彼の誕生の聖なる前兆――家柄および幼年時代

 

彼の母は懐妊する前に、次のような夢を見た。体内に子が宿り、その子は火のついた松明を持っており、彼が胎外に出るとその火でもって世界を燃すがごとくであった。

これは、炎の,薬を唇にして冷えた愛徳を大勢の人びとの心のうらに燃え立たせ、たゆみない説教の叫びで狼を羊の群れから追い仏い、徳を見張ることにより罪に眠っている霊魂を日覚ますに違いないすぐれた説教者が彼女から誕生することを意味していた。

これは後日実際に確認された。彼は罪悪に対する偉大な責め手であり、異端に対して強硬な敵であり、信心深い人びとの勤勉な助"者であったから。エリアの精神と力をもって来たので、真実彼の言葉は松明のごとく燃えた。

信心深い両親かわ生まれ、宗教的な教育を受けたので、幼時から才能をのぞかせた。なぜなら、仕合わせにも善良な霊魂を授けられ、主はあらかじめ仕合わせな祝福を下されていたからである。

父の名はフェリックスで、母はファナであった。彼ら信心深い気持から、新しい泥でできた聖油壷のごとく、聖い芳香をいっぱいに吸収するよう、そして粘土が後で固まった時に快よい薫がするよう、ドミニコの霊に俗事がしみこむ前に聖職者として教育することにした。

幼時にしてすでに老人の心を授かり、彼のいとけない顔の下に、尊敬すべき白髪の人の判断力が隠されていた。

まだ幼くで乳母の世話を受けていたとき、肉体を甘やかすことをもはやいとうがごとく寝床から抜け出し、床で寝ることを好んだので乳母は何度か驚かされた。そしてその時以来。やわらかい。寝床に憩うことを徐々に少なくし、床に寝る習慣がついて来たのである。「子供に行くべき通を教えよ。そうすれば年老いても道をそれぬであろう」というまだ読んでいなかった格言をすでに理解しているように思われた。