第二十八講話

 救い主の家系について。マタイとルカにおいて、救い主の異なる祖先たちが記載されていることについて[1]

 聖書がその系譜を教えていないメルキゼデクよりも、はるかに偉大であった私たちの主にして救い主が、いまや父祖たちの系図に従って生まれたと叙述されています。そして彼の神性は人間の誕生には従属しなかったにもかかわらず、肉の内に生まれたあなたのために[2]、彼は生まれることをお望みになりました。しかしながら彼の誕生の秩序は、福音記者たちによって等しく語られてはいません。このことが、少なからざる人々を大いに困らせてきました。

 実際、マタイは、彼の誕生の系列を、アブラハムから始めて、(マタイが)次のように言う個所まで、すなわち「ところでキリスト・イエスの誕生は次の通りであった」と言う個所まで言い及んでいます。そしてマタイは、洗礼を受けた方を記述せず、この世に来られた方を記述しました。これに対してルカは、彼の誕生を提示するに当たって、その誕生を上から下へとたどるのではなく、(イエスが)洗礼を受けたことを前もって述べていたので、神ご自身のところにまで言い昇っていきます。



[1] Mt.1,1-17 et Lc.3,23-28.

[2] propter te, qui ortus in carne es,…オリゲネスは、その教話においてしばしば聞き手の内の誰か一人に語りかける。これは、聴衆の賛同を得る手段の一つである。

 

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