27 ステファン枢機卿の甥が生き返ったこと

ドミニコがローマに滞在中、フォッサノバの枢機卿ステファンの親族のある青年が、馬から落ちて重傷を負い、意識不明のまま連れ帰られた。彼の周囲で憂いなげく声が大きくなったので、ドミニコがそこへ来た。彼とともに、信心深い兄弟タンクレードとよばれる修道士が来たが、彼が述べた話が世に拡まった。それによると、タンクレードは青年の生命を主に願ってくれるよう彼に嘆願して言った。 「父よ、あなたのあわれみはどうなっているのです。主への信仰はどうなったのですか。なぜ主に叫び求めないのですか」。あの人は、その修道士が執拗に嘆願したからばかりでなく、彼の慈悲の心に打たれ、青年の遺体を離れた部屋へ移すように命じた。そして祈ると即座に彼に生命と健康が与えられた。