40 病の完治

 

イギリス生まれで、ウォルセスター教区に属し、ボローニャに住んでいたニコラス・デ・ボスコと称する学生が下腹と膝の激痛に苦しめられ、聖ミカエルの祝日から聖霊降臨の祝日の間自分で起き上がることもできず、松葉杖や他人の助けがなければ家の中を歩くこともできなかった。ついには痛みがこうじて十五日間病床にねたきりであった。左足は徐々に乾燥しひからび、そのため医者は回復の見込みがないと考えた。医学において最も効果があると思われる療法を試みたが、役に立つどころか悪化する一方であった。それで人間の力による全ての救いに絶望し、イエズス・キリストとドミニコにすがって、次のように言った。「この病から解放されるようイエズスとドミニコにおすがり申します。お望み下さるらこれは実現されるこしとでしょ」。

学生は信心の証として、彼の体と同寸法のろうの像を捧げようと思い、そのろうの像に芯にする麻紐で体の長さと幅を測り始めた。頭・首・胸・下腹を測り、測る毎にイエズス・キリストとドミニコの名を呼んだ。最後に膝を紐で測ると、直ちにそこが軽くなったのを感じ、「もう治った」と叫んだ。そうして立ち上がり、嬉し泣きに泣いた。松葉杖もだれの助けも借りずに走り、乗物も必要とせずにドミニコの遺体の安置されている聖ニコラス教会まで行った。その教会は彼の家から矢の屈く距離にあった。

以前の健康体に戻り、キリストのみ名に感謝を捧げ、福なる人ドミニコの聖性を証して教会を去った。