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12 以上のことを述べた上で、「諸々の天の国が、海の中に投げ込まれて、すべての種類から集める引き網に類比される」のは、人間たちにおける諸々の選択的意志の多様性の表示のためであると見なされなければならない。それらの意志は互いに著しい違いを持っているため、諸々の徳の数々の種類や諸々の悪徳の数々の種類への諸傾向において賞賛される人たちと非難される人たちを「あらゆる種類から集める」という言葉が存在することになった。

「諸々の天の国」は、千差万別の多様な諸観念から織り成されている新旧の()文書に即して、引き網の多様な織物に類比されている[1]。引き網の下に落ちた魚たちのあるものは、引き網の然々の場所で発見され、あるものは他の場所で発見され、それぞれの魚はそれを捕らえた場所の下で発見される。同様にあなたは、諸々の()文書の引き網の下に来た人たちに関しても、ある人たちは預言的な網――特定の言葉をきっかけにしてイザヤの網やエレミアの網やダニエルの網――に捕らえられ、他の人たちは律法的な網で捕らえられ、他の人たちは福音的な網で捕らえられ、ある人たちは使徒的な網で捕らえられるのを見出すだろう。最初にみ言葉によって漁された人、あるいは漁されたと思われる人は、引き網全体の何らかの一部によって取られた(だけである)。しかし、漁された魚たちの幾匹かが、諸々の()文書の中にある引き網の目全体に囲まれ、あらゆる方向から包囲され打ち負かされ、逃走できなくり、いわば全面的に隷属し、その引き網から逃がしてもらえなくなったとしも、それは馬鹿げたことではない。その引き網は、全世界のあらゆる所にいる人間たちの波浪に翻弄された生活という「海に投げ込まれた」。彼らは、生活の塩辛い諸々の生業の中を泳いでいる[2]。しかし、その引き網は、我らの救い主イエス以前に完全に仕上げられていなかった。なぜなら彼は、律法的預言的な網目に欠陥があることを指摘して、次のように言っているからである:「あなた方は、私が律法や預言者たちを廃止するために来たと思い込んではならない。私は廃止するために来たのではなく、仕上げるために来た[3]」と。実に引き網の網目は、諸々の福音と使徒たちを通したキリストの諸々の言葉の中で仕上げられた。このような訳で、「諸々の天の国は、海の中に投げ込まれて、すべての種類から(魚を)集める引き網に類比される[4]」のである。

 他方、以上に述べられた諸々の事柄とは別に、「すべての種類から(魚を)集める(引き網)」という言葉は、「すべての種類の諸国の民からの召し出し[5]」を示し得る。「海の中に投げ込まれた引き網」に仕える者たちとは、引き網の主イエス・キリストと、近づいてきて彼に仕えるみ使いたちである[6]。それらのみ使いたちは、引き網が満たされなければ、すなわち、「諸国の民の充満」がその中に「入って[7]」こなければ、引き網を海から引き上げることもなく、海の外の海岸の上に――この生活の外にある諸々の事柄へと――運ぶこともない。しかし(諸国の民の充満が)入ってくると、彼らは、この下方の諸々の事柄からその引き網を引き上げ、象徴的に呼ばれている海岸の上に運ぶ。その網を引き上げた者たちのそこでの仕事は、海岸に立ったり、あるいはそこに座ったりしながら、引き網の下にいる善き諸国の民のそれぞれを、ここで名指されている「諸々の器[8]」の然るべき地位に置くことであり、反対の状態にあって「値打ちがない[9]」と呼ばれている諸国の民たちを外に投げ捨てることであろう。この「外」とは、救い主が解釈して言ったようにように、火のかまどである[10]。救い主は次のように言う:「代の終わりにおいても同様だろう。み使いたちが現れて、彼ら邪悪な者たちを正しい人たちのただ中から分けて、彼らを火のかまどの中に投げ入れるだろう[11]」。さらに次のことが留意されねばならない:すでに、諸々の毒麦のたとえ話と先ほどの類比とを通して我々は、み使いたちは卑賤な者たちを正しい者たちから選り分け、分離する任務を委ねられているに違いないということを学んだ。なぜなら上述の箇所で次のように言われているからである:「人の子は、自分のみ使いたちを遣わすだろう。そして彼らは、ご彼の国からすべての諸々の躓きと、不法を行う者たちとを集めだし、彼らを火のかまどの中に投げ入れるだろう。そこには、嘆きと諸々の歯の軋みがあるだろう[12]」と。ここでも、「み使いたちが現れて、邪悪な者たちを正しい人たちのただ中から分けて、彼らを火のかまどの中に投げ入れるだろう[13]」と(言われている)



[1] オリゲネスに独自の解釈ではない。

[2] この言葉には慰められると思いませんか。

[3] Mt.5,17.

[4] Mt.13,47.

[5] Cf.Mt.28,19; Lc.2,32 etc.

[6] Cf.Mt.4,11.

[7] Cf.Rm.11,25.

[8] Mt.13,48.

[9] Mt.13,48.

[10] Cf.Mt.13,50.

[11] Mt.13,49-50.

[12] Mt.13,41-42.

[13] Mt.13,49-50.

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