第十七講話

再び「この子の父と母は、彼について言われたことに驚いた」と書かれていることから、アンナについて書かれている箇所まで[1]

 ルカは、「聖霊があなたに臨み、いと高き方の力があなたを覆うでしょう。それゆえ、お生まれになる方も聖なる方で、神の子と呼ばれるでしょう[2]」と書きました。そしてイエスは乙女の子で、人間の種から生まれた子ではないことを私たちに明らかに語っています。しかしこの同じルカが、彼の父としてのヨセフを証しして「そして彼の父と母は、彼について言われたことに驚いた[3]」と言っています。父でもない彼を父であると語る理由は何だったのでしょうか。単純な説明に満足する人なら、彼は救い主を養うのだから、聖霊は彼を父という呼称で敬ったと言うでしょう。しかし何かもっと深い意味を探求する人は、次のように言うことができるでしょう。すなわちダビデからの系図[4]はヨセフまで続いているのだから、ヨセフの名が空しく挙げられていると思われないようにするために、救い主の父でなかった彼が主の父と呼ばれたのであり、こうして系図は意味を持つようになったのだと[5]。このようにして「彼の父と母は、彼について」、み使いによって、そして天の大軍によって[6]、そればかりか羊飼いたちによって[7]、「言われたことに驚きました」。実に、二人は、これらすべてのことを聞いて、大いに驚いたのです。



[1] Lc.2,33-38.

[2] Lc.1,35.

[3] Lc.2,33.

[4] generationis ordo.

[5] ヨセフの仲介によってイエスはダビデの系図に連なることについては、さらに『ローマの信徒への手紙注解』I,5(PG 14, 850C)を参照せよ。

[6] Lc.2,13-14.

[7] Lc.2,17-19.

 

次へ