ミニオン論V −ヒポクリシーによる北部方面侵略作戦−
(2023年01月23日発表)

はじめに:
 ミニオン論Tにおいてミニオンには4人目が存在し、それが「偽善」のヒポクリシーであるという仮説を述べた。
 本稿はその仮説上の存在が実在したという前提のもとで、4人目のミニオンの暗躍について言及する。

1.ヒポクリシーによる第一次デステニィストーン獲得計画
 ロマ1のゲーム内において北部方面(ローザリア及びローザリア北部)でミニオンの姿を見かけることは一度もない。
 この理由について「ミニオン論T」では、ゲーム内の物語の時点では北部担当のミニオンが既に消滅してしまっていることを指摘した。
 つまり、4人目のミニオンの活動は過去に行われていたのだと思われるのである。
 そこで、文献に記載されている北部方面に関する断片的な記述・・・具体的には「カール1世がアクアマリンを湖底に隠した」(基礎知識編)という旨の説明の背景にはミニオンの暗躍があったのではないか?という可能性をもとに、過去にどのような出来事があったのかについて推察する。

(1)追いかけてジャングル
(i)闇の女王の面影
 時はロマ1の物語のおよそ90年ほど前、北バファル戦争に勝利したローザリア王国がカール1世を中心として戦争で傷ついた国の復興に尽力していた頃のことである。
 「封印されたサルーインの肉体から何百年にも渡って染み出して実体化した」(大事典)存在であるミニオンで最初に誕生したのは「偽善」のヒポクリシーであった。
 当時はミニオンが4人全員誕生しておらず、各自の担当地域がまだ決まっていなかったので、ヒポクリシーはとりあえずサルーイン教団に接触し、世界の情勢を把握するとともに、デステニィストーンの所在を知ろうとした。
 しかしながら、当時はまだハオラーンの著書「世界のデステニィストーン」(大事典)も発行されていない頃であったため、誰もデステニィストーンの在処を知る者はいなかった。

 そこで、ヒポクリシーが最初に向かったのは「シェラハ降臨の地とされるノースポイント」(大事典)であった。
 ノースポイントは「シャラハを信仰する暗黒主義者達がシェラハの姿を一目見ようと集まってくる場所」というのである。(大事典)
 シェラハに会えるかどうかその真偽は不明であったが、何も手がかりが無いからこそ何か少しでも手がかりを得られればとノースポイントに訪れたのである。
 その結果、運命はヒポクリシーに味方した。
 ノースポントに滞在中だったシェリルを目撃したのである。
 #ゲーム内ではクリスタルシティとノースポイントのパブでシェリルの姿を目にすることができる。おそらくこの辺りを巡回・放浪しているのであろう。
 

 シェラハが「光」のダイヤモンドを指にはめられてシェリルとなったのはサルーイン封印後であるから(「運命石論T」を参照)、サルーインを含めた邪神一派でシェリルの正体を知る者は誰もいない。
 故に、ヒポクリシーもシェリルの正体がシェラハだとは思わなかったものの、シェラハ降臨の地でシェラハの面影を持つ女性を目にして、何かしらの因縁を感じ取ってしまったのである。
 一方のシェリルも自分を見て表情を変えたヒポクリシーに気付いて、言いしれぬ不安感に襲われた。
 そして、無我夢中でその場から離れ、そのまま港の船に乗り込んでアロン島(ゴドンゴ)に逃亡したのである。
 

 ところが、ヒポクリシーもシェリルを追ってアロン島に上陸したのであった。
 ストーカーに追われたシェリルはジャングルに逃げ込んで身を隠す。
 それを追ってヒポクリシーもジャングルに侵入する。
 そして、逃げたシェリルを探して辿り着いたジャングルの奥地で、ヒポクリシーの前に立ちふさがったのは青い巨竜であった。
 「ん?お前の後ろの宝は何だ?」
 ストライフの問いかけに対して青い巨竜は威嚇で返す。
 こうしてヒポクリシーと青い巨量の戦いが始まったのである。
 

(ii)VSブルードラゴン(L)
 「ミニオン論V」においてストライフの幻影を消滅させたのはシルバーの洞窟において「風」のオパールを護るブルードラゴン(L)であったことを述べた。
 ヘイトとワイルならば容易にブルードラゴン(L)を倒すことができたのであるが、ストライフではどう足掻いても倒すことができないようであった。
 では、ヒポクリシーはブルードラゴン(L)を倒すことができるのか?

 ヒポクリシーはゲーム内に登場しないため、当然正式なステータスは存在しない。
 しかしながら、3人のミニオンのステータスを見比べてみると、各種ステータスや耐性などは全て同じなのでヒポクリシーも同じと考えてよいだろう。
 違いがあるのは習得術法の系統と術法習得値であるが、ヘイトが「闇」でワイルが「邪」、そしてストライフが「火」なので、バランスを考えるとヒポクリシーは「風」だろうか。
 そうだとするとヒポクリシーのステータスは以下のようなものになると思われる。
HP
7301/7373 84 84 84 84 84 84 84 0 84 4 - - -
- - - - - - × - - - -
1:通常攻撃14
風:50/50/64〜127(吹雪、風エレメンタル、ウインドバリア)
もしくは
風:50/50/32〜63(ブラッドフローズ、風エレメンタル、ウインドバリア)

 そして、対するブルードラゴン(L)のステータスは以下の通りである。
HP
9736/9812 68 102 68 68 68 68 68 0 68 4 - × -
- - - - - - - - - - - - - -
1:稲妻14(稲妻(全))
2:牙14(毒牙、麻痺牙)
風:70/70/0(なし)

 いざ戦ってみると、結果は高い確率でヒポクリシーの勝利となる。
 最高位術法がブラッドフローズならば、それで気絶させて一撃死が可能である(成功確率はそこそこ程度)。
術名 対象 属性 (追加)効果 特性 タイプ 算出
ブラッドフローズ 9 - 遠1


