謙虚にしてもっとも小さき修道司祭ダマスコのヨハネの第二教話

終生乙女なるマリアの栄えあるご就寝

 

緒言

  人間のうちには、たとい数かぎりない舌や無数の口が(一人の)人間に備わっているとしても、神のおん母の聖なるご死去をふさわしく誉めたたえることができるひとは、一人もおりません。また、あちこちに四散した人々のすべての舌がひとつに合わさっても、ふさわしい賛美に行き着くことはないでありましょう。実際、神のおん母は、賛美の[1]をことごとく陵駕しているのであります。とはいエバたくしたちが愛情と熱意と善きとをもって、力のかぎりを尽くしてお捧げするものは、神さまに喜ばれるはずでありますから、また、おん子によって熱望され愛されるものは、神さまのおん母にも喜ばれるにちがいありませんから、さあ! みなさん! わたくしたちはまた改めて、あなたがたのご命令につつしんで従いながら[2]・・・、おお! 牧者たちのなかでももっとも優れ、もっとも神に愛された牧者のみなさん! わたくしたちはもう一度、賛美の歌を歌おうではありませんか。そしてこの乙女から肉体をお取りになったみ言葉を、この賛美の助け手として、ここにご招待しようではりませんか。このみ言葉は、それに向かって広く開いたすべての口をいっぱいに満たしてくださるおん方であり[3]、ただみ言葉だけが、かのじょを飾る装身具、かのじょのための真に栄えある讃歌なのであります[4]。しかしながらわたくしたちは、ひとたび賛美を始めるや、それによって負債を返済することになりますが、しかしその負債を返済するや否や、わたくしたちはまた、負債を作ってしまうのです。結局のところ、わたくしたちには常に負債が残り、返済してはまた負債を背負い込むのだということをよく心しておかなければなりません。

  しかしどうか賛美の的となっている神のおん母が、わたくしたちのためにしく取りなしてくださいますように。すべての被造物を陵駕なさり、すべての造られたものに君臨するマリアさま! ああ、神さまのおん母君! 造り主・創造主・万物の支配者のお母さま! どうかお取りなしください[5]

そしてあなたがたみなさん! おお・・・、神さまのみ言葉を聞きにお集まりになった全会衆のみなさん! どうか(このわたくしの)善意を受けいれ、(わたくしの)熱意を称賛してください。そして(わたくしの)言葉のさをどうかれにお思いにたってくださ。

さて、ある農夫が、季節外れの緋色のスミレを王さまに献上したといたします。この王さまは、自分の民の舵取りを神さまからねられていて、いつもその食卓を豊かに満たし、食卓はありとあらゆる種類の料理であふれておりました。そしてその王宮は無数の高価な芳香で満たされていました。あるいは、ある農夫が、王さまにバラを、しかも、とげのある若枝と青々としたかずかずのつぼみを付け、この上なくよい香りをつバラを献上したといたしましょう。そしてこのバラのつぼみからは、二色のをなしながら今まさに深紅の絶頂に達せんとする赤くしい花びらが、姿を現そうとしていたといたしましょう。するとどうでどうでしょう。王さまは、この贈り物の安っぽさには目もくれず、そのバラのしさに見とれ、その新しさに驚かれるのではないでしょうか。なぜかと申しますと、王さまというものは、最上のものをり分け、巧みにそれを判定することがおできになるからです。ですから王さまは、この農夫に、のかぎりを尽くしたたくさんの賜物をご褒美として惜しみなくお与えになることでありましょう。それと同じようにわたしたちも、この冬のさなかに、言葉のを女王さまに献上することにいたしましょう。そして、このどことなくぎこちない(このわたくしたちの)賛辞を、賛美歌競演会のために整え直すことにいたしましょう[6]。石を鉄ですりくように、この(賛美の)熱望を精神によってすりくことにいたしましょう。そして、まだ熟していないブドウのりつぶすように、作詞の思いを[7]りつぶし、言論好きで聴講好きなあなたがたのために、言論のかなきらめきのようなものを、発酵半ばの言論のブドウのようなものをお配りできれば、わたくしたちも、(女王さまによみせられ)、いっそう、なおいっそうよく、歓待されるのでありましょう。

  ところでわたくしたちは、み言葉のお母さまにたいして、言論以外のなにをお捧げすればよいでしょうか。なぜかと申しますのは、似たものには、似たものが、しかも愛情のこもったものが喜ばれるからであります[8]。それではみなさん、言論のを開き、あるいは手綱をわずかにめ、この言論を馬に見立てて馬場へと送り、それを駆り立てることにいたしましょう。しかし神のみ言葉(であるお方さま!)あなたさまおん自らが、どうかわたくしの協働者、わたくしの助け手[9]となってください。そしてわたくしの舌足らず悟性言葉をお与えになって[10]、この言論のためにらかな馬場を作ってください。そしてその進路をあなたさまの意にかなう方向へと、つまり賢者のすべての言論とすべての悟性とが向かう方向へとお導きください。



[1] qesmo.j evgkwmi,wn

[2] toi/j u`mete,roij peiqarkou/ntej keleu,masin

[3] Cf.Ps.81,11.

[4] o]j auvth/| mo,noj ko,smoj kai. paneuklee.j evgkw,mion pe,fuken

[5] マリアの宇宙的至上権は、生神女であるということの必然的帰結である。

[6] kai. geghrako,ta lo,gon pro.j tou.j avgw/maj tw/n evgkwmi,wn o`pli,zontej

[7] th.n muqoto,kon dia,noian

[8] Tw/| o`moi,w| ga.r cai,rei to. o[moion( kai. ge to. fi,lon)

[9] sunergo,j te sune,riqoj

[10] kai. th.n evmh,n a;logon dia,noian lo,gwson