仏説三界建立の沙汰之事

 

 幽貞。わらわがようなる者の、争カ(いかでか)此の宗の貴き事を申し顕す事叶い侍らん。去り乍ら、無く成りし妻(=夫)のゆかりの人()、此の宗の出家にて、折々我が祖父のもとへをわして、物語し玉うを、傍え(かたえ)より常に承れば、自ずから耳に留まる事もあり。自然、又、貴く覚え侍る事をば、書き付け置きたる事もあれば、片端なりとも語り進す(まいらす)べし。委(くわ)しき事は御寺(=教会)へ御供申して、出家たちの口をも聞せまいらすべし。されば、三界建立などと申す事は、此の宗にては無き事と申す也。其の謂れをば、且々(かつがつ)左に顕すべし。理を以て、分別し玉うべし。

 

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