即死
気絶 - 3-3 術法状態異常1

 また、最高位術法が吹雪の場合は、吹雪乱打では火力の差で勝ち目が無いが、エレメンタル(風)でブルードラゴン(L)の稲妻(雷属性)を完全無効化して、引き当てた攻撃術法(主にライトニング)で攻め立てればまず間違いなく勝つことができる。
名称<
風:エレメンタル - - - - - - - - - - - -

 エレメンタル(風)がブラッドフローズを引き当てたら、それで気絶させてもよいだろう。
 このように、風術に長けたヒポクリシーならば容易にブルードラゴン(L)を討伐することができるのである。
 

 青い巨竜を退けたヒポクリシーは、巨竜の守っていた宝箱に手をかけた。
 「おぉ!これはもしや・・・」
 こうしてヒポクリシーは幸先よくデステニィストーンの一つ、「風」のオパールを入手したのであった。
 #ワイルは「闇」のブラックダイアを発見時に即座に破壊したが、これはハオラーン(エロール)が流した「クジャラートとローザリアの戦争により『光』のダイヤモンドが失われたことが、サルーイン復活の原因になった」(徹底攻略編)という噂を信じたからである。一方で、ヒポクリシーが「風」のオパールを発見したのはハオラーンが噂を流す前だったので、その場では破壊しなかった。仮にその場で破壊していたら、この時はヒポクリシーは本体で活動していたのでオパール破壊の巻き添えとなってその場で消滅していたことであろう。

(2)砂漠の地下の悲劇
 追っていたシェリルを見失ったものの、追った先で意図せず「風」のオパールを手に入れることができたヒポクリシーは意気揚々とノースポイントに戻った。
 そして、次はガレサステップに向かった。
 シェラハ縁の地に赴くことで「風」のオパールを入手することができたことから、神に縁のある場所に行くことで別のデステニィストーンを入手することができるかもしれない!と験を担いだのである。
 #ガレサステップにはエロールやニーサを祀った巨石群(ストーンサークル)が古くからある。
 

 そして、そのヒポクリシーの勘は正しかった。
 放牧中のタラール村の老人を拉致・拷問することで、カクラム砂漠の地下には「土」のトパーズが奉られていること、そしてそれが地底の民によって守られていることを聞き出したのである。
 「なるほど、地底に逃げ込んだ者たちが守っているのか・・・それならば・・・」
 ヒポクリシーはローザリア北部のモンスターを終結させ、モンスターの大軍を率いて砂漠の地下に攻め入ったのであった。
 

 圧倒的な数の力によって地底の民の集落はさすすべもなく蹂躙された。
 そこに助けに入ったのが砂漠の地下のタラール族の避難地に移り住んでいたローザリア王国先代国王のクラウスとタラール族先代族長のアイシャであった。(「クラウス論」を参照)
 それは勝利の見込みなど無い絶望的な戦いであった。
 しかしながら、ニーサの加護もあったのか、二人は大量のモンスターを退けて、ついにはヒポクリシーを切り裂いたのである。

 ・・・・・・・静かになった砂漠の地下。
 生き残った砂漠の民たちが見たものは、大量のモンスターの亡骸の中で二人寄り添って事切れている二人の英雄の姿であった。

 一方で、ヒポクリシーは重傷を負いながらも地上に逃げ延びていた。
 「・・・まさか・・・この私が・・・人間如きに・・・後れを取るとは・・・」
 そんなヒポクリシーの前に傷ついた青い巨竜が立ちふさがった。
 アロン島で退けたブルードラゴン(L)がヒポクリシーを追ってきたのである。
 「我が父の形見・・・返してもらうぞ・・・」
 瀕死のヒポクリシーにはもはやブルードラゴン(L)を返り討ちにするだけの力は残っていなかった。
 
 ・・・・・・・・・
 ブルードラゴン(L)の襲撃を受け、「風」のオパールを奪回されたものの、ヒポクリシーはしぶとくまだ生き延びていた。
 そして、屈辱にまみれたまま封印の地(ラストダンジョン)に戻り、一旦傷の回復に専念することになったのである。

 時は流れ、ヒポクリシーの傷が完全に癒えた頃、残りの3人のミニオンもようやく誕生した。
 早逝のヒポクリシー「外界はヤバいわ。」
 直情のストライフ「マジ!?、パねーな!!」(「ミニオン論V」を参照)
 見当外れのワイル「でも、俺らが本気出したら大丈夫じゃね?↑」(「ミニオン論W」を参照)
 有能なヘイト「念のために幻影体を作って、外界ではそれで活動しましょう。」(「ミニオン論U」を参照)
 こうしてミニオン4人は外界で活動するための身体(幻影)を作るために、さらに多くの年月を使うことになったのであった。
 

(3)カール1世による隠匿
 基礎知識編には「水」のアクアマリンについて次のように説明されている。
 「もとはバファル帝国の所有だったが、ローザリア独立の際にカール1世の手に渡った。奪還されないように、彼自身が湖底に隠したという。」
 この記述の「もとはバファル帝国の所有だった」という記述については問題無いが、「ローザリア独立の際にカール1世の手に渡った」という記述については整理しておく必要がある。
 まずローザリア王国が独立したのはAS864年のことで、その時の初代国王になったのはハインリヒ2世である。(基礎知識編、大全集)
 カールがカール1世と呼ばれるのは国王になってから(それ以前は皇太子カール)であり、ハインリヒ2世には子どもがいなかったから(基礎知識編、大全集)、ハインリヒ2世の存命時にカールは皇太子ではない。
 よって、上記の記述を修正すると「ローザリア独立の際にカールの手に渡った」となる。
 しかしながら、国宝級の「水」のアクアマリンを国王を差し置いて傍流バーズリー家のカールが手に入れるというのは不自然ではないだろうか?
 仮に「水」のアクアマリンをカールが手に入れたとしても、国宝級の宝石なのだから国王ハインリヒ2世に献上するのではないだろうか?
 そういう意味で基礎知識編の説明には疑問が残るのである。
 

