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17 「その人にどこから、この知恵は来たのか[1]」という言葉は、イエスの諸々の言葉の卓越した知恵と、「見よ、ソロモンに優るものがある[2]」という言葉の妥当性を明瞭に示している。そして彼は、エリアやエリシャにおける諸々の奇跡よりも、さらにはもっと以前のモーセやヌンの()ヨシュアにおける諸々の奇跡よりも力ある諸々の奇跡を行った。ところが(それらの奇跡に)驚いた人々は――彼が乙女の子であるとは知らず、また人々がそういっても彼らは信じなかったので――、彼が大工ヨセフの子であると憶測し、「彼は、大工の息子ではないのか[3]」と言った。そして彼らは、彼に最も近い親族であると思われる人たちを軽視して、次の言葉を言い放った:「彼の母はマリアと言われ、彼の兄弟はヤコブとヨセフとシモンとユダではないか。そして彼の姉妹は皆、我々のところにいるではないか[4]」と。したがって彼らは、彼がヨセフとマリアの子であると考えた。しかし或る人たちは、『ペトロによる』と書き添えられた『福音』や『ヤコブの書』の伝承から動かされて、イエスの兄弟たちは、ヨセフがマリアの前に同棲した前妻との間にもうけた息子たちであると主張している。このことを主張する人たちは、処女性におけるマリアの品位を終局まで保持したい[5]と望んでいる――それは、「聖霊があなたに降り、いと高き方の力があなたを影で覆うだろう[6]」と語る言葉に仕えるのが相応しいと判断された彼女の身体が、聖霊が彼女の内に訪れ、いと高き方からの力が彼女を影で覆った後で、男の寝床を知ることのないようにするためである[7]。私も、イエスが男たちの貞潔における清浄さの初物になり、他方、マリアが女性たちのそれになるとするのは[8]、一理あると考えている。実際、処女性の初物が彼女以外の別の女性に帰されるのは吉兆なことではない。

 「ヤコブ」は、パウロが『ガラテヤの人たちへの手紙』の中で会ったと言っている人物である。彼は、「私は、主の兄弟ヤコブの他は、使徒たちの誰にも会わなかった[9]」と言っている。このヤコブは、正義において民の内でそれほどまでに輝いていたため、フラビウス・ヨセフス――彼は、20巻に及ぶ『ユダヤ古代誌』を書き、神殿が破壊されるに至るほどの数々のひどい苦しみを民が受けたことの原因を示そうと望んだ――は、次のように言ったほどである:神の忿怒に従ってそれらのことが彼らに降りかかった――キリストと言われるイエスの兄弟ヤコブに対して彼らによって敢行された数々の事柄のゆえに、と。彼(ヨセフス)が我らのイエスをキリストであると認めなかったにもかかわらず、ヤコブのためにかくも偉大な正義を証したことは、「驚くべきことである[10]」。また彼は、民もそれらの苦難をヤコブのゆえに受けたと思ったとも言っている。さらに「ユダ」は、数行しかない書簡を書いているが、その書簡は、天来の恵みに裏打ちされた諸々の言葉に満ちている。彼はその前文で、「イエス・キリストの僕であり、ヤコブの兄弟であるユダ[11]」と言っている。「ヨセフとシモン」については、我々は調べてみたが何もわからなかった。

 他方、「そして彼の姉妹は皆、我々のところにいるではないか[12]」という言葉は、何か次のことを意味しているように私に思える:すなわち、彼女たちは、我々に属する諸々の事柄を思慮しているのであって、イエスに属する諸々の事柄を思慮しているのではない。また彼女らは、イエスと同様に、飛び抜けた理解力という(我々とは)異質のものをまったく持っていないということである。それらの言葉を通して、イエスが人間でなく、何かしら神的な存在であることに関する迷いが現れているのではなかろうか――彼は、(人々が)憶測したように、ヨセフとマリアの子であり、四人の兄弟ばかりでなく、他の姉妹たちを持つにもかかわらず、親族の誰とも似たものを持たず、養育と勉学にもよらずかくも偉大な知恵と力とに到達したからである。実際、他の箇所で(彼らは)、次のように言っている:「どうしてこの人は、学問をしたこともないのに、諸々の文字を知っているのか[13]」と。これらの言葉は、ここで言われている言葉に似ている[14]。とにかく、それらの言葉を言った人々は、ひどく驚嘆し迷っており、信仰を持つどころか、「彼の内に躓いた[15]」;あたかも(彼らの)悟性の諸々の目が、(霊的な)諸々の力――(イエスは後に)それらの力を、受難の好機に、木の上で打ち負かすことになっていた[16]――によって支配されているかのごとく。



[1] Mt.13,54.

[2] Mt.12,42.

[3][3] Mt.13,55.

[4] Mt.13,55-56.

[5] to. a,xi,wma th/j Mari,aj evn parqenei,a| threi/n me,cri te,louj)

[6] Lc.1,35.

[7] オリゲネスはこの見解を常に支持している。

[8] avndrwn me.n kaqaro,thtoj th/j evn a`gnei,a| avparch.n gegone,nai to.n vIhsou/n( gunaikw/n de. th.n Mari,an)

[9] Ga.1,19.

[10] Jn.9,30.

[11] Jude,1,1.

[12] Mt.13,56.

[13] Jn.7,15.

[14] Mt.13,55-56.

[15] Mt.13,57.

[16] Cf.Col.2,15.

 

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