使徒ペトロの弟子、ローマのクレメンスが、目下の問題に関連する諸々の事柄を、ラオディケアにいる父に『諸遍歴』の中で語っている。彼は、その問題に関する諸々の発言の最後に、誕生(占い)の諸見解をめぐって或る極めて重要なことが帰結したと述べている。同書の第十四巻[1]

22 父は言う:すまんが、わが子よ。お前の昨日の諸々の議論は真実で、私がお前に賛同するように導いた。しかし私の良心はちっぽけなもので、いわば余熱で私を苦しめ、ちょっとした不信に陥らせている。なぜなら誕生(占い)のすべての事柄が私に対して実現されたことを、私はよく知っているからだ。

 そこで、私は答えた:お父さん。私があなたに忠言している諸々の事柄から、あの占星術がどのような本性を持っているか、どうか私と一緒に考えてください。あなたが占星術師に出会ったら、先ず彼に次のように言ってください:かくかく然々の諸々の悪い事柄が然々の時に私に起こった。そこで私は、それが諸々の諸天体のどれから生じたのかを学びに来たと。彼は、あなたに言うでしょう:アレース[2]やクロノス[3]が禍をもたらす諸々の時を引き受けた。あるいは、彼らのいずれかが(懲罰から)復帰した[4]。あるいは、その年に、矩[5]や視角から観察された。あるいは合朔[6]したり、周回したり、陣営から離れていたと。しかし、他にも無数の事柄を言うことができます:それらに加えて、善をもたらす天体が、悪い天体に結びつけられていたり、観察されなかったり、形を成さなかったり、陣営から離れていたり、食の内にあったり、(他の天体に)連結していなかったり、暗い諸天体の内にあったりと。しかし多くの口実が存在するわけですから、彼は、(あなたから)聞いた諸々の事柄に対して、数々の証明を提示することができます。そこであなたは、その占星術師の次に、別の占星術師の許に行き、反対のことを言ってください:かくかく然々の善いことが然々の時に私に起こったと。で、あなたは、同時にこう言って、尋ねてください:それは、どの誕生()から起こったのかと。それでも、私が先ほど言ったように、彼は、あなたが嘘をついていたとしても、多くの布置の中から或る一つの布置を、そして第二の布置を、そして第三の布置を、さらにもっと多くの布置を見出すことができ、諸々の善きことをあなたに起こさせたのはそれであると言うでしょう。なぜなら、人間たちの一切の誕生において、どんな時にも必ず、或る諸天体は善い仕方で配置し、他の諸天体は悪い仕方で配置するからです。実際、()球は、等しい部分からなるとともに多様であり、無数の口実を許し、人はそれぞれ、各自の善くする事柄をそれらの口実に従って言うことができます。

 実際、私たちは、錯綜した諸々の夢について時として何も理解しませんが、(それらの夢が)実現すると、極めて適切な説明を加えます。それとまったく同様に、占星術も、何ごとかが成し遂げられる以前は、私たちに何も明瞭なことを開示できませんが、実現したことの報告がなされた後は、その発生の原因は明白になります。ですから、予言する人たちはしばしば間違えます。そして発生した後で、自分たち自身を責めて「これが作動因だった。私たちは知らなかった」と言います。非常に賢明な人たちでも――昨日、私が申したとおり――知らないがゆえに間違えることがあります:どのようなこが出来事の原因であり、どのようなことがそうでないか、また、私たちがどのようなことを為そうと望み、どのようなことを為さないかを完全に知らずに。その理由は、こうで、神秘を学び知っている私たちにとってはまったく明瞭なことです。すなわち、私たちは自由な思慮を持っており、欲望に負けて同意する時もあれば、欲望に勝って抑えるように決断するときもあることです。ところが、占星術師たちは、他ならぬこの神秘を知らずに、始めから一切の選択的意志について発言したため間違えてしまい、数々の厄年を考案し、選択的意志を不確かなものにしてしまいます。それは、私たちが昨日、指摘したとおりです。以上の他に何か言い添えることがおありでしたら、おっしゃって下さい。

 父は、お前が言ったこと諸々の事柄より真実なものはないと断言して答えた。



[1] 本節は、もちろんオリゲネスの著作からの抜粋ではなく、フィロカリアの写本の伝承の過程で付加されたものと考えられる。本節は、偽クレメンス文書からの抜粋であるが、ギリシア語でつたえられたものとしては、本節が唯一である。

[2] 戦争と破壊の神。

[3] ギリシア神話の神。説明すると長くなるので、各自、適当な事典で調べよ。

[4] 本来の位地に戻ったということであろう。

[5] 「く」と読む。その意味するところは、外惑星が黄経差九〇度の位置にあることである。詳細は、各自で調べよ。

[6] 「がっさく」と読む。「合(ごう)」ともいう。星が太陽と同方向に来る現象。