30 ドミンゴとよばれるひとりの修道土がいかにして女の誘惑にうち勝ったかについて

女の誘惑にうち勝ったかについてある機会に、多分この修道士の敵である邪悪な者が、恥知らずな娼婦でありサタンの道具であり貞潔の敵であり悪徳の巣であるひとりの女を、告解のため彼に近づかせようと計った。彼女は彼のもとにやって来ていった。「私はひとりの男に消耗され、焼きつくされ、苦しんでいます。ですが彼は私の心を理解してくれません。もし知ったとしても、私の心を償えぬほど傷つけた愛に応じないということもあるでしょう。私に忠告をお与え下さい。あなたはそれが、おできになるのですから、私が破滅する前に手をおかし下さい」。

男の心を迷わす有毒な言葉で彼の無垢な心を曇らせようとしたが、彼の清い徳を曲げることはできなかった。彼がその人間とその危険について訊ねると、彼自身があの貪婪な火であると宣言した。

「今は行きなさい」と彼はいった。「後で出なおして来なさい。都合の良い場所を用意しておくから」。部屋に入って、ふたつのたき火を寄せてたき、その女がやって来ろと彼はそのふたつのたき火の間に入り、女にも同じようにするよう招いた。「これは」と彼女にいった。「こういう重大事にふきわしい場だ。もし良ければ来てやすみみなさい」。

その大胆な男が炎の間から見えるのに驚いて、その女は後悔の叫びを上げて逃げていった。修道士は一瞬たりとも、真実の炎の犠牲にも邪淫の炎の犠牲にもならず、無傷のまま立ち上がった。