19 ｢そしてイエスは、ご自分の弟子たちを呼び集めて言った[1]｣。
この諸々のパン(の増加の奇跡)に先立つもっと前の箇所で、諸々のパンに関するそれと似たような物語において[2]、｢(イエスは船から)外に行って多くの群衆を見た。そして彼は、彼らに対して腸を痛められ、彼らの病弱な者たちを癒やした。そして夕暮れになったので、弟子たちは彼の許に行って言った：『この場所は荒れ野です。そして時間は既に過ぎて行きました。あなたは彼らを解放してください、云々』と[3]｣。ところが今、彼は、口の利かない者たちと残りの者たちの癒しの後で、既に三日間も彼の許に留まり、何も食べていなかった群衆に対して腸を痛めている[4]。ところが前出の箇所では、弟子たちが、五千人のために求めているのに[5]、ここでは、四千人のためにご自身で言っている[6]。前出の人々は、彼と共に一日を過ごした後の夕暮れに養われているが、後者の人々は、彼の許に三日間も留まったと証されてから、｢道の中で疲れ切らないように[7]｣諸々のパンに与っている。前出の箇所では、｢五つのパンと二匹の魚｣だけを持っていると、弟子たちは、尋ねていない彼に言っている[8]。しかしここでは、尋ねた彼に、｢七つのパンと僅かな小魚｣に関して彼らは答えている[9]。前出の箇所で彼は、｢群衆たちが、草地の上に｣落ちるのでなく、｢横たわるように命じている[10]｣。ルカも、｢あなた方は彼らを横たえなさい[11]｣と書き記した。そしてマルコは、｢彼は、すべての人を横たえさせるように彼らに命じた[12]｣と言っている。しかしここでは、彼は、群衆に落ちるように命令するのでなく、そうするように勧告している[13]。さらに前出の箇所では、同じ諸々の表現によって三人の福音記者たちは、｢彼は、五つのパンと二匹の魚を取って、天の方を見上げ、祝福した[14]｣と言っている。ここでは、マタイとマルコが書き記したように、イエスは祝福して裂いた[15]。前出の箇所では、彼らは｢草地の上に｣横になったが[16]、ここでは彼らは、｢土地の上に｣落ちている[17]。しかしあなたは、それらの箇所に関する諸々の事柄の中で、ヨハネによって為された変化を探求すべきである。彼は、前者の行為に関して、次のことを書き記している：イエスは、｢あなた方は、人間たちが落ちるようにしなさい｣と言った、そして彼は、｢祝福してから、横になっている者たちに諸々のパンから与えた[18]｣。しかし(ヨハネは)、後者の行為にまったく言及しなかった。
諸々のパンに関するそれらの箇所で書かれた諸々の事柄の違いに注目すると、私は、後者の人たちが、前者の人たちより優れた地位にあると思う。それゆえ後者の人たちは、山の中で養われたのであり[19]、前者の人たちは、荒れた場所の中で養われた[20]；後者の人たちは三日間にわたりイエスの許に留まったが[21]、前者の人たちは一日にわたって留まり、その日の夕暮れに養われた[22]。さらに、イエスがみずから行うことと[23]、弟子たちから聞いて行為すること[24]とが同じでないとすれば、あなたは、イエスによっておのずから養われた人たちは、彼らを養う方の施しのゆえに優っているのではないかどうかを見てみるべきである。そして、ヨハネによれば、十二個の籠に収まりきれなかった諸々のパンが大麦からできていたとすれば[25]、しかし後者の諸々のパンについてそのようなことがまったく語られていないとすれば[26]、どうして後者の諸々のパンが、前者の諸々のパンより善くないのだろうか。そして、前者の人たちの中の｢病弱な者たちを、彼は癒やした[27]｣。しかしここでは彼は、群衆たちと一緒に(登ってきた)病弱でない人たち――しかし目が利かず、足が利かず、口が利かず、身体の曲がった人たち――を癒やした[28]；それゆえ実に彼らに対して四千人が驚嘆したが[29]、病弱な人たちに対してはそのようなことがまったく語られていない。祝福された七つのパンから食べた人たちは[30]、祝福された五つのパンから食べた人たちより優れていると[31]、私は思う。そして、僅かな小魚から食べた人たちは[32]、二匹の魚から食べた人たちより優れている[33](と私は思う)。おそらく、土地の上に落ちた人たちも[34]、｢草地の上に｣横になった人たちより優れているだろう[35]。また、前者の人たちは、より少ない数のパンから(食べて)、｢十二個の籠｣を残したが[36]、後者の人たちは、より多くの数(のパン)から｢七つの笊｣を残した[37]――より多くのものを受け容れることができたがゆえに。また、おそらく後者の人たちは、すべての諸々の土的なものを踏み登り、それらの上に落ち着いたが[38]、｢草地の上に｣(落ち着いた)人たちは、時ヌンたちの肉の上にだけ(落ち着いた)[39]。なぜなら、｢一切の肉は草地だ[40]｣からである。それらの事柄の次に、あなたは次のことにも注目すべきである：イエスは、食事を絶っている後者の人たちを解放することを望まなかった――それは彼らが、イエスの諸々のパンを欠く者たちとして疲れ切り、まだ各自の家への道の中にあるのに衰弱しないようにするためである[41]。またあなたは、どこかでイエスが(人々を)解放したことが書き記されているなら、その箇所にも留意すべきである――それは、イエスによって養われた後で解放された人たちと、別の仕方で解放された人たちとの違いを、あなたが見るためである。別の仕方で解放された人の範例は、｢婦人よ、あなたはあなたの病弱から解放された[42]｣という言葉である。他方、彼らとは別に、イエスと常に一緒にいた弟子たちは、彼から解放されなかった。食べた群衆たちが解放された。それに応じて弟子たちはさらに、カナン人の女性について大それたことはまったく考えずに、｢あなたは彼女を解放してください。なぜなら彼女は、私たちの後ろで叫んでいますから[43]｣と言っている。しかし救い主は、彼女を解放しているようには決して見えない。事実、彼は、｢ああ、婦人よ、あなたの信仰は偉大である。あなたの望んでいる通りになりなさい｣と彼女に言って、｢その時から｣彼女の娘を癒やした[44]。しかしながら、彼が彼女を解放したとは書かれていない。
以上のような諸々の事柄を、我々は、目前の言葉に関して、差し当たり吟味し、見ることができた。