しかしこの言葉は、救い主に当てはめられると、文字どおり預言の言葉になることができます。たしかに預言者は、この言葉を言ったとしましょう。しかし預言者は、真実の意味でこの言葉を言ったわけではないでしょう。おそらく比喩的な意味で言ったのです。なぜならかれは、全地で裁かれたわけではないからです。しかしわたしが、わたしの救い主であり主に移ってみますなら――取り分け、「わたしは裁きのために来た[1]」という言葉や、「お前が、お前の言葉において義とされ、お前が裁かれることにおいて勝利するために[2]」という言葉のゆえに――、わたしたちは、わたしの救い主であり主が、わたしたち全人類とともに裁かれるためにおん父のみ前に立つことになっているのがわかるでしょう[3]。たしかに救い主は、すべての人たちとともに裁かれるのです。わたしは申し上げます。救い主も裁きを受け、吟味され、真理に背かず真理を護るために出頭すると。

「ああ、わたしは禍だ。わが母よ、わたしをどのような男として産んだのですか。わたしは全地で裁かれ、断罪される者となりました[4]」。預言者は、「全地で裁かれる」という言葉を言うことはできません。しかしわたしは、わたしたちの主である救い主イエス・キリストを好きな人たち、好きなだけではなく愛している人たちが[5]立腹して、「救い主が(この言葉を)言っているのではない。なぜならこの言葉は、神の子にかなったものではない」と言うのを知っています。しかし「母よ、わたしは禍だ」、「わたしの魂は悲しみのあまり死ぬほどである[6]」とか、「わたしの魂は、かき乱されている[7]」という言葉が、神のおん子に無縁でないことを証明する必要がありますか。そして預言者たちによって言われている言葉の中にも、同じような言葉があります。これです。「ああ、わたしは禍だ。わが母よ、わたしをどのような男として産んだのですか。わたしは全地で裁かれ、断罪される者となりました[8]」。あるいは、ぶどうの房を見出す<代わりに>ぶどうの残りが滅ぼされたとき、「わたしの魂は禍だ。敬謙な人は地から滅び、人々の中に直き者はいなくなった[9]」という言葉です。同じ個所で、「ああ、禍だ。わたしは、収穫の時に藁を集める人<のよう>になった[10]」と言っているのは誰でしょうか。果たして預言者が集めたのでしょうか。そして集めようとしたのでしょうか。いったい預言者は、畑を持っているのでしょうか。種まきと収穫からすべてを集める人は、主なる救い主イエス・キリストを除いて誰もいません。ですから、異邦人たちの中には、そして教会に属する者であると自任しているわたしたちの中には、多くの落ち度がありますので、救い主は、わたしたちのもろもろの罪を嘆き、悲しみ、こう言っているのです。「ああ、わたしは禍だ。わたしは、 を集める人のようになった[11]」と。わたしたちはそれぞれ、各自を吟味してみなければなりません。はたして穂があるでしょうか。はたして神の子はそれぞれの人の中に、摘み取るもの、あるいは刈り取るものを見出すでしょうか。わたしたちは、わたしたちの幾人かが風に痛めつけられたのを見出すでしょう。つまり、たとえわたしたちが、自分自身の中にわずかながらにせよ、二つか三つの穀粒を持っているとしても、わたしたちの罪は、わたしたちのもとにたくさんあるのです。ですから(救い主は)教会だと自任してはいるものの罪に満たされたそれらの教会をご覧になって、こう言っているのです。「ああ、わたしは禍だ。わたしは、刈り取りの時に藁を集める人のように、摘み取りのときに落ち穂を拾う者となった[12]」と。(救い主は)ぶどう木に実を探しに来ました――たしかにわたしたち一人ひとりは、まさにブドウの木として「肥沃な土地に[13]」植えられたのです。「かれは、エジプトからブドウの木を引き抜いた[14]」のです。そして「わたしがお前をまったく真実で実り豊かなブドウの木として植えたのだ[15]」とあります――。(救い主は)何かを摘み取るために探しに来られ、何らかの落ち穂や短い房を見出すのです。それは、たわわでもなく数も多くありません。わたしたちの誰が徳の房を持っているでしょうか。わたしたちの誰が、神によってもたらされたものを持っているでしょうか[16]。「主よ、われらの神よ、あなたのみ名は全地で何とすばらしきもの[17]」。



[1] Cf.Jn.9,39.

[2] Ps.50,6.

[3] Cf.C.Celse II, 9, 66-68; Com.Jn.VI, 55 [37] § 287-290; Hom. Lv.IX,5; Hom.Nb.XV,6.

[4] Jr.15,10.

[5] Cf.Fgt sur Lam.XI; Hom.Jr.V,2,64; Com.Jr.XIX,4(1) § 23-24; De orat.20,1 (GCS 3, 344,2).

[6] Mt.26,38.

[7] Jn.12,27.

[8] Jr.15,10.

[9] Mi.7,2.

[10] Mi.7,1.

[11] Mi.7,1.

[12] Mi.7,1.

[13] Is.5,1.

[14] Ps.79,9.

[15] Jr.2,21.

[16] ti,j h`mw/n e;cei gennh,mata tou/ qeou/;

[17] Ps.8,2.

 

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