諸々の月の元、一年の諸々の月の最初の月

17. では、まず始め(の箇所)に帰って、この月がなぜ「諸々の月の元」であるのか、そして何ゆえにこのパスカの月が、「一年の諸々の月の最初の月」であるのかをお話し申し上げることにいたしましょう。 2 さて、ヘブライ人たちの間で秘かに語り伝えられている説明によりますと[1]、この月は、すべてのものの製作者であり造り主である神が、そのとき、万物をお造りになった時だそうです。また、これが創造の最初の花であり、宇宙の美であるとのことです。(彼らの説明によりますと)このとき、造り主は、ご自分の精神に即して精妙に造られた彫刻[2]が、優雅に動くのをご覧になったのでありました。そして諸々の天の見事な配列や折々の季節の心地よさ、太陽の規則正しい運航や衰えることのない光の出現[3]、さらには、数々の実りの産出や植物の飛躍的な成長、木々の色とりどりの花の開化、生まれたばかりの羊の群れ(など)が目にされます。時節柄、全地はすでに、青々とした新芽を萌え出ださせ、新たに生まれた数々の木立は、花を咲かせ、実を結び出そうといそしんでおります。農夫は、軛を鋤から解き放ち、いななく牛を休ませました。そして神から授かった神的な数々の種を地の表に蒔き、はるか上方の天から流れ出る水の滴を待ち望みます。羊飼は純白の乳を羊たちから絞り出し、養蜂家たちは蜂の巣の甘い蜜蝋を生産し、この時とばかりにと喜び勇む水夫(たち)は海にけしかけ、有利な交易を求めて、青く輝く大海原に勇猛果敢に漕ぎ出でようとしています。そしてヘブライ人たちは、こうした情景を目にするや、すべてのものの時宜を得た規則正しさや万物の整然たる秩序が、あるいは世にいうところのこの好運が、最初の初なりなのであり、一年の元とは、こうした春の甘美な歓びであると推測するのであります。 3 この私といたしましても、こうした説明に対して不信の念を抱いたりするものではございません。しかし私としとしましては、このパスカの月は、まさにパスカの霊的な祭りのゆえに、すべての時間とすべての時代との元であり、頭、また、最初の頂であると考えております、いや、むしろそうだと信じております。そしてこの偉大な神秘が成し遂げられ祝われるのは、そのパスカの日においてなのであります。こういうわけで、ちょうど主が、すべての可知的で不可視的なもの[精神によって捉えられる目には見えないもの]の長子であり、元からの初子でましますのと同じように、神聖なる祭儀を尊ぶこの月も、一年の最初の月であり、すべての時代の元なのであります[4] 4 そしてこの月について、神的な書は次のように叫んでおります。「主の喜ばしき恵みの年を宣べ伝えよ[5]」と。



[1] o` evn avporrh,toij lego,menoj `Ebrai,wn lo,goj

[2] 人間のことである。

[3] パスカが祝われる満月の出現のことである。

[4] パスカの月は可視的な物質的世界の暦の初めであるのに対して、キリストは不可視的で非物質的な秩序に属する全存在者の初めである。

[5] Cf.Is.61,2.