不死の聖性

  すべてのものをお造りになった神であるみ言葉は、つまり、おん父がそのみ心から吐き出された神であるみ言葉は、今日、新たな書物をお作りになりました。その新しい本のなかには、アシの筆のような神の舌、すなわち、(聖)霊によって(文字が)書き込まれるであります。この書物は、(かつて)文字を知っている男に与えられたものでありましたが、かれは、(これを)読み取ることができませんでした[1]。実際、ヨセフはマリアを知りませんでしたし、この神秘そのものの意味にも気付いていませんでした。おお、ヨアキムとアンナの神聖極まりない娘! もろもろの主権(の霊)ともろもろの権威(の霊)とを逃れ、「邪悪な者の放つかずかずの火矢[2]」を免れた娘よ! (聖)霊の寝屋で(一夜を)過ごしながら、純潔のまま保たれて、神の花嫁、本性上の神のおん母となられた少女よ! ああ、いとも神聖な少女! 母親の両の腕のなかにおいでになり、離反した霊ども[3]の恐怖のなられた娘よ! ああ・・・! いとも神聖なる少女、母乳によって養われ、天使たちによって取り囲まれた娘よ! おお! 神さまに寵愛された娘さま! ご両親の誉れ! あなたさまは代々に祝福されるでありましょう! あなたさまがおんみずから言われ、実証なさいましたように。ああ! 神さまにふさわしい少女、人間本性の美! 最初の母エバを正されたお方さま[4]! たしかに、あなたさまのご出産を介して、(罪に)倒れた最初の母は、立ち直ったのであります。おおっ! 神聖この上ない娘さま! 女性らの誉れあれ! たとい最初のエバが最初の父に背いて蛇に仕え、罪に落ち、その罪によって「死が入ってきた」としても、神さまのご意思に仕え尽くしたマリアさまは、(エバを)欺いたヘビを(逆に)欺き、この宇宙に不滅を招き入れたのであります[5]



[1] この節は、『詩編』45,2から着想を得ている。「新しい本」は、『イザヤ書』の8,1(LXX) 29,11とを暗示しているのかもしれない。

[2] Ep.6,16.

[3] duna,meij

[4] evpano,rqwsij;最初の完全な状態の復興の観念に、欠陥のある状態の矯正と建て直しの観念が結びついている。この「矯正」という言葉は、パウロ書簡にも見出される(2 Tm.3,16: pro.j evpano,rqwsin)。これは、生活の改善を図るためのストア派の用語でもある。その他、Lc.13,13(avnwrqw,qh )Ps.119,9(LXX)を参照せよ。

[5] マリアの従順によって、人間に不死が再び与えられた。この個所の文脈は、『ローマの教会への手紙』(Rm.5,12)の文脈である。そこでは、人間が不滅に造られたことを述べる『知恵の書』(Sg.2,24)が、取り上げられている。