20 アルビ派の地で聖ドミニコが異端者によって加えられた侮辱と、殉教の恵みを切望したことについて

 

モンフォール伯の死まで十字軍はそこに駐屯していたが、その間兄弟ドミニコは神のみ言葉を熱心に宣教していた。その頃、邪悪な者どもから何とたくさんの侮辱を受けたことであろう。何とたくさんのわなに耐えなければならなかったことであろう。

あるとき殺すと脅かきれたが、大胆にもこう返答した。 「私は殉教の恵みを受けるにふさわしくない。こういった死に私はまだ価しない」。侍ち伏せされているのではないかと思われる場所を横切るときには、歌を唱い、喜ばしげな様子さえ示していた。これを異端者たちが知るに至り、くじけぬ勇気に感嘆して彼にいった。「もしや死を恐れていないのではないか。」「あなたを捕えたならどうするか」。聖人は答えた。「急いで私を打って殺したりすることなく、手足を一本ずつ切り落とし、殉教を長びかせてくれるよう願うであろう。そして切り取られた四肢を私の目の前におき、その後で目を引き抜き、そして命をたった上で胴を血にまみれたままにしておかれることを。殉教が長びくほど、私は大きい栄冠が得られるのだから」。真実の敵はこの言葉に恐れをなし、死が害どころか贈物であるような義の人に対し、もう策略をめぐらすことはなかった。

彼は全力をあげて、キリストのために霊を得ようと努力し、人びどの救済のために、信じられないほどの張り合いを心に観じていた。