44 ある夢とその解釈

 

ある日、夢の中でキリストの裁きの場にいて、キリストとともに審判者となろ人と、これか裁かれる人が大勢いる幻を見たように思われた。彼は罪人の間にいたが、何らの罪の意識もないまま、裁判官でであるキリストの側にいたひとりが彼の方に腕をさしのべて次わようにいうまで、必ず無罪になると思っていた。「そこにいる者、おまえはキリストのために何を棄てたか」。そのように厳しい審問に驚いた。というのは、答えのしようがなかったからでるる。そして夢は消えた。この啓示ゆえに、いまだ生まれつきの軟弱な意志が阻んでいた福音の清貧の理想になおさら焦れた。

すでに述べたごしく、そんな風に自分自身を非難し、悲しげに教会から去ろうとすると、賤しいしもべに御目をとめられるあのかたが、心の障害を取り除られた。彼は突如として涙を流し始め、魂はうち砕かれ、主のみ前に、身を投げ出し、あの頑なさは霊のまき起こす激しい風に消えてしまった。それゆえ、少し前には耐え難く思われたキリストのくびきは、今はこの聖油によってゆるめられ、すべてが軽く気持ちよくなった。

燃え立つような衝動にかられて立ち上がり、急いでレジナルド神父のもとへ来て自分の望みを明らかにした。その後で、私のところへ戻って来た。天使のような彼の顔に涙の跡があるのや見て、どこから来たのかと訊ねると、 「主に誓ったのです。そしてその誓いを実行します」と答えた。

しかしわれわれは、修練院に入るのを四旬節まで延期した。その間、学友のひとりであり後に兄弟エンリケの後を嗣いで院長となった兄弟レオンを、同じく入会するように説き伏せたのである。