我々は次のように主張する。我々によれば神の預言者であり、神の純正な奉仕者であるモーセは、『申命記』の讃歌の中で、地上の諸々の場所の分割に関して明言し、次のように述べている:「いと高き方がアダムの子らを散らし、諸民族を分けたとき、神のみ使いたちの数に従って諸民族の諸々の境を定めた。そして、彼の民ヤコブが主の取り分となり、イスラエルが彼の嗣業の割り当て地になった[1]」。諸民族の分割に関する諸々の事柄についても、同じモーセが、『創世記』と題された巻き物の中で、歴史の様式の内に次のように言っている:「全地は一つの唇であった。すべての人びとには一つの言葉があった。しかし次のことが起こった。彼らが日の出の方角から移動するとき、シンアルの地の中に平原を見出し、そこに定住した[2]」。彼は、少し後で次のように言っている:「主は降っていき、人間たちの子らが建てた町と塔を見た。そして、主は言った:『見よ、一つの種族と、すべての民の一つの舌を。彼らは、これを行ない始めた。そして今、彼らは、自分たちが行なおうと熱望するすべてのことを捨てるつもりはない。さあ、我々は降っていき、そこで彼らの言語を混乱させ、彼らがそれぞれ、各自の隣人の声を聞けないようにしよう』。主は、彼らをその地から全地の表に散らした。彼らは、町と塔を建設するのを止めた。それゆえ、その町の名は、混乱と呼ばれた。それは神が、その地で、全地の諸々の舌を混乱させ、主なる神はその地から彼らを全地の表に散らしたからである[3]」と。また、『ソロモンの(知恵)』」と題された『知恵の書』でも、知恵と、諸々の言語の混乱のときの人たちとについて――その混乱の中で、地上の諸々の場所の分割が行われた――次のようなことが知恵について言われている:「知恵は、諸民族が邪悪の和合の内に混乱させられたときでも、義人を認識し、彼を神に対して咎めのない者として守り、子どもへの愛情に優る強さを持つ者としてまもった[4]」と。



[1] Dt.32,8-9.

[2] Gn.11,1-2.

[3] Gn.11,5-9.

[4] Sg.10,5:以上は、『ケルソスへの反論』第5巻第29節後半部分の前半からの抜粋である。その残りは、次節で抜粋される。