10 信仰に関する第一の戦い――火の中から飛び出した文書

 

当時アルビーの地で、あらかじめ任命されていた裁判官を前にして、カトリック教徒と異端者の間の論争が何回も企てられた。そしてこれを見物しようと多数の男女・金持・貴族,平民が集まった。ファンジョーにおいてある有名な論争が企画されると、一異端者が信仰に敵対する文書をしたためた。すると多数の修道士も同じく、信仰を守るためにその正当性および権威を述べた幾つかの文書を急いで作成した。全文書が厳しい審査を受け、取り除かれ、ついにドミニコのものが全員一致のもとに通過し推薦された。

指定された日に大勢の人びと、論争に加わる人、裁判官が集まった。両派の文書、すなわちドミニコのものとある異端者のものが中央に提出され、ふたつのうちのいずれに理があるかについて火のような論争が開始された。多くの言葉と理論が交錯したが、意見の一致を見ることができず、諸裁判官は次のような決定を下だした。炎が文書の真実性に裁きを下だすであろう、そして炎から無傷で出て来たものは、全ての疑いを解き真実の信仰の証とみなされるであろう。火が焚かれ、その裁きを求めてひとつひとつ文書が火中に投げこまれた。異端者の文書は即座に炎に焼き尽くされたが、ドミニコのものは少しも損われなかったばかりか、火中から遠くへ飛び出してしまった。再度そして三度も火中に投じられたが、その度に消滅することなく飛び出して来た。これはカトリックの信仰の真実性およびその著者ドミニコの聖性の明らかな証である。