 そこで、本サイトで論じてきたロマ1論を前提として「水」のアクアマリンの隠匿について推察する。
 「アイスソード論V」で述べたように、本サイトのロマ1論ではカールが誕生したのはAS881年と設定しているので、ローザリアが独立したAS864年にはそもそも産まれてもいない。
 バファル帝国の所有だったがアクアマリンがローザリア側に渡ったのは、おそらくAS700年頃、「ライマン家が有力貴族との婚姻関係を結び勢力を拡大」(基礎知識編)していた過程で、バファル王室からライマン家に流出したのではないだろうか。
 そして、ライマン家当主が受け継ぎ、ローザリア王国建国後には国王が受け継いできた。
 従って、カールがアクアマリンを受けついたのは王位を継承したAS900年頃ということになる。(「アイスソード論V」を参照)

 次に、どうしてカール1世は「水」のアクアマリンをクリスタルレイクに隠すことにしたのか?
 基礎知識編にある通り、本当にバファル帝国から奪還されないためなのであろうか?
 湖底に隠したということはそれだけの理由があるはずであるが、バファル帝国に取り返されないためという理由だけで湖底に隠すというのは少々釈然としないものがある。
 と言うのは、城内に保管・隠匿した場合には城が攻め落とされた時に奪われてしまうということなのだろうが、城が攻め落とされた時には国が滅びそうなわけで、国が滅びることよりもアクアマリンを守ることの方が大事だと本当に考えたのか?という点にひっかかるのである。

 そのため、本稿では別の理由を指摘する。
 カール1世が「水」のアクアマリンを隠匿した背景には旧知の仲であるフラーマの存在があったと思われる。(「アイスソード論V」を参照)
 おそらく、邪神復活の兆しを感じ取っていたフラーマが、予知能力でカール1世の未来を観てカール1世に進言したのであろう。
 

 当時、ヒポクリシーが地上に現れたことにいち早く気付いたのはフラーマだった。
 そして、ローザリア付近に邪悪な気配を感じたフラーマは、予知能力由来の勘に導かれて騎士団領からローザリアへ、カール1世に進言するために出向いたのである。
 「カール様、邪悪な存在がとうとう活動を開始したようです。ローザリアにその気配を感じました。」
 カール1世のそばに来ることで、フラーマは自分がローザリアに出向いたことの意味を理解した。
 予知能力によってカール1世の未来が観えたのである。
 「カール様、邪悪な存在の目的は邪神の復活です。そのために、間違いなくデステニィストーンを狙ってきます。『水』のアクアマリンを邪悪な存在の手に渡すわけにはいきません。城内ではダメです。カール様が常に身につけていてもダメです。・・・そうですね・・・クリスタルレイクの中央、湖底に洞窟があります。その奥ならば、しばらくは隠し通すことができそうです。」
 フラーマの観た未来はカール1世の戦死する未来であった。
 それ故に、カール1世の死後も邪悪な存在の目に触れないように隠し通せる場所が必要であり、それに適した場所として予知能力で観えたのがクリスタルレイク湖底の洞窟だったのである。

 フラーマからの進言を受けたカール1世は、彼女の言う通りにした。
 秘密裏に一人でクリスタルレイクに行き、湖底の洞窟の最奥にアクアマリンを隠したのである。
 その時、不思議なことが起こった。
 湖の水量がみるみるうちに増していき、湖底の洞窟もすっかりと水没してしまったのである。
 「これが・・・アクアマリンの力か・・・、さすがフラーマだ。」
 こうしてカール1世は安心してクリスタルシティに戻ったのであった。
 #おそらくカール1世の「隠す」という意思にアクアマリンが反応して、水量を増す効果が発動したのであろう。その結果、アクアマリンは水没したままとなり、長い年月隠し通すことができたのである。そして、時が経ってロマ1の物語の頃には経年劣化でアクアマリンの効力も弱まってきたため、もとの水位まで下がってきてしまったわけである。
 

(4)エロールの決断
 ヒポクリシーが地上に現れたことに気付いた人物がフラーマの他にもう一人いた。
 それは詩人の姿で世界を放浪するエロールであった。
 エロールが動けばヒポクリシーを消滅させることなど容易であっただろうが、エロールはそれをしなかった。
 末端を叩いたところで邪神復活という大きな潮流を変えることなどできないと理解していたからである。
 その結果、ヒポクリシーは、
 ・偶然にもシェリルを追って「光」ダイヤモンドに近づいた。
 ・ブルードラゴン(L)を倒すことで一時的にではあるが「風」のオパールを手に入れた。
 ・砂漠の地下にモンスター軍団を率いて攻め入って「土」のトパーズに近づいた。
 というように、3つのデステニィストーンに迫ったのである。

 邪神の復活が近づいていることを目の当たりしてエロールは煩悶した。
 その結果、出した結論が「人は自分の運命を自分で決める権利がある。サルーインのなすがまま滅び去るか、それともサルーインに立ち向かうか、自分たちで選ぶがいい。」(ゲーム内の台詞)である。
 この考えのもとで、エロールは人間たちに邪神復活が迫っているという警鐘を鳴らすことを意図して、AS922年に「世界のデステニィストーン」を執筆・発行し、その後に「クジャラートとローザリアの戦争により『光』のダイヤモンドが失われたことが、サルーイン復活の原因になった」(徹底攻略編)という噂を流したのであった。(「運命石論U」を参照)
 #なお、「運命石論U」では「世界のデステニィストーン」の「風」のオパールの所在地が「?」である理由として、「何者かが常にオパールを所持した状態で世界中を移動していた」と述べたが、その「何者か」の正体はブルードラゴン(L)である。ブルードラゴン(L)がシルバーの洞窟で守ったままだったならば所在地には「ジャングル」とでも記載されたかもしれないが、ヒポクリシーからオパールを取り戻したブルードラゴン(L)はヒポクリシーに負わされた深い傷を癒すために療養旅行に出ていて、エロールの執筆時には特定の場所に留まっていなかったため「?」なのであろう。
 

