ローマへの道――シトー

 

司教は旅を統け、使節の任を果たし、目的が達成されると、交渉が成功したことお上び貴婦人の同意を得たことを国王に伝えるため帰国した。そして再び同国王によってデンマークに派遣され、前より豪華華麗な供者を連れて旅立った。しかし、さまざまな苦労の後スペインへ伴うことになったその貴婦人はすでに死去していた。

これは人間の結婚よりも、主と霊魂のすぐれた霊的結び付きを人びと思い出させようとして、み摂理が図られたことに相違ない。司教は国王には使者を送り、自分は司祭たちとともにローマ教皇庁に向かった。そして、教皇に、もし牧者としての仕事をはばんでいる日常の雑務を免除してくれるのなら、クマーノ人の改宗の仕事に全努力と熱意を投入すると述べ、役職を辞させてくれるように願った。しかし教皇はその願いを聞き入れなかったばかりか、クマーノ人の地へ行く許可さえも与えようとはしなかった。

それで司教は引き返して途中シトーを訪ねた。その地の多数のキりストの僕の聖なる生活に尊敬の念を抱き、その修道会の美しさを快よく思い、その修道服を着けた。そして何人かの修道士を随員に加え、スペインへの帰途を急いだ。その修道士たらにより、司教は自分が入会した修道会の生活を習い覚えようとしたのである。しかし、たびたび彼の計画を矯正し、他のさらに立派な仕事を行なうように導かれたみ摂理は、今また道にひとつの障害をお置きになった。