マリアの内的生活

 

  「民のなかでだったものは」、この子の「み顔を心待ちするでありましょう」。諸国の民の王たちは、かずかずの贈り物をえて、この子を伏しむでありましょう。(そしてアンナ!)あなたは、「金の房飾りで」飾られるかのように、諸徳のしさに「包まれた」この子を、(聖)霊の恵みによって飾られたこの娘を、大王たる神さまにお捧げするでありましょう。「栄光が」この子の「内部から輝き渡ります[1]」。なるほど、すべての女性の栄光たる丈夫は、外から訪れます。しかし神のおん母の栄光は、内部から現われます。それはご胎内の実りなのであります。

  おお・・・三重の祝福に恵まれた愛らしい少女! 「おん身は女のうちに祝せられ、ご胎内のおん子も祝せられ給う」。ああ、少女よ! 王ダビデの娘! 大王たる神のおん母よ! ああ・・・神的な生ける誉れ! 造り主なる神さまは、この誉れを喜ばれたのであります[2]。神さまによって導かれ、ただ神さまだけに寄りすがる精神を持つ誉れ! ただ唯一望ましくまた愛らしいおん方にだけ望みのすべてを傾ける精神を持つ誉れ! ただひたすら罪とその罪を宿す者とに対して憤りを持つ誉れよ! あなたは、自然に優る生命をお持ちになるでありましょう! しかしあなたはそれを自分自身のためにお持ちになるのではございません。あなたさまは、ご自分のためにお生まれになったのではないのであります。あなたさまが神さまのために(この自然に優る生命を)お持ちになるのだということ、このことのために、あなたさまはお生れになったのであります。そしてこのことのためにあなたさまは、全宇宙的な救いに仕え尽くすことになるであります。それは、神さまの原初からのご計画[3]、すなわち、み言葉の受肉とわたくしたちの神化という原初からのご計画[4]が、あなたさまをとおして実現するためなのであります。(あなたさまの)お望みは、神のかずかずのみ言葉によって育てられ、それらの言葉によってふくよかになること。それはあたかも、「神さまの家で豊かな実りをあげるオリーブの木[5]」のように、(聖)霊の「水の流れのほとりに植えられた木[6]」のように、その定められたときに、受肉された神という実り、ありとあらゆるものの永遠の生命という果実を結んだ生命の木ように[7]、であります。(このお嬢さまは)魂にとって益となる栄養価に高い思いをすべて保持されますが、魂にとって害となる余計な思いはすべて、味わう前にけられます。その両のおん目は、「たえず主に向かい[8]」、「近寄り難い」永遠の「光[9]」を見つめます。その両のおん耳は、神のみ言葉を耳にして、(聖)霊の竪琴に喜びを覚えます。そしてみ言葉は、この両のおん耳をとおして(マリアさまのご胎内に)お入りになり、受肉されたのです。(マリアさまの)二つのは、花婿の香油の香りに魅了されますが、この花婿さまが(また)神的な香油であって、進んでみずからを注ぎ出し[10]、ご自分の人間性にその香油を注がれるのであります。「実におまえの名は、注ぎ出された香油[11]」と聖書はいっております。その両のは主をほめたたえ、そして、主の唇にご自分の唇を寄せ合わせるのです。その舌とは神のかずかずのみ言葉を識別し、神の甘美さを堪能するのです[12]。そしてその心は清く汚れなく、神、汚れなき神を仰ぎ見て、神に乞い焦がれるのであります。

  (いかなる場所にも)納められないおん方がそのなかにお住まいになった母胎! 神である幼子イエズスがそれによって養われた乳の出る両のおん胸! 永遠に乙女でまします神さまの[13]! 神さまをえる両のおん手と(二位の)ケルビムよりも高い玉座である両よ! (マリアさまの)「弱った両のおん手とよろめく膝は[14]」(二位の)ケルビムによって強くなったのに・・・。(かのじょの)両のおん足は、光の灯明のような[15]神のに導かれ、神さまのみ後を振り返ることなく追いかけて、遂に、恋求めるおん方を、恋する乙女のもとに引き寄せたのであります[16]。ああ、そのすべてをあげて(聖)霊の婚礼の寝屋であるお方。そのすべてを上げて、生ける「神の都」である方よ! 「川の流れはその神の都を、喜ばせております[17]」。あなたさまはそのすべてをあげて聖霊のかずかずの賜物のなのであります。「なんと美しく」、またなんと神に「近い」お方でありましょう! 実にかのじょは、(二位の)ケルビムを超え、(二位の)セラフィムにって、神に近いといわれたのであります[18]



[1] Ps.45,13.14.

[2] 神とその民の和解を祝うイザヤの詩も同様のことをいっている。Is.62,5; Is.65,19およびPs.104,31を参照せよ。

[3] Cf.Is.25,1.

[4] h` avrcai,a boulh. tou/ qeou/, th/j tou/ Lo,gou sarkw,sewj kai. th/j h`mw/n qew,sewj

[5] Ps.52,10.

[6] Ps.1,3.

[7] Cf.Ap.22,2.

[8] Ps.25,15.

[9] 1 Tm.6,16.

[10] e`kousi,wj kenou,menon

[11] Ct.1,2.

[12] Cf.Ps.119,103.

[13] Cf.Ez.44,2.

[14] Is.35,3.

[15] Cf.Ps.119,105.

[16] Cf. Ct.1,4;3,4.

[17] Ps.46,5:シオンの讃歌。

[18] Ct.4,7;神の母と神との独自の親密さは、伝統的な主題で、ここでは、『雅歌』の引用個所との連関で強調されている。ケルビムとセラフィムは、神の栄光にもっとも近い存在者である。