63 ドミニコの遣体の発掘

 

ドミニコの遺体の移転がなされたとき、鉄棒の入った固い漆喰はほとんど毀れていず、墓を覆っていた平石を上げるのに大変な労力が費やされた。平石が上げられると、どのような香りにも優り、自然のもののようには思われぬ芳香が立ち登った。その香りは、骨や灰や棺から出たばかりでなく、それに触れた人びとの手からも匂った。