21 彼の慈愛が大なるがゆえに向けられた尊敬について

 

友に生命を与えることにおいて、大きな効力をあらわず愛徳が彼には欠けていなかった。ある機会にひとりの未信者に、母なる教会の胸に戻りなさいと勧めると、彼は生きるためには異端者たちと共存するしか方法がない、なぜなら彼らが食料を支給してくれるのであり、他の方法では手に入らぬからだ、と答えた。すると心の底から動かされ、危機にのぞんでいる霊を貧困から助け出そうとして自分の身を売ろうとしたのである。すべてにおいて豊かであられる主が、あの困窮した男を救う他のすべをお持ちでなかったとしたら、ドミニコは本当にそうしたであろう。

神の僕ドミニコの名声が大きくなると、異端者たちはねたんだ。彼が善良であればあるほど、毒された目の持つ邪念は明るさに耐えられなくなり、彼を嘲弄し彼に近づいて心の悪の倉から悪をとり出しながらあざ笑った。しかし不信仰者どもの恨みが増大するにるれ、信徒たちの傾向は大きくなり、全てのカトリック信者に愛され尊敬された。彼の物静かで美しい生きかたは貴人の心をも捉えるに至ったほどである。かの地の大司教・司教・高位聖職者は、あらゆる栄誉にふさわしい人物として彼を見たのである。