43 兄弟エンリケの頑迷な心が屈したこと

 

その夜エンリケは聖マリア教会の朝課に行って神の御母に、あの計画を前に彼の頑迷な心が屈するよう祈り嘆願し、夜明けまでそこにいた。しかし、変らぬ硬さを心に感じ、祈っても何事も前進しないように思われ、自分自身をあわれみ、次のようにいいながら帰り仕度を始めた。「聖マリア様。私は貴女がお耳を貸してくださるにふさわしい人間ではありません。キリストの貧しき者たちの間に、私の場所のないことが良く解かりました。彼の心は、自由意志によって選んだ清貧の作りだす果実のあの完全さを求め、いらだっていた。審判者の前で、清貧がいかに確実な功徳となるか、ということを主は以前にお示しになっていたから。