2.ヒポクリシーによる第二次デステニィストーン獲得計画
(1)「土」のトパーズ獲得計画
(i)ヒポクリシーの幻影の消滅
 時は流れてミニオン4人は自らの幻影体を作り出し、邪神復活のための活動を開始した。
 マルディアスを4分割し、4人それぞれが一地域を担当することになったが、ヒポクリシーはそのうちの北部方面の担当を率先して志願した。
 90年前の屈辱を払拭するために、あえて因縁の北部方面にリベンジすることにしたのである。

 そして、ヒポクリシーは90年ぶりにカクラム砂漠にやって来て、砂漠の地下への入り口を目指した。
 その道中のことであった。
 たまたま日課の巡回をしていたタイニィフェザーに見つかってしまったのである。

 タイニィフェザーは四天王の中で最も縄張り意識の強い巨獣である。
 水竜とアディリスの住処にいるモンスター達は彼らの子分ではなく、定期的に駆除される害虫扱いである。(「四天王論」を参照)
 フレイムタイラントの住処にいるモンスター達のうち炎系はフレイムタイラントの子分であり、それ以外は子分ではないが、それらは必要に応じて制圧されうる存在である。
 一方で、タイニィフェザーの住処にいるモンスター達、具体的にはスカーブ山の内部にいるモンスター達は鳥系だけでなくあらゆるモンスター達が全てタイニィフェザーの支配下にある。
 このように、タイニィフェザーは自分の縄張りについては自分の思う通りになるようになっていないと我慢できない性格なのである。
 その性格故に、他の四天王が引き籠りなのに対して、タイニィフェザーは「この間、タラール族がカクラム砂漠を歩いているのを空から見たぞ。」(ゲーム内の台詞)と教えてくれるように、積極的に外に出て、自分の縄張りの巡回をして異常の早期発見に努めているのであった。
 

 そんな縄張り意識の強いタイニィフェザーの縄張り(ローザリア北部周辺)内に、邪神サルーインと同じ邪気を放つ異物がいたのである。
 迷わずタイニィフェザーはその異物に襲い掛かった。
 意図せずして風使いのミニオンは「風」を司る巨獣と戦うことになったのである。

 さて、稲妻を放つブルードラゴン(L)には圧勝したヒポクリシーであるが、タイニィフェザーについてはどうか?
 結論から言えば、タイニィフェザーはヒポクリシーの天敵であった。
 以下がタイニィフェザーのステータスであるが、
HP
9339/9412 74 96 74 74 74 74 74 0 74 4 - - -
- - - - - - - - - - - - -
1:くちばし14(石化くちばし)
術法:なし
 風属性耐性を持つのである。
 これは即ちヒポクリシーの主力になりうる風術「吹雪」のダメージ、「ブラッドフローズ」の気絶、「アイスジャベリン」のクリティカルを無効にするのである。
術名 対象 属性 (追加)効果 特性 タイプ 算出
アイスジャベリン 1 4 遠1

(即死)
(クリティカル) - 3-6 物理術
ブラッドフローズ 9 - 遠1


即死
気絶 - 3-3 術法状態異常1
吹雪 10 8 全体
- - 2-3 術全

 また、VSブルードラゴン(L)の場合は雷耐性のある風エレメンタルで余裕だったが、ひたすら物理攻撃のタイニィフェザーの前では風エレメンタルは即座に弾け飛ぶので一時凌ぎにしかならず。
 結果として、圧倒的な火力差によりヒポクリシーの勝ち目は全く無いのであった。
 

 ・・・タイニィフェザーは悠々と大空に飛び去った。
 とどめの石化くちばしで石化したヒポクリシーの幻影は、飛び去る巨鳥の巻き起こした風によって倒されると、粉々に砕け散ってカクラム砂漠の砂となったのであった。
 #石化くちばしは火、雷、石化属性を持つが、ミニオンはいずれにも耐性が無いので石化くちばしで石化しうる。
技名 対象 属性 (追加)効果 特性 タイプ 算出
石化くちばし 0 5 近1

石化
石化 - 3-4 物単(石化剣)

(ii)砂漠の地下に挑む
 何十年もかけて作りだした幻影体であったが、まさかの速攻で消滅させられてしまった。
 そのため、ヒポクリシーはやむなく本体で活動せざるを得なくなってしまったのである。
 一度ダメでも挫けない・・・ヒポクリシーはタイニィフェザーの襲撃の可能性を考えて、念のために風エレメンタルを纏って迷彩しながら砂漠の地下の入り口を目指した。
 そして、今度は無事に砂漠の地下への入り口に辿り着くと、懐かしの砂漠の地下を突き進んでいった。
 すると、90年前に攻め落とした地底の民の集落の入り口は土の精霊によって守られていたのである。
 

 さて、ゲーム内では96回の時間経過が起こるまでは砂漠の地下の入り口を土の精霊が守っている。
 どうして96回の時間経過で消えるのだろうか?
 96回の時間経過でタラール族の人々が砂漠の地下に移住することから、タラール族の人々が通るために土の精霊がいなくなった・・・というのが物語上の展開っぽいのであるが、96回の時間経過以前に土の精霊を倒して先に進んでもタラール族の人々は砂漠の地下にいることから、タラール族の人々は地底人の集落を通らずに砂漠の地下の避難地に移住したようなのである。
 #おそらくタラール族の人々は秘密の通り道(出口側)を通って移住したのであろう。
 従って、土の精霊はタラール族の人々が通るために消えたわけではないようなのである。

 では、どうして96回の時間経過で土の精霊は消えたのか?
 この土の精霊はおそらく地底人たちがヒポクリシーの接近に気付いて召喚したものなのであろう。
HP
4503/4538 66 56 56 46 51 56 61 0 56 68 - - -
- - × - - - - - - - -
装備:なし
土:56/56/175(ストーンスタチュー、ダイヤモンドウエポン、アースハンド)

 しかしながら、不動及び即死耐性を持つヒポクリシーには土の精霊の「ストーンスタチュー」は効かない。
術名 対象 属性 (追加)効果 特性 タイプ 算出
ストーンスタチュー 9 - 遠1
不動
即死
石化 - 3-3 術法状態異常1
 加えて、ヒポクリシーの使う風術は土の精霊の弱点でもある。
 即ち、ヒポクリシーにとって土の精霊は全く負ける要素の無い相手だったのである。

