自然界の動揺と最期の吐息

55. しかし宇宙的な戦いは、遂に終わりを迎えました。そして(イエス)すべてを四方から戦いぬいて勝利を収められました。(イエス)神として高められることもなく、人間として敗北することもなく、万物の(すなわち天と地の)境目にとどまりながら、おんみずからご自身の手で敵対者に対する戦いを勝ち進み、大勝利を収められたのであります。 2 そのとき、長きにわたった(イエス)忍耐に、万物は驚愕いたしました。そのとき、諸々の天は揺り動かされ、諸々の支配の霊は、超宇宙的な玉座も律法も、動揺いたしました。なぜならそれらは、偉大なる力の総司令官が、(十字架に)つるされるのを見たからであります。そしてもう少しで天の数々の星が落ちるところでした[1]。なぜかと申しますとそれらは、明けの明星に先立つおん方[2]が張り付けにされるのを見たからであります。また、日の光もしばらくの間消えてしまいました。なぜならそれは、偉大なる「宇宙の光[3]」が曇らされるのを見たからであります。そのとき地の数々の岩は裂け[4]、イスラエルの忘恩を責めてこう叫びました[5]。お前は「付き従った霊的な岩から水を飲んだが、その霊的な岩を[6]」認めなかったと。そして「聖所の垂れ幕が裂け[7]」、共に苦しみ、真の天の大祭司を明らかにいたしました。しかし偉大なるイエスが、「父よ、私の霊をあなたのみ手に委ねます[8]」とおっしゃって神的な霊をお吐きにならなかったとすれば、宇宙全体は大混乱に陥り、もう少しで滅びるところだったでありましょう。 3 確かに万物は動転し、恐怖の衝撃におののき、すべてのものが揺り動かされたのでありますが、神的な霊が再び昇ったとき、万物は<ある種の>仕方でもう一度魂を与えられ、生命を与えられ、そして固められて、しかと据えられたのであります。



[1] Cf.Mt.24,29.

[2] Cf.Ps.109,3.

[3] Jn.8,12.

[4] Cf.Mt.27,51.

[5] Cf.Lc.19,40.

[6] 1 Co.10,4;cf.Ex.17,6.

[7] Mt.27,51.

[8] Lc.23,46.