マリアの予型
実にあなたさまは、王さまの玉座、天使たちがその周りに控え、自分たちの支配者である造り主が着座しているのを仰ぎ見るところの、王さまの玉座であります[1]。
あなたさまには、あのかつてのエデンよりも神聖でもっと神的な、可知的なエデンという呼び名があったのです。実際、「土で造られた」アダムは、あのかつてのエデンに住んでおりましたが、あなたさまのうちには、「天から来られた[2]」主が、お宿りになれらたのであります。
第二の宇宙の種子を保存したあの箱船[3]が、あなたさまをあらかじめ描き出しておりました。なぜかと申しますと、あなたさまが、宇宙の救いであるキリストさまをご出産なさったからであります。そしてキリストさまは、罪を洗い落し、罪という荒波を静めてくださったのであります。
(あの燃えない)柴が、あなたさまをあらかじめ描写しておりました。神さまの字を載せた(二枚の)書き板[4]が、あなたさまをあらかじめ刻み出しておりました。律法の納められた木箱が、あなたさまをあらかじめ物語っておりました。黄金の壺と燭台そして食卓が、「アロンの芽吹いた杖[5]」が、明らかにあなたさまを表わす予型となっていたのです[6]。たしかにあなたさまから、神性の炎[7]が、「おん父の定義であり表現であるおん方[8]」が、この上なく甘美な天のマンナが、名づけようのない名前、「すべての名を超える」名称が[9]! 近寄りがたい永遠の光が[10]! 天から来た「生命のパン」が!
労せずして得られた実りが[11]! あなたさまから身体的に萌え出でたのであります!
露もたらすと同時に炎を吐き出す火を示すあのかまどが、あなたさまをあらかじめ顕わしていなかったのでしょうか。あのかまどは、あなたさまのうちにお宿りになった神的な火の対型[12]だったのです!
そしてあのモーセの幕屋があなたさまを一目瞭然に予示しておりました。実際、あなたさまのご胎内にお宿りになった神であるみ言葉に対して、人間本性は、灰のなかで焼かれたパンを[13]、あなたさまの汚れないおん血によって出来上がった人間本性それ自身の初穂を、お捧げしたのであります[14]。この初穂は、いわば神的な火によって焼かれパンにされたもので、そのおん方の神的なヒュポスタシスのうちに個別的に自存する初穂であり、理性的で知性的な魂によって生かされる本当に実在する身体になったものなのであります[15]。
おっと、わたしはヤコブの梯子を、もう少しで見逃してしまうところでした。これは一体なんでしょうか。(ここに)あなたさまのお姿[16]がまえもって描かれ、知らしめられているのは、だれの目にも明らかなことではないでしょうか。ちょうどあのヤコブが、梯子の両端を介して天が地と結び合わされ、その梯子をとおして天使たちが昇り降するのを眺め、そして本当に力強くて負け知らずのあのおん方を相手に、象徴的な[17]組み打ちをしたのと同じように[18]、あなたさまも、わたしたちのところへの神さまの下降の仲介者となり、階段となったのであります[19]。そして神さまは、わたくしたちの弱さに満ちた肉の塊[20]をお取りになって、これをご自身に絡み合わせ、これと一つになったのです。そして人間を、神を仰ぎ見る精神に[21]変え、ばらばらになってしまったものを一つに集めてくださったのであります。こうして、天使たちは、人間のもとに降り、(人間を)神とし主として仕え、他方、人間たちは、天使の身分を享受し、天へと引き上げられていくことになったのであります。
[1]
Cf.
Dn.7,9.10.
[2]
1Co.15,47.
[3]
kibwto.j
deute,rou ko,sumou spe,rma fula,ttousa
[4]
pla,kej
qeo,grafoi
[5]
Cf.He.9,4;Nb.17,23;
新たな多産の象徴となっている。
[6]
evmfanw/j
proetu,ptwsan
[7]
h`
fro.x th/j qeo,thtoj
[8]
ナジアンゾスの聖グレゴリオス、『復活祭第二講話』(PG
36, 633)。
[9]
to.
o;noma to. avnw,numon <<
to. u`pe.r ta/n o;noma>>
[10]
1
Tm.6,16.
[11]
o`
avgew,rghtoj karpo,j
[12]
avnti,tupoj
[13]
Cf.Gn.18,6.
[14]
Tw/|
Lo,gw| evn th/| gastri, sou skhnw,santi avnqrwpei,a fu,sij to.n evgkrufi,an
a;rton( th.n e`auth/j avparch.n evk tw/n sw/n a`gnw/n ai`ma,twn prosh,gagen
[15]
$avparch.n%
ovptwme,nhn pwj kai. avrtopoioume,nhn u`po. tou/ qei,ou puro,j( evn th/|
qei,a| auvtou/ u`posta,sei u`fistame,nehn kai. eivj avlhqh/ u[parxin
evrcome,nhn sw,matoj evyucwme,nou yuch/| logikh/| kai. noera/|
[16]
tu,poj*「予型」とも訳せる。
[17]
tupikw/j
[18]
Cf.Gn.28,12;32,25.
[19]
ou[twj
kai. su. mesiteu,sasa kai. kli,max gegonui/a th/j pro.j h`ma/j tou/ qeou/
kataba,sewj
[20]
to.
avsqene.j h`mw/n fu,rama
[21]
nou/n
o`rw/n Qeo,n*cf.Gn.32,31.
アレキサンドリアのフィロン以来の伝統として、「イスラエル」という名称は、「神を観る者」という意味に解釈されている。