 それにもかかわらず、ヒポクリシーは土の精霊と戦うのを躊躇した。
 タイニィフェザーに石化されて幻影体を失った悪夢を思い出したのである。
 上述したように耐性の関係でヒポクリシーにストーンスタチューが効くことは無いが、それが分かっているのは属性・耐性データを客観的に見ることができる私達だからであって、当のヒポクリシー本人は自分にストーンスタチューの耐性が備わっていることを知らなかったのである。
 故に、石化くちばしで石化したことを思い出し、「ストーンスタチューで自分は石化させられるかもしれない・・・そうなったら、本体で活動している自分はもう終わり・・・それは避けなければならない。」と考えた結果、「退却」という苦渋の決断をしたのであった。

 こうして砂漠の地下からヒポクリシーは姿を消した。
 地底の民たちは邪悪な気配が消えてしばらくは様子をうかがっていたが、もう大丈夫そうだったので(96回の時間経過で)土の精霊の召喚を解除したのであろう。
 #ゲーム内においても召喚獣やエレメンタル類の代役をずっと出しっぱなしにしておくことはできない。

(2)「水」のアクアマリン獲得計画
 「土」のトパーズの獲得計画を一旦中止したヒポクリシーは標的を「水」のアクアマリンに切り替えて、クリスタルレイクに来ていた。
 クリスタルレイク・・・水深は徒歩でなんとか歩ける程度の深さのようであるが、広大な湖の中から1つの宝石を地道に探すのはさすがに骨が折れる。
 そう判断してヒポクリシーはクリスタルレイクを後にした。
 この時、既にアクアマリンの効力は衰えて水位は下がり、湖底の洞窟の入り口も姿を現していたのであるが、幸運にもそれがヒポクリシーに見つかることはなかったのである。

(i)ヒポクリシーに目をつけられた人物
 ヒポクリシーは「水」のアクアマリン入手のために役立ちそうな人物をミニオンセンサーで探した。
 その結果、「権力があり、かつ野望を持っている人物」として感知されたのはローザリア王国皇太子ナイトハルトであった。

 ナイトハルトとはどのような人物であるのか?
 文献には次のように記述されている。
 「ローザリア王国の皇太子。病気がちな父・カール三世の代わりに国の実権を握る。非常に有能な軍の指揮官で、しかも戦士としても勇敢に戦う。人々はその黒い鎧から彼をブラックプリンスと呼んでいる。心中では、マルディアスの全土統一という野望を持っている。」(基礎知識編)
 「ローザリア王国皇太子。病床の国王に代わり政務を行っている。次々と騎士団を設立して軍拡を進め、マルディアス全土を制覇しようとするファシスト。彼自身百選錬磨の戦士でもある。その容貌から『黒い悪魔』と呼ばれる。」(大事典)
 「ローザリア皇太子で、いつも黒い鎧を身に付けているためブラックプリンスの異名を持ち、タラール族からはカヤキス(黒い悪魔)と呼ばれる。病床にある国王より全権を任される。薔薇騎士団、ユニコーン騎士団などを次々と組織し、積極的に領土拡大政策を実施する野心家である。ゆくゆくはマルディアス全土統一を目指しているらしい。」(時織人)
 上記のように、ナイトハルトはロマ1における「権力があり、かつ野望を持っている人物」の象徴的な人物なのである。
 まずは、ヒポクリシーが接触する以前にナイトハルトがどのようなことをしていたのかについて推察をする。
 

(a)ナイトハルトの野望 −領土拡張−
 ナイトハルトはブラックプリンスの異名を持つ。
 これについては黒い鎧(ブラックシリーズ)を装備している皇太子からと納得できる。
 一方で、タラール族から呼ばれているカヤキス(黒い悪魔)という異名はどうだろうか。
 つまり、「黒い」は分かるが「悪魔」と呼ばれるのはどうしてなのだろうか?
 その呼称は、アイシャがナイトハルトに救出された際に「アメ ホオ・・・(あなたは・・・)カヤキス!(黒い悪魔!)」(ゲーム内の台詞)と言うように、タラール族の娘にまで周知されているほどである。
 

 「悪魔」とまで言われるということは、ナイトハルトがタラール族に対してよっぽどなことをした・・・例えば何かしらの非人道的なことでも行ったということなのだろうか?
 推察であるが、タラール族の間でナイトハルトが「悪魔」と呼ばれるようになった発端は、おそらくナイトハルトが行った領土拡張政策にあると思われる。
 崩壊前のイスマスには下図のように投石器のような兵器と、その弾が配備されている。
 
 イスマスはバファル帝国との国境の近くであるから、この兵器はバファルからの襲撃に備えてのものであろう。

 そんな防御の要になりそうな投石器であるが、実はノースポイントにもこの投石器の弾のようなものがあるのである。
 ノースポイントやウロといったローザリア北部の町は「現在、この土地を支配する者は特に存在しない。」(大事典)とあるように、ローザリアに属しているわけではない。
 しかしながら、「最近、南のローザリアが支配を広げようと、ニューロードの町や遊牧民たちに接触を繰り返している。」(基礎知識編)とあるように、ナイトハルトが積極的に保護領(基礎知識編)として取り込もうとしているようである。
 実際、ウロの男性は「ローザリアの軍隊がよく来るようになった・・・。そのうち、この町もローザリアのものになってしまうのか・・・。」(ゲーム内の台詞)と不安を吐露している。
 この投石器の弾がノースポイントにはあって、ウロには無いのは、おそらくノースポイントがアロン島側との境になっているからであろう。
 つまり、アロン島側からのバファル帝国の襲撃を想定して、ノースポイントにも投石器を配備しようとしているのである。
 おそらく投石器を用いた演習をノースポイントで行うことでローザリアの武力を示し、「有事の際はこの町を護るから保護領になれ!」と迫っているのであろう。
 

