しかしあなたの願いは、諸々の悪の発生について探求することなので、それらの悪に関する議論に私は進みましょう。しかし、私は、あなたに幾らか聞きたいことがあります:諸々の悪は、諸々の実体であるとあなたに思われるか、それとも、諸々の実体の諸々の性質であるとあなたに思われるか。

諸々の実体の性質であると言うのがよいと、私には思われる。

ところで、質料は無性質で無形態のものか。

それを議論の前提にして、私は発言した。

すると、もしも諸々の悪が諸々の実体の諸性質であるとし、質料が無性質であるとすれば、あなたは神が諸々の性質の製作者であると言ったのであるから、神は、諸々の悪の造物主にもなるだろう。したがって、神はそのように諸々の悪の原因でないと言うことができないのであるから、質料を神に帰すのは余計なことであると私には思われる。もしもあなたがそれに対して何か言うことがあれば、議論を始めてもらいたい。もしも私たちの探求が競争心から生じたのであれば、諸々の悪に関して第二の定義を述べるのは適切でないと私は思うかもしれない。しかし、むしろ友情と、隣人への利益とから、諸々の議論の検討を行っているのであるから、始めからそれらに関して定義が述べられるのに同意することは適切である私は思う。

私の意向と、諸々の議論における関心は、前々からあなたに明らかであると私は思う。すなわち私は、偽りをもっともらしく言うことによって勝ちたいのではなく、正確な吟味によって真理が示されることを望んでいるのである。また、あなたも同様の姿勢であることを私ははっきり承知している。それゆえ、真理を発見できるとあなたが思っている類の仕方を、あなたは少しも恥じることなく使うべきです。あなたは、より優れた仕方を使うことによって、あなた自身を益するばかりでなく、私が知らない諸々の事柄に関して、私をも確実に益するからである。

 諸々の悪も何らかの諸々の実体であることを明瞭に証明することができると、私には思われる。なぜならそれらが、諸々の実体の外部に存在するのを私が見ないからである[1]



[1] 次節から明らかだが、この一文は、対話相手の発言である。