ですからもしも(神が)、私は先ずイスラエルを、その諸々の罪のゆえに離別し、彼を追いやったと言われたなら、また、イスラエルに起こった諸々の出来事を聞いたユダが立ち返らなかったとすれば、(神は)私たちの罪についても、(同じことを)言われているのです。イスラエルに起こった数々の出来事とその民についての諸々の不幸が朗読されたなら、私たちは恐れ、こう言わなければなりません。すなわち、「もしも神が、自然のままの枝を惜しまなかったとすれば、ましていわんや、私たちをも惜しまないでしょう[1]」と。(そして)もしも優しく人類愛に満ちた神[2]が、(自分たちを)太祖アブラハムとイサクそしてヤコブの「根に[3]」しっかり植え付けられ「手をかけて栽培されたオリーブの木[4]」であるとして自慢する人たち[5]を惜しまず、根から引き抜彼た[6]とすれば、ましていわんや神は、「私たちを惜しまないだろう[7]」と、私たちは言わなければなりません。

実際、「神の優しさと厳しさをご覧ください[8]」。たしかに神は、優しいだけで厳しさのない方ではありませんし、厳しいばかりで優しさのない方でもありません。もしも神が優しいだけで厳しさを持ち合わせておられなかったら、私たちはますます神の優しさをないがしろにしていたことでしょう。また、もしも神が、厳しい方で優しさのない方だっとすれば、私たちは、私たちの罪に絶望していたことでしょう。ところが人間たちは悔い改めるとき、神の優しさを必要とします。また、罪のなかに留まり続けるなら、(神の)厳しさを求めるものなのです。ですから神は、まさに神として、優しいと同時に厳しい方なのです。そして神は、預言者たちをとおして私たちに語りかけ、こう言われるのです。「あなたは、イスラエルの家が私にしたことを見た()    ここであなたは、どうかイスラエルと言うことで、あの(ユダヤの)民をお考えください    (彼女は)高い山の上や陰のある木の下ならどこへでも行った」と。もしもあなたが、あのファリサイ派の人のことを理解しようとするなら、どういうことになるでしょうか。あのファリサイ派の人は、居丈高に神殿に上り、自分の胸を打つこともなければ、自分自身の悪行に思い悩むこともありませんでした。それどころか彼は、こう言っている始末です。「私は、残りの人間たちのように、強奪者や不正直な者でも姦通を犯す者でもなく、また、この徴税人のようにでもないことを、あなたに感謝いたします。私は、週に二度断食をし、私の持ち物の十分の一を納めております[9]」と。このことを、あなたがお考えになれば、あのファリサイ派の人が、けしからぬことに、「高い山ならどの山でも[10]」上り、高慢を好み、虚栄と尊大さを身上としている[11]のが、お分かりいただけるでしょう。そればかりか彼は、「高い丘ならどの丘にでも[12]」上り、「木の下ならどこへでも」行ったのです。それも、実のなる木ではありません。「生い茂る[13]」木です。実際、生い茂る木と、実を結ぶ木とは別物なのです。人は、森のなかに木を植えるとき、無花果やぶどうの木などの実のなる木を植えず、もっぱら楽しみのために、実のならない木を植えるものであります。あなたは、異端者たちの議論がこのようなものであり、また、聴く者たちを回心させることもない彼らの議論のもっともらしい美しさ[14]をお分かりいただけるでしょう。ですからこう言わけで、これらの議論に夢中になってしまった人は、「生い茂る木なの下ならどこへでも」行ったのです。しかし(神は)「木の下ならどこへでも」と言わないで、沈黙し、「実を結ぶ木の下ならどこへでも」とも言い添えませんでした。むしろ(神は)「生い茂る木の下ならどこへでも」と言われております。それであなたは、どういうわけで立法者[15]が次のように言ったのかをご理解するでありましょう。立法者はこう言っております。「あなたは、あなたの神である主の祭壇のそばに、いかなる木も植えてはならない。生い茂る木も作ってはならない[16]」と。これであなたは、「生い茂る」という言葉が禁じられているわけがお分かりになるでしょう。



[1] Cf. Rm.11,21-24.

[2] o. crhsto.j a[ma kai. fila,nqrwpoj qeo,j

[3] Rm.11,18.

[4] Rm.11,24.

[5] Cf.Rm.11,18.

[6] Cf.Rm.11,24.

[7] Cf.Rm.11,21.

[8] Rm.11,22::Ide crhsto,that kai. a,potomi,a qeou/.

[9] Lc.18,11-12.

[10] Jr.3,6.

[11] kata. th.n a,lazonei,an kai. kata. th.n u.perhfani,an

[12] Jr.2,20

[13] Jr.3,6.

[14] ta. ka,llh tw/n piqanoth,twn au,tw/n

[15] o. nomoqe,thj

[16] Dt.16,21.

次へ