聖ドミニコの九つの祈りの方法

 

朱門岩夫

1999


 

序文

聖ドミニコの七つの祈りの方法は、1260年から1288年にかけてのある時期に、おそらくボローニャで、無名の著者によって書かれた。ドミニコについての情報の源は、ボローニャの聖アグネス修道院のシスター・セシリア(彼女は、聖ドミニコから修道服を与えられた)と、この聖なる創立者と接触のあった他の者たちである。この尊い文書は、この聖人の卓越した聖性を証し、彼の内的な生活と神への熱烈な愛の何程かを明らかにしている。この作品の初期の写本には、聖ドミニコが祈っていたときの様々な姿勢を描写する細密画が載せられていた。これらの絵は、バチカン図書館ロッシアヌス写本3に納められたスペイン写本に見られるもので、熟練した一人の細密画家によって書かれた。その輝かしい色合いは今でも鮮明に残っている。この翻訳に載せられた略絵は、兄弟ジェローム・ニューウェルがこの細密画を翻案したものである。

九つの祈りの方法は、しばしばアポルディアのテオドリックの手になる聖ドミニコの生涯の付録として印刷されてきた。その経緯は、ドイツ管区長トレベンスのコンラートがイタリアでの総会に出席するために、1288年にボローニャを訪問したことに溯る。彼はそこで、聖ドミニコに関する九つの祈りの方法やその他の文書を見出し、それらをドイツに持ち帰って、テオドリックの手元に届けたのである。テオドリックはそのとき、聖ドミニコの伝記を執筆していた。

 

 


 

本文

 

聖ドミニコの九つの祈りの方法

聖アウグスティヌス、聖アンブロシウス、聖グレゴリオス、聖ヒラリウス、聖イシドーロス、聖ヨハネス・クリュソストモス、聖ヨハネス・ダマスケヌス、聖ベルナルドゥスのような聖なる教師たちと、その他のギリシア・ラテンの聖なる博士たちは、祈りについて詳細に語った。彼らは、祈りを勧め、それを描写し、その必要性と価値を指摘し、その方法と必要な態度、それを妨げる障害の数々を説明した。学識溢れる諸著作の中で、栄えある尊ぶべき博士にして説教者会の兄弟トマス・アキナスとアルベルトゥス、並びに徳についての論考を書いたウイリアムスは、魂がみずからをより信仰深く神のみ許まで高めるために体の肢体を用いる祈りの形式を、みごとに、そして聖にして信仰深く、麗しい仕方で考察した。魂は、このように体を動かすことによって、体によって動かされる。時に魂は、聖パウロがそうであったように、忘我のうちに恍惚となり、時に魂は、預言者ダビデのように霊の喜悦に捕らわれる。聖ドミニコは、しばしばこのようにして祈った。それ故、その彼の方法について我々が幾らか述べるのは、適切である。

確かに新旧約の多くの聖人たちが、時にこのようにして祈ったことが知られている。その祈りの方法は、魂から体への、そして体から魂への交互の働きかけによって信心を燃え立たせるのに有益である。この種の祈りは、聖ドミニコをして涙にむせばせ、彼の聖なる意志の熱意を高めたことだろう。その熱意たるや、彼の肢体が幾つかのしるしを通して彼の信心を明らかに表すほどのものであった。その結果、聖ドミニコの精神は、時として、その数々の嘆願と祈願そして感謝の間、上にあげられた。

さて、聖ドミニコがミサの最中と詩編の朗唱のときに使っていたとても信心深い習慣的な様式の他に、特別な祈りの様式がある。以下でこれらの祈りの様式について述べる。聖歌隊席においても、路上のおいても、彼はしばしは、突然、恍惚となり、神と天使たちの許に上げられていった。

 

第一の祈りの方法

第四の祈りの方法 第七の祈りの方法
第二の祈りの方法 第五の祈りの方法 第八の祈りの方法
第三の祈りの方法 第六の祈りの方法 第九の祈りの方法