の兄弟関係に限定されるものではい。無論、修道院の兄弟関係は、基本的構成単位である。しかし本修道会は、管区を構成する諸修道院の交わりと、本修道会がそれによって構成されるところの諸管区の交わりとの中に広がっているのである。それ故、本修道会の権限は、その頭において、すなわち総会と総長とにおいて普遍的であるが、その権限は然るべき自治権を有する諸管区と諸修道院とに比例的に配分される。したがって我々の統治は、独自の仕方で共同体的である。すなわち、長上は通常、諸兄弟によって実施され、より上位の長上によって認証された選挙によって、その職務を受ける。また、より重要な諸問題を処理するにあたって、諸共同体は、議会あるいは評議会を通して多様な仕方で自らの統治の遂行に参与するのである。

この共同体的統治は、本修道会の促進と頻繁な自己反省とに適している。実際、諸長上および諸兄弟は、自分たちの代表者を介して、諸管区長と諸裁決委員とからなら総会において、同等の権利と自由をもって、本修道会の使命の促進と本修道会の適切な刷新に共同して取り組むのである。このような不断の自己反省は、絶えざるキリスト教的回心の精神によって要求されるばかりでなく、本修道会をして世界の中で、各世代に即応した影響力を行使させるという本修道会固有の召命によっても要求されている。

第8項

本修道会の基本的目標と、それから派生する生活様式とは、教会のいかなる時代においても重要性を持つ。しかしながら我々の伝統が我々に教えているように、それらの事柄は目まぐるしい変化発展の諸状況の下にあるため、それらの事柄の理解と評価とが、是非とも必要である。このような情勢の中にあって、雄々しく自らを刷新し、そのような情勢に自らを適応させることは、本修道会の務めである。その際、本修道会は、人々の数々の願望の中にある善益を識別し検証し、かつそれらの善益を本修道会の生活の基本的諸要素の不変的調和の中に取り込まなければならない。

確かにそれらの基本的諸要素は、我々の下では、実質的に変更されることができない。しかしそれらの基本的諸要素は、教会と人々との数々の必要に適応した生活様式と福音宣教の様式とを呼び起こすものでなければならない。

第9項

ドミニコの家族は、聖職者兄弟と協力兄弟、観想修道女、活動修道女、在俗者会会員、聖職者会会員および一般信徒会会員よりなる集合体である。しかし以下に掲げられた会憲と法令とは、別段の定めが明示的になされない限り、もっぱら諸兄弟に関わっている。また、それらの諸規定によって本修道会に必須の統一が配慮されるが、それらの法律それ自体によってドミニコの家族の(8)不可避の多様性が排除されるのではない。

 

 


原注

 

(1)洗礼志願者のための聖金曜日の祈り。

(2)1221年1月18日付、聖ドミニコのためのホノリウス3世の大勅書(説教者兄弟会史、第25巻、144頁)。

(3)原始会憲序文。

(4)原始会憲、第2部、第31項。

(5)ホノリウス三世の、すべての高位聖職者に宛てられた12212月4日付け書簡(説教者兄弟会史、第25巻、145頁)。

(6)聖アウグスティヌスの戒律、末尾。

(7)原始会憲、序文。

(8)「ドミニコの家族の」は、訳者による補足。