「また、諸々の天の国は、諸々の美しい真珠を探す行商人に類比している[1]」。

 多くの物を商う行商はたくさんいるにもかかわらず、「諸々の天の国は」、彼らの誰にも類比されず、「諸々の美しい真珠を探す行商」――しかも、多くの高価な真珠に匹敵する一つの真珠を見つけ、それをすべての物と引き替えに買った人――に類比されているのであるから、真珠の本性に関する諸々の事柄を検討することはまったく理にかなっていると私は考える。(主は行商人が)持っているすべての真珠を処分したと言わなかったことに、あなたは細心の注意を払うべきである。なぜなら「諸々の美しい真珠を探す」人は購入した諸々の真珠だけを処分しただけでなく、「持っているすべての物」を処分して、あの美しい(一つの)真珠を買ったからである。ところで我々は、石を取り扱う人たちの(著作の)許で、真珠の本性に関して次の諸々の事柄を見出した:すなわち我々は、諸々の真珠のあるものは陸地のものであり、他のものは海のものであるということを見出した。陸地の諸々の真珠は[2]、インド人たちの許でのみ作られ、諸々の印鑑と諸々の飾環と諸々の首飾りに向いている。他方、海の諸々の真珠で秀でたものは、同じくインド人たちの許で見出されるが、紅海[3]の中で産まれたものがもっとも高貴である。ブリタニアに面する大洋で採れた諸々の真珠が、諸々の真珠の中で第二位を占める。諸々の第一の真珠にばかりでなく、諸々の第二の真珠にも遠く及ばない第三のものは、ボスポラスのスキチア周辺の諸々の真珠である。

インドの真珠について、さらに次のことが言われている:それは、本性においてかなり大きな巻き貝に似た諸々の貝の中にできる。それらは、あたかも或る隊長によって指導されているかのように、いわば部隊ごとに海の牧草で作られていると報告されている。その隊長は、表面の色と大きさにおいて見事で、配下のものたちに優っており、蜂たちの王と呼ばれるものとの類比を有している。さらに諸々の秀でた貝、すなわちインドにおける秀でた貝の捕獲に関して、次のようなことが報告されている:現地人たちは、岸から大きく円を描いて漁網で取り囲んで潜り、すべての貝の中から指導者としての一つの貝を捕まえようと努める。なぜなら、これが捕らえられると、その配下の群れの捕獲は容易になるからだ;その群れに属する諸々の貝のどれ一つとして、もはやじっとしておらず、革紐で結ばれているかのように隊長に従う、と彼らは言う。

また、インドにおける諸々の真珠の生産は多くの時間によって成り立つとも言われている。その生物は完成されるまでに多くの転回と変化を経るからである。さらに、次のことも報告されている:真珠を宿している生物の殻は、あくびにも似た仕方で(口を)開く。そして開くと、天の露を自分自身の中に受け入れる。その清く澄んだ露に満たされると、それは輝くものとなり、大きく均整のとれた石を産み出す。しかしそれが時に、不純で濁り、嵐のように陰鬱な露を分け持つなら、諸々の染みに汚れ霞んだ真珠を孕む。我々はさらに次のことを見出した:(その生き物の殻が)孕んだ石の完成に向かう途上で稲妻によって阻まれると、それは閉じてしまい、子どもを恐れによって潰し、噴気のごとくに四散する。また、諸々の小さな未熟児のようなものが、隈のようなものを持って生まれる――もちろんそれらは均整がとれていない――ということもある。さらにインドの真珠は、他の諸々の真珠に優って次のものを持っている:それは表面の色が白く、白熱の銀に似ており、緑青の輝きを帯び、概して丸い形を有している。また、それは柔らかな色合いをしており、石にもまして遙かに柔らかく優美である。このように、眺めても心地よいものであるため、諸々の石に関して執筆した著者が述べたように、著名人たちの間で賞賛されている。また、ろくろで整形された円形と、光り輝く極上の純白色と、最大の大きさを持っていることも、この高貴な真珠のしるしをなしている。

ブリタニアあたりの真珠は、表面は金色であるが、どことなくかすみ、輝きもどちらかというの鈍い(と彼らは言う)。ボスポラスの海峡の中にある真珠も、ブリタニアの真珠によりも暗く、青白くでまったくぼやけているが、繊細で大きい。そしてボスポラス海峡の中の真珠は、真珠を産み出す貝殻の一種であるハボウキ貝の中で生まれるのでなく、カラス貝と呼ばれるものの中に生まれる。しかし、それら――私はボスポラス近辺の諸々の貝のことを言っている――のための食物は、諸々の泥の中にある。さらに、第四の種類の諸々の真珠、アカルナニア周辺のカキ貝属のハボウキ貝の中にあると報告されている。それらは、それほど立派なものでなく、形は均整がとれておらず、表面の色もまったく暗くされていて汚い。同じアカルナニア周辺にはそれら以外にも別の真珠があるが、あらゆる理由で軽蔑されている。



[1] Mt.13,45.

[2] もちろん、「陸地の真珠」は「宝石」のことである。

[3] インド洋を意味する。

 

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