54 聖ドミニコの死

 

一方、聖ドミニコの巡礼が近づいたとき、総長はボローニャで重病にかかった。

苦しみの床で、もっとも思慮深い修道士十二名を呼び寄せ、熱心に修道会のためを思い、聖人の忍耐強さをもって彼らに忠告を与えた。婦人に対する、特に若い婦人との疑わし思われるれるような交際はすべて避けるようにと訓戒したのである。なぜならば、いまだ清められていない霊を迷わし、楽しませようと常に誘惑が待ち構えているからである。彼はさらに付け加えた。「今まで聖なる御あわれみが、肉の腐敗から私を守って来て下さった。しかし、それにもかかわらず、年老いた婦人よりも若い婦人と話しをする方が楽しい、という徳の未熟から免れることのできなかったことを私は告白する」。

死の前に自信をもって、死後にはそれ以前よりもさらに彼らの助けとなろうと断言した。自分のために義の栄冠が用意されていることを疑わなかった。仕事と豊かな生命を彼に委ねたおかたを良く知っていた。主の支配下では、その栄冠が得られれば、それだけ大きな恩寵を賜わるのである。

出血と熱のふたつにむしばまれて、苦痛はいよいよ増し、あの信仰の厚い霊は肉体を離れ、その霊を造られた主のもとへと飛び去っていった。主はもの悲しい砂漠を、天の住まいの永遠の慰めとお取り換えになったのである。