彼の愛徳心の英雄的一面

 

神の僕ドミニコがまだバレンシアに滞在していたときに、酷しい飢饉でスペイン全土が荒廃した。だれも慰めてくれる者もないままに、貧しい人びとが悲惨な生活を送っているのを見たドミニコは、激しい同情心で心が痛んだ。すでに幼時からあわれみの心が生まれそれが育って来ていたので、自分の上に他人の憂いを山と積み上げ、嘆きがどのようであろうとそれに参加することを辞さなかった。彼の心の住いを不年な人びとの病院とし、あわれみの心をだれに対しても閉じることはしなかった。

こうして貧しい人びとの差し迫った困窮に動かされ、福音の勧めることを行ない、同時に死に瀕している隣人の、不幸の救済を実行することに決めた。彼にとって必需品であった書籍と全ての家財を売り払い、貧しい人びとにその金を分から与えた。こういう模範を示すことによって彼が貴人・金持・教師たらのあわれみの心を動かしたので、彼らはその青年の物惜しみしないことを見て自分たちの卑しむべき吝嗇に気付き、そのとき以後は多くの施しをするようになった。