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受肉と神的母性

  ですから、さあ、みなさん！ わたくしたちも今日というこの日に、神のおん母のためにご出立の祝いを催そうではありませんか！ もちろんわたくしたちは、縦笛の類や女神キュベレーの祭司たちを持ち出したり、かれられがいうような偽りで名ばかりの神々の母を記念する乱痴気騒ぎなどを持ち出したりはいたしません。無思慮な者たちはそのような母を、たくさんの子を持つ豊穣な女に仕立て上げていますが、真理の言葉はそのような母が、子を持たない不毛の女であることを明らかにしているのです。これらの神々は、悪魔であり影のような亡霊なのです。それらは愚かにも、道に迷った人たちの狂気に助けを得ながら、本来そうでないものに成りすましているのであります。実際、非物体的なものがどうして交わりによって(子どもを)産むのでしょうか。どのようにして交わるのでしょうか。それに一体どうして、以前に存在しなかったのに(後に)生れ出たものが神なのでありましょうか。霊鬼の輩が非物体的なものであることは、たぶんだれの目にも明らかでありましょう。いや知性的な目がつぶれている者たちにとってさえ、それは明らかなことでありましょう。ホメロスは、たしか自分の散文詩のある個所で、自分にふさわしい神々のありさまを描写して、こう言っておりました。

かれらは小麦のパンを食べない。かれらは沸き返るぶどうの火酒を飲まない。

それゆえかれらは血の気がなく、不死身と呼ばれる[1]。

　ホメロスは、神々が食べ物を食べず、身体を火照らすぶどう酒を飲まないと言っているのです。そのためかれらは血の気がなく、すなわち血液を持たず、そして不死身だと呼ばれているのであります。｢呼ばれている｣とは真によくいったものであります。たしかにかれらは不死身と呼ばれています。しかしかれらはそう呼ばれているものとは似ても似つかぬものなのです。なぜならかれらは、邪悪のうちに死んでしまったからであります。

  しかしわたくしたちが礼拝しているのは神さまです。神さまは、非存在から存在へと引き出されるようなおん者ではございません。原因も言葉も思いも時間もそして本性も超えて、永遠に存在するおん方から永遠に由来するおん者なのです[2]。わたくしたちはそのような神さまのおん母を、畏れ敬っているのであります。とはいエバたくしたちは、神さまの神性の無時間的な誕生[3]が、かのじょかに由来しているのだと思い描いているのではありません。    なぜかと申しますと、神さまのみ言葉の誕生は無時間的であると同時に、おん父とともに永遠だからであります[4]    。しかしわたくしたちは、自発的な受肉に基づく第二の誕生を告白します[5]。そしてわたくしたちは、この第二の誕生の理由を知っており、その理由を主張する者であります。すなわち、元を持たない非物体的なおん方[6]が、わたくしたちのために、それもわたくしたちの救いのために受肉されたのです。似たものが似たものによって救われるために[7]。そしてこのおん方は、あの神聖な乙女から男の助けを借りずに肉を受け、お産まれになったのです。このおん方は、全き神のままでありながら、全き人間となられたのです。ご自分の肉をお持ちにながら全き神であり、ご自分の超神的な神性をお持ちになりながら、全き人間となられたのであります[8]。わたくしたちはこのような意味で、あの乙女が神さまのおん母であると知り、かのじょのご就寝を盛大にお祝い申し上げているのであります。とはいエバたくしたちは、かのじょが女神であるとは言いません。ギリシアのペテンに由来するそのような作りごとは、御免こうむりたいものであります。なぜならわたくしたちは、他ならぬかのじょの死を、告げ知らせているからであります。しかしわたくしちは、かのじょが受肉された神さまのおん母であることを知っているのであります。