 そして、この投石器の弾は何とタラール村にも多数置いてあるのである。
 ガレサステップにあるタラール村はクジャラートとの境にある場所だから、ローザリアとしてはクジャラートには渡してはいけない軍事的な要所であった。
 それ故に、ナイトハルトはタラール村も保護領にするために、タラール村でもノースポイントと同様に投石器を用いた軍事演習を行ったのである。
 その結果、事件が起きてしまった。
 誤って投石器の弾がガレサステップに立ち並ぶストーンサークルを破壊してしまったのである。
 ストーンサークルはタラール族が信仰するエロールとニーサを祀った巨石群であり、それを破壊するということは神に仇なす行為に他ならない。
 そう、神に仇なす者・・・悪魔なのである。
 このように、誤ってとはいえタラール族の信心を踏みにじる神に仇なす行為をしてしまったが故に、ナイトハルトはタラール族から「悪魔」呼ばわりされるようになったのであろう。
 

(b)ナイトハルトの野望 −「火の揺らめき」の入手−
 クリスタルシティの老人は「スカーブ山には巨大な鳥が棲んでいるのだ。その羽を持って帰ってきた勇者が今までに二人いる。先々代の国王カール一世と現在の皇太子ナイトハルト殿下だ!」(ゲーム内の台詞)とナイトハルトの武勇を語る。
 ナイトハルトにとってカール1世はおそらく誇らしい存在であり、(自分の誕生する前に既に亡くなっているが)憧れの存在であり、そして超えるべき目標となるような存在であった。
 それ故に、カール1世が成人の儀式でタイニィフェザーの羽を持ち帰ったのならば、自分も成人の儀式でタイニィフェザーの羽を持ち帰ることにしたのである。
 そして、カール1世が成すことのできなかったマルディアス全土統一を達成することによってカール1世を超えられると考えた。
 ナイトハルトの野望の根幹には彼の曽祖父である英雄カール1世の存在があるのである。

 ところで、「アイスソード論V」3.(2)では、カール1世はタイニィフェザーの羽を取りに行った際に実はタイニィフェザーと交渉していたことについて言及した。
 つまり、タイニィフェザーの巡回中でなければ、タイニィフェザーの羽を取りに行った場合には大概はタイニィフェザーに遭遇してしまうのである。
 では、ナイトハルトがタイニィフェザーの羽を取りに行ったときはどうだったのか?
 おそらくナイトハルトもタイニィフェザーに遭遇し、依頼を受けることになったのであろう。
 そして、その依頼は「トマエ火山の中にフレイムタイラントが棲んでいる。そいつから火神防御輪という頭輪を貰ってきてくれ。」(ゲーム内)であった。
 #「もう10年ほど前だが成人の儀式として我が曽祖父カール一世に倣い、スカーブ山に棲む巨大な鳥タイニィフェザーの羽を取りに行ったのだ。」(ゲーム内の台詞)とナイトハルトが言うように、ナイトハルトが羽を取りに行ったのは10年前のこと。10年前ならば邪神の復活の兆しにタイニィフェザーが気付いていてもおかしくない。つまり、タイニィフェザーは再度の邪神との戦いに備えるために火神防御輪を欲したのである。(「四天王論」を参照)
 

 スカーブ山から戻ったナイトハルトは父カール3世にタイニィフェザーとの一件について話した。
 すると、カール3世は宝物庫から3つの骨董品を持ち出して来て、それを見せながらナイトハルトに語った。
 「タイニィフェザーとの交渉か・・・我が祖父カール1世がまだ皇太子だった頃、タイニィフェザー、アディリス、水竜と交渉してこれらの召喚具を授かったという。フレイムタイラントとも交渉を進めていたが、それが結実することはなかったということだ。」(「アイスソード論V」を参照)
 その逸話を聞いたナイトハルトは決意を固めた。
 自身の目標であるカール1世が手に入れることのできなかったフレイムタイラントの召喚具を入手し、カールの1世の悲願を果たすことを!

 それから数年後(ロマ1の物語の舞台から数年前)、カール3世が病に伏し、ナイトハルトが政務を任せられるようになると、ナイトハルトは早速行動を開始した。
 ローザリア王国聖騎士のガラハドに「フレイムタイラントの召喚具を入手する」という密命を与えたのである。

 ローザリア王国聖戦士ガラハド・・・「クリスタルシティ出身の剣士で、元ローザリア王国正規軍の士官。そのため聖戦士の称号を有する。数年前に退官し流浪の旅に出たのは、彼の剣コレクションを完成させるためである。」(時織人)と説明される一方で、ローザリア王国聖戦士とは「ローザリアの貴族階級が属する軍団名」(大全集)で、「戦時に旗本隊として国王を守る」(大全集)という国王直属の軍団であり、「平時は国王の目となり耳となって各国の動静監視に当たる。中には密命を帯びて探索行に赴くものもいる。その代表格がガラハドである。」(大全集)という説明もあるのである。
 ゲーム内では分からないが、実はガラハドは貴族であり、ローザリア国王直属の軍団所属なのである。
 そんな軍団に所属して、まだナイトハルトよりも若いガラハドが(ロマ1の物語の数年前ならガラハドは10代後半から20代前半である。「年齢推定論」を参照)、「剣コレクションを集める」や「流浪の旅に出たい」という理由で退官できるとは到底思えないのである。
 おそらく、ナイトハルトから密命を受けたために表向きは「ローザリア王国軍を退官し、流浪の旅に出た」ということにして、実際には「フレイムタイラントの召喚具を入手する」という密命を遂行するために行動していたのであろう。
 

