次に私たちは、道徳的な諸々の事柄から、神秘的な理解に移りましょう。とは言え、前回の講話でも幾らか述べられていますので、欠けているように思われる事柄を付け加えることにしましょう。そこで私たちは、「モーセを貶す[1]」人が誰なのか、誰が彼について悪く言うのか考察することにしましょう。

 ユダヤ人ばかりでなく、律法と預言者たちを受け入れない異端者たち[2]、彼らも、モーセについて悪口を言います。実際、彼らは、彼に非難の言葉を向け、モーセは人殺しであった、なぜなら彼はエジプト人を殺したからだと言っています[3]。彼らは、モーセにおいてであれ、預言者たちにおいてであれ、さらに多くの非難を冒涜的な口から言葉巧みに生み出しています[4]。すなわち彼らは、「モーセの悪口を言っている[5]」ため、その魂の内で重い皮膚病を持ち、内なる人間において重い皮膚病にかかっており、かくして、神の教会の「宿営地の外[6]」にいます。ですから、「モーセの悪口を言う」人たちが異端者であれ、兄弟たちの悪口を言い、隣人たちについて悪く語る者たちが教会に属する人たちであれ、そのような悪徳に駆り立てられた人たちは皆、その魂の内で重い皮膚病にかかっているのは疑いありません。



[1] Nb.12,1.

[2] 144年にローマ教会から排除されたマルキオンの一派が考えられる。なお、マルキオンは旧約の神とイエスの神を区別した点で、グノーシス派の影響はないとは言い切れないが、人間の救済は覚知(グノーシス)によらず、信仰によるとした点で、グノーシス派とは異なる。

[3] Cf.Ex.2,12.

[4] alia multa (crimina) … blasphemo ore concinnant. 実際、異端者(特にキリスト教グノーシス派およびマルキオン派など)は、信者を獲得するための能弁で知られていた。Cf.eg.Ireneus, Adv.Har.I,27,2:「彼らは、独特の仕方で、弁論術を駆使して、単純なものたちを引き寄せた」。

[5] Nb.12,1.

[6] Nb.12,14.

 

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