聖櫃の移送12
そしてそのとき、まさにそのときのことであります。主の聖櫃はシオンの山を離れ、使徒たちの栄えある肩に支えられながら、お墓の直中をとおって天の聖地[1]へと移送されていったのであります。先ず主の聖櫃は、町の真ん中をとおって運ばれました。それはあたかも(聖)霊の近寄り難い輝きに飾られたこの上もなく優美な花嫁のようでした。こうしてそれは、ゲッセマネのもっとも神聖な場所へと運ばれていきました。その間、天使たちは先導したり、同伴したり、またかずかずの翼をもって覆ったりしていました。教会に充満する全会衆[2]も同様でした。
ところでソロモン王は、自分の建立した主の神殿に聖櫃を安置するために[3]、「イスラエルのすべての長老たちをシオンに」集め、「シオンと呼ばれるダビデの町から主の契約の櫃を運びました」。また(聖書の言葉をそのまま引用いたしますと)ソロモン王は、「祭司たちは聖櫃と証の幕屋を担ぎ、祭司たちとレビ人たちがそれらを据えた。そして王とすべての民は、聖櫃の前で無数の牛と羊を生け贄として屠った。祭司たちは、主の契約の聖櫃を、その然るべき場所へ、神殿の内陣へ、至聖所のなかへ、ケルビムたちのもろもろの翼の下に運び込んだ[4]」とあります。これと同じようにいまの場合にも、新たな聖櫃といっても、主の契約の櫃ではなく、神のみ言葉の個別的自存それ自身の聖櫃を安置するために[5]、新しいソロモンご自身が、平和の源であり万物の最高の造形者であるおん方が[6]、もろもろの天にあるかずかずの階級の知性的存在者たちと、新しい契約の頭たちすなわち使徒たちとを、イスラエルに住まうすべての聖人と共に、呼び集められたのであります。そして新しいソロモンであられる方は、(マリアさまの)おん魂を、天使たちをとおして至聖所のなかへ、天にあるかずかずの真の原型のなかへ、四つの姿を持つ生き物たちのかずかずの翼の上に安置し、さらにご自分の玉座の傍らに、すなわちキリストさまご自身が先駆者として(ご自分の)おん身体をもってお入りになった帳の内側に置かれたのであります[7]。他方(マリアさまの)おん身体は、使徒たちの手によって運ばれていきました。そしてもろもろの王を支配する王さまが[8]、(ご自身の)目には見えない神性の輝きをもってそれを覆い、聖なる者たちの全集団がそれに先駆け、かずかずの神聖な叫びを上げながら「賛美の生け贄[9]」を屠ったのです。このように(マリアさまの)おん身体は、婚礼の寝屋のような墓所へと運ばれ、それからそれをとおしてエデンの歓喜のあるところ、天にあるかずかずの聖なる住まいのなかに据えられたのであります。
[1]
to.
ouvra,nion te,menoj
[2]
pa/n
to. th/j evkklhsi,aj plh,rwma
[3]
Cf.Ps.132,8.14.
[4]
1R.8,1-6(LXX)
et cf.2Ch.5,2-6.
[5]
evpi.
th/| katapau,sei th/j noera/j kibowtou/( ouv diaqh,khs Kuri,ou( avllVauvth/j
th/j tou/ Qeou/ Lo,gou u`posta,sewj
[6]
auvto.j
o` ne,oj Solomw,n( o` eivrhna,rchj kai. tou/
panto.j avristote,cnhj;
「最高の造形者」(aristote,cnhj)という言葉は、大変珍しい。アレキサンドリアのクレメンスが引用するピンダロスの断片の中に、この言葉が見える(Strom.V
102,2)。
[7]
Cf.Ez.1,6;Ps.45,10;He.9,12;10,20.
[8]
o`
basileu,j tw/n basileuo,ntwn
[9]
Ps.107,22.