 また、仮にガラハドが退官を許されて放浪の旅に出ていたとすると、フレイムタイラントとの経緯を説明して「そう言われてもなー、この剣を手に入れるのには相当苦労もしたし・・・。では、俺も一緒に行くというのはどうだ?そのフレイムタイラントに会って考えよう。」(ゲーム内の台詞)とガラハドが同行することになった場合に、ガラハドには何もメリットが無いのもひっかかるところではある。
 つまり、この場合はアイスソードを購入する費用は私費になるわけであるが、その費用の30,000金とはマルディアスで一般に流通している武具の最高金額9,999金の3倍相当であり、いくらガラハドが善意に満ち溢れた人物だとしても、それを何の見返りもなく差し出させられるだけというのに納得するとは到底思えないのである。
 #気持ちとしては、9,999金のガーラルアーマーが10万円で買えるとは思わないので仮に100万円だとすると、アイスソードは300万円である。「剣コレクションの完成のため」の場合のガラハドは無職であるから、彼が貴族階級の人物とはいえ、さすがに見ず知らずの冒険者に300万円をポンとくれるというのは現実的ではないように思う。
 このような理由からも、ガラハドは密命を帯びていたと考えたほうが筋が通るのではないだろうか。
 

■ガラハドの探索行 −前日譚−
 密命を受けたガラハドは早速リガウ島に渡り、フレイムタイラントに謁見して、主君ナイトハルトの願いを伝えた。
 即ち、「タイニィフェザーからの依頼の火神防御輪が欲しいこと」と「フレイムタイラントを召喚する道具が欲しいこと」の二つである。
 その結果、ゲーム内においてはタイニィフェザーの依頼を受けてからフレイムタイラントの依頼を達成すれば火神防御輪に加えて「火の揺らめき」を手に入れることができるのであるが、ガラハドは最初から二つのアイテムを希望してしまったためにフレイムタイラントからの依頼も少し変わったものになってしまったのである。
 それは「俺は凍気を発する武器や魔法が苦手だ。それでそういう武器やアイテムを自分で集めて自分の安全を確保しているのだ。そこでだ、ここに凍気を発するアイテムリストがある。二つを望むならば、このリストにあるアイテムを二つ持ってきてくれ!」というものであった。
 こうしてガラハドの凍気を発するアイテム集めの旅が始まったのである。
 

 「アロン島でグレイと、南エスタミルでミリアムと知り合った後、しばらく行動を共にする。」(時織人)と解説されているので世界中を回って探していたようであり、密命故に表面的には「数年前に退官し流浪の旅に出たのは、彼の剣コレクションを完成させるためである。当面の目的はアイスソード入手。」(時織人)というようにグレイやミリアムには話していたのでしょう。
 そして、グレイらと行動をともにしながら密やかに凍気を発するアイテムの情報を仕入れていたわけである。
 

■ガラハドの探索行 −仲間たちとの別れ−
 グレイらとリガウ島の財宝を手に入れたガラハドは「懐も温かくなったから一度解散したらどうかな。俺はクリスタルシティに帰って新しい武器を練習したいんだ。」(ゲーム内の台詞)と提案する。
 そして、パーティー解散後には宣言通りクリスタルシティに行って「ハルベルト」を購入したようである。
 #グレイの「仲間たちとの別れ」イベントでガラハドと別れると、ガラハドの武器欄7にハルベルト(武器レベル0)が現れる。
 

 クリスタルシティにはハルベルトの他にも両手剣バスタードソードより強力なヴェルニーソードも売られているのであるが、「剣術、格闘に優れ、特にバスタードソードを使わせたら彼の右に出るものはいない。」(基礎知識編)と評されるガラハドが、どうしてヴェルニーソードではなくハルベルトを購入したのだろうか?
 おそらく、グレイらとの冒険の途中でお目当ての凍気を発するアイテムの在処とそれを守っているモンスターの弱点が風属性らしいという情報を手に入れたため、ハルベルトを「練習」して風属性の狂乱撃を習得しようとしたのではないだろうか。
 #フレイムタイラントら炎系のモンスターは風属性弱点ではなく冷属性弱点だから炎系のモンスター対策ではないだろう。そもそも、交渉して「火の揺らめき」を入手するという密命なので、ガラハドはフレイムタイラントらと戦うつもりはない。
技名 対象 属性 (追加)効果 特性 タイプ 算出
ハルベルト 0 8 中1 - - 腕力成長促進 0-1 物単
足払い 1 - 近横 不動 動けない! - 1-1 足払い
二段突き 4 16 中1 - - - 0-1 物単
必殺衝 6 16 中1 即死 クリティカル - 1-2 物単(三星衝)
狂乱撃 10 24 中縦 パニック 複数攻撃効果 2-2 複数(狂乱撃)

■ガラハドの探索行 −アイスソード入手−
 戦闘回数476回の時間経過で喜々としたガラハドがアルツールに姿を現す。
 「念願のアイスソードを手に入れたぞ!」(ゲーム内の台詞)と初対面の人にまで言ってしまうくらい嬉しかったようである。
 さて、ゲーム内だけでは「剣を手に入れて喜んでいるだけの人」として捉えられてしまうであろうガラハドであるが、ナイトハルトからの密命を帯びていたという視点で彼の台詞を振り返ってみましょう。

 まず挨拶代わりの「念願のアイスソードを手に入れたぞ!」であるが、数年前にナイトハルトから密命を受けて、フレイムタイラントの欲しいものリスト記載されていたアイスソード・・・世界中回って探したが手がかりが全く掴めずに諦めかけていたが、まさかの地元のアルツールで販売されていて(販売の経緯については「アイスソード論V」を参照)、喜びのあまりに出てきた言葉である。
 

 次、フレイムタイラントの依頼を受けずに譲ってもらおうとした時の「だめだ!!いくらつまれても譲れん。」という台詞は、「だめだ!!(ナイトハルト様の密命達成のために必要なアイテムだから)いくらつまれても譲れん。」という当然の反応であろう。
 

 そして、フレイムタイラントの依頼を受けてから譲ってもらおうとした時の「そう言われてもなー、この剣を手に入れるのには相当苦労もしたし・・・。では、俺も一緒に行くというのはどうだ?そのフレイムタイラントに会って考えよう。」という台詞は、彼が密命を帯びて行動しているという側面が色濃く出たものとなる。
 と言うのは、
 ・確かに売っている場所に出会えるまでに時間がかかったという点での苦労はあっただろうが、ナイトハルトの密命故に公費での購入なので金銭面では全く苦労していないにもかかわらず「相当苦労した」と言う。
 ・フレイムタイラントの依頼を受けてアイスソードを探していたわけだから、既にフレイムタイラントに会っているにもかかわらず、「そのフレイムタイラントに会って考えよう。」と、さもフレイムタイラントのことを知らないようなそぶりを見せる。
 というようにフェイクを交えているのである。
 

