20 以上のすべては、次のことを示すために我々によって言われた。すなわち、神聖な諸書を我々に与えた神的な力の目標は、言葉の下に示された諸々の事柄だけを(我々が)把握することではなく――なぜなら時としてそれらの事柄は、言葉通りの意味では真実を語っているわけではなく、不合理であったり、不可能だったりするからである――、むしろ、実際に起こった歴史や文字通り有益な立法[1]には或る数々の事柄が織り合わされているということである。しかし我々が以上のすべてに関して、次のことを言っていると憶測されないようにするために、すなわち何らかの歴史が実際に起きなかったがゆえに、いかなる歴史も実際に起きなかったとか、何らかの立法が言葉通りでは不合理であったり不可能であったりするため、いかなる立法も言葉通りに遵守されるべきではないとか、あるいは救い主に関して書かれた諸々の事柄は、感覚的な意味では[2]真実を語っていないとか、彼の立法や掟はことごとく遵守されるべきではないと、我々が言っていると憶測されないようにするために、次のように言われねばならない[3]。すなわち、或る諸々の事柄に関しては、歴史的な真実[4]が我々に明らかに示されているということである。たとえば、アブラハムがヘブロンにある二重の洞穴[5]に葬られたとか、イサクもヤコブも、また彼らのそれぞれの唯一の妻も同じ洞穴に葬られたとか[6]、シェケムはヨセフに分け前として与えられたとか[7]、エルサレムは、ユダヤの首都[8]でありその中に神の神殿がソロモンによって建設されとか、その他の無数の事柄がそうである[9]。実際、歴史的に語られた数々の真実は、(それらに)織り合わされた数々の純然たる霊的事柄よりもはるかに多い[10]。さらに「あなたは、父と母を敬いなさい。それはあなたにとって益となる[11]」という掟が、一切の比喩的解釈[12]なしに有益であり、まさに遵守されるべきであると、いったい誰が言わないだろうか。しかもその掟を、使徒パウロも、きっぱりと使っているのである[13]。また、「あなたは殺してはならない、姦淫してはならない、盗んではならない、偽証してはならない[14]」ということに関しては、何と言うべきだろう。他方、福音においても、数々の掟が、それらが言葉通りに遵守されるべきか否かを問われることなしに、書き記されている。たとえば次のように主張されている。「しかし私はあなた方に言う。自分の兄弟に怒る人は云々[15]」。「私はあなた方に言う。決して誓ってはならない[16]」と。使徒の書簡でも次の言葉が(文字通り)遵守されるべきである。すなわち「あなた方は、締まりのない人たちに忠告を与え、小心な人たちを励まし、弱い人たちを支え、すべての人たちに対して寛容でありなさい[17]」。とはいえ、より功名心に燃えた人たちの許では、それらの言葉の一つひとつは、言葉通りの掟が軽んじられないという条件で、神の知恵の諸々の深み[18]を保つことができる。



[1] nomoqe,sia)以下に「立法」訳した原語はすべてこれである。

[2] kata. to. aivsqhto.n)言葉通りの意味(kata. to. r`hto.n)と同義である。Cf.Com.Jn.I, 4(6), 24; I, 8(10), 44; C.Cels.VI,70.

[3] オリゲネスは、行き過ぎた比喩的解釈を聖書に施して、空しい作り話をするグノーシス主義者たちを牽制しているのであろう。ともあれ聖書の字義通りの解釈は、オリゲネスにとってその霊的解釈の土台である。

[4] to. th/j i`stori,aj ei=nai avlhqe,j)直訳は、「(それらが)歴史的に真実であること」。

[5] to. diplou/n sph,laion)この洞穴にはアブラハムとその妻がともに納められているので、意訳すればその句は、「二つの玄室を持つ洞穴」ということになる。Cf.Gn.23,2,9,19;25,9.

[6] Cf.Gn.49,31;50,13.

[7] Cf.Gn.48,22.

[8] mhtro,polij)「母なる都市」と訳してもよいかもしれない。

[9] オリゲネスは『原理論』(230年頃)を執筆する以前に(カルカラ帝の215年頃)、エルサレム周辺を実際に訪れて当地に関する見聞を広めていたと考えられる(Eusebios, HE.VI, 19, 15-19)

[10] Pollw|/ ga.r plei,ona, evsti ta. kata. th.n i`stori,an avlhqeuo,mena tw/n prosufanqe,ntwn gumnw/n pneumatikw/n)この一文は、オリゲネスの聖書解釈が論じられる場合に、しばしば引用される。

[11] Ex.20,12.

[12] avnagwgh,)

[13] Cf.Ep.6,2.

[14] Ex.20,13-16.

[15] Mt.5,22.

[16] Mt.5,34.

[17] 1Th.5,14.

[18] ba,qh sofi,aj qeou/) Cf.Rm.11,33.