もう少し距離を取ろうと移動をし、弾頭を装填しようとした正にその時、水瀬大佐から緊急連絡が
入った。
『予定していました訓練は全て中止し、皆さん速やかに基地へと戻ってください。』
死刑宣告に等しかった・・・・・。
泣く泣く試射テストを取り止め撤収を始める。
急ぎと言う事で展開したテント等はホバートラックの荷台に放り込んで置いた。
帰る道中試射が出来なくなった事を思い少しイラつく。
『ご機嫌斜めだな。』
ヘッドセットに笑いを含んだ声が飛び込んでくる。
伊達に俺とはツルんでいないな、俺の事などお見通しって分けだ。
「うるせー、なんならお前に撃ち込んでもいいんだぜ?」
併走するホバートラックに砲口を向ける、もちろん弾は入っていない。
『あはは〜っ、祐一さんに撃たれますぅ〜。』
楽しそうに佐祐理さんが乗ってくる、固定武装の機銃座のハッチを開き佐祐里さんが身を乗り出
すと長い髪が風に靡く・・・カメラを向けると、あの笑顔を俺に向けてくれる。
『何を遊んでいるの?』
唐突に無線機に割り込みが入って来た、上位チャンネルなのでカットは出来ない。
「うえっ、うるさいのに見つかった・・・。」
迂闊にも声に出してしまった。
『そういう事を言う訳ね。』
後方から一台のバギーが爆音と共に姿を表す、野戦仕様の高機動車だ。
メインスクリーン上に拡大映像を出すと、搭乗者は二人。
乗っているのは美坂姉妹の様だった。
香里のヤツは相変わらず助手席でふんぞり返り、腕を組んでいるが、風対策で纏められた髪の
所為で普段とは違う印象を受ける。
ゴーグル代わりに付けているサングラスが太陽光を反射し威圧感を演出する、何故睨む?
「か、香里ぃ〜、そのサングラスは・・・如何かと思うぞ。」
チョットばかし腰が引ける・・・。
『何よ、文句ある?』
キッと睨まれる、モニター越しの筈なのにその威圧感は全く衰えない、《威圧する目》とは良く言っ
た物だ。
「う〜む、まるで女王様だ。」
考え事をした所為で本音が漏れる。
『鞭でも持って、ピシィ!って感じ。』
余計なツッコミを入れる北川、キジも鳴かずば撃たれまいに・・・・。
『き〜た〜が〜わ〜く〜ん!後で覚えてなさいよ、相沢君もね。』
なにやら生命の危機を感じる、速攻で手を打たなければ・・・、よし、これだ!
「そ、そんなに怒ったら美人が台無しだぞ〜。」
『サングラスで分らないわよ。』
・・・・撃沈。
『今のでお姉ちゃん、本気で怒っちゃいましたよ〜。』
死刑宣告を楽しそうに言われても、宣告される側は全く楽しく無いぞ・・・どーしろと言うんだ。
「おい!北川、お前が何とかしろ、」
状況打破を北川にさせる、上手く行けば被害は最小限で済む筈だ!
『ふぇ?むりですよ〜北川さんは隅っこで怯えてますからぁ〜、あはは〜っ。』
・・・死亡確定。
『こら〜、わたしを置いてくな〜。』
土煙を上げながら遥か後方より何かがやって来る、モニター上の映像を拡大すると、バイクに跨
り何やら喚きながら真琴がやって来た。今の時代には珍しくガソリンエンジンを積んでいるらしい、
音声にバイクからの爆音が混じっている。そう言えば香里達のバギーもエンジンだったな。
『酷いよかおり、置いていくんだもん!』
何とか追いつくと速度を緩めるが、長いツインテールは風によって踊り続けている。
『何言っているの?サボっているあなたが悪いのよ。』
冷たく言い放つ、
『ムッキ〜!あたしサボってないもん、サボってないもん!』
『お昼食べた後、丘の上で寝てたじゃない。』
香里が暴露する。
『うっ!・・・・・見られてた?』
『当たり前でしょ、あんなに堂々と寝てたら。』
『あう〜・・・・・。』
速度が落ちて、ズルズルと後ろに下がってゆく。
「ところで、天野と舞はどうした?」
『あの二人なら、河川沿いに戻って行ったわ。車じゃ付いて行けない所だからこうして、大回りし
てきたのよ。』
なるほど、納得。
『名雪には連絡したのか?』
『大丈夫よ、秋子さんが連絡してる筈だから。』
言われて、カメラを上空に向けると先程まで見えた機影が既に見当たらなくなっている。
「あゆの奴大丈夫かな?」
『名雪さんの代わりに私が乗っていれば手加減も出来たのですけど・・・。』
申し訳なさそうに栞が呟く、仕方が無いこれも訓練だ。あゆは航空機オペレーターとしての訓練
を受けている、今日はその中でも特別ハードな訓練の日だった。
「確かに名雪のアクロバットには付き合いたくないよな・・・。」
以前乗った時の事を思い出す、あれは想像を越えている。ブルッと体が震えてしまった。
やがて、前方に基地の管制塔が見えてきた。
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