31 神の啓示により兄弟ドミニコと合流したある司祭

 

ある司祭は、ドミニコと修道士たらが忍耐強く説教に専念し、地上の報いを気にかけずただ霊のことのみを切望し、地上の全てのことを軽く見ているのを知って、彼らの聖い生活を羨ましく思い、何らかのことについて彼らに続き、彼らを手本とすることができたら幸福であろうと考えた。それゆえ、説教のためには非常に有用である新約聖書を手もとにおくだけで、あとは全て放棄することに決心した。このことを考えていた時に、青年が本を売ろうとして腕にかかえて現われた。それで何の本であるか司祭が訊ねると、新約聖書であることが解ったので、喜んで即座にそれを買った。

その本を手に人れると、すぐ誘惑が彼を襲った。計画を突行に移すのが適当なことかどうか、また神の喜びとなるかどうか迷い始め、彼の心に数多の疑念が生じて来た。しかしその本に神の回答を見出すことができるように思われたので、神に祈りを捧げながら閉じた本の上に十字の印をし、主の御名をとなえて本を開いた。本を開いたとき見えた最初の章に日を走らせると、視線の合ったのは使徒行録めある章であった。そこには、聖霊が聖ペトロにコルネリオの使者について語っている文章が書いてある。 「起きて下り、迷うことなく彼らといっしょに行きなさい。彼らを送ったのは私である」(註・使徒行録一〇の二〇)。神の言葉により確証を得たので、俗世を捨てて修道士たちの伴侶となった。