 おそらく、ガラハドはフレイムタイラントの欲しいものリストに記載されているものをアイスソード以外にも既に複数入手に成功していて、(自分の裁量で使える公費で購入した)アイスソードを冒険者に1本譲ったとしても密命を達成することはできるし、自分も丁度フレイムタイラントの所に届けに行くところだったので、密命をごまかすために敢えてフェイクを入れながら同行の提案をしたのでしょう。
 #なお、同行したガラハドは冒険者とフレイムタイラントの交渉を見て、「え!?火神防御輪を渡しちゃうの!?」と焦り、さらに「え!?アイスソードを届けただけで火神防御輪と召喚具の両方を貰えちゃうの!?」と絶句したことでしょう。
 #前者については、ガラハドの任務には火神防御輪の入手もあったので、冒険者にあげてしまっては自分の分が無くなってしまうと思い焦った。しかし、フレイムタイラントは火神防御輪を2つ持っているのでセーフだった(「四天王論」を参照)。後者については、凍気を発するアイテムを複数入手するために数年かかったわけなので、若干騙された感はあったことでしょう。

■ガラハドの探索行 −エロールの贈り物−
 フレイムタイラントの依頼を受けてから譲ってもらおうとした時に、これまでに一度もボランティア活動をしたことが無く(慈善値0)、悪いことを一度でもしたことがあった(悪行値1以上)場合には、ガラハドは「事情は分かった。しかし、貴様のような悪人にこの剣を渡すわけにはいかない!諦めろ。」と突っぱねてくる。
 「悪人との交渉はしない!」という彼の性格がよく出ている台詞なのであるが、よくよく考えてみると不思議である。
 どうして彼は冒険者が悪人であると分かったのだろうか?
 

 ロマ1のゲーム内において、冒険者の悪行値を読み取ることができるのは、エロール、(通常は会えないミルザの化身と思われる)ブルエーレのパブの男(「ミニオン論W」を参照)、そしてガラハドの3人だけであるから、実はガラハドも神の化身なのか?とも思ったが、デスに生き返らせてもらえることを考えるとやはり神ではなく人間なのでしょう。

 では、どうしてガラハドは冒険者の悪行値を読み取ることができるのだろうか?
 「ミニオン論U」で述べたが、ガラハドはその不遇な運命を哀れに思ったエロールから「ガラハドが死んだら生き返らせたくなる」ように人々の意識に刷り込むという「エロールの贈り物」を貰った神に選ばれし人物である。
 そして、実はもう一つ「エロールの贈り物」を貰っていたのではないだろうか。
 それが、相手の悪行値を(無意識に)読み取る能力である。
 つまり、ガラハドが自ら不遇な運命から逃れることができるように、自分に危害を加える可能性のある人間を無意識に察知できる能力を密やかにエロールから与えられていたのである。
 しかしながら、実際にはガラハドは冒険者が悪人でありと判定できても「殺してでも奪い取る」の運命から逃れられなかったし、そもそも悪人ではない判定の冒険者からも「殺してでも奪い取る」されてしまうので、「相手の悪行値を読み取る」程度の能力では彼の不遇な運命を覆すことはできなかったようである。
 

■ガラハドの探索行 −強盗殺人事件−
 ロマ1を象徴するイベントであるアイスソード強盗殺人事件であるが、よくよく考えてみるとこの事件も不思議である。
 どうしてガラハドは「な、なにをする、貴様らー!」(ゲーム内の台詞)と無抵抗で殺されるのであろうか?
 「ガラハドは聖戦士だから正当防衛であっても人に手を出すようなことはできない」と以前は思っていたのであるが、先述したようにガラハドが「聖戦士」という肩書きなのはローザリア王国の貴族階級の軍隊組織に付けられた名称が「ローザリア王国聖戦士」だからにすぎず、決して聖なる力を持っているとか聖人のような心を持っているとかそういうことではないので、聖戦士だから人に手を出さないというわけではないようなのである。
 それに、ローザリア王国聖戦士は国王を守る重要な役割があるから、ガラハドが人に手を出せないという信条を持っていたとは考えにくいだろう。
 

 では、ガラハドは冒険者の襲撃に対応できないほど弱かったから為すすべもなく殺されてしまったのであろうか?
 いや、この可能性も低いだろう。
 なぜなら「大胆な性格だが繊細な面もあり、冷静な判断力を持ち合わせている。」(基礎知識編)、「冷静な判断力をもち、どんな逆境にも眉一つ動かさず対応する。剣術のウでは天下一品。戦闘のプロフェッショナルである。」(大事典)と文献に説明されていることからすると、ガラハドならば冒険者の急な襲撃に対して冷静に対処・鎮圧できたはずだからである。

 それにもかかわらず、ガラハドが無抵抗で殺されてしまったのは何故だろうか?
 ゲーム内で無抵抗に殺されるガラハドを見ると、「な、なにをする、貴様らー!」という台詞は彼の悲痛な断末魔のように思うかもしれない。
 しかしながら、実際には「な、なにをする、貴様らー!(悪人め!返り討ちにしてやるわ!!)」というように語気を強めて、臨戦態勢を取ろうとしていたのではないだろうか。
 ところがその時、不思議なことが起こってしまった。
 「悪人め!返り討ちにしてやるわ!!」という言葉が喉から出てくることはなく、身体も硬直して全く動かなくなってしまったのである。
 ガラハドは何が起こったのか分からないまま、通り魔の凶刃が自分を切り裂くのを見続けるしかなかった。
 

 ガラハドに不思議なことが起こった一方で、実はガラハドを襲った冒険者の方にも不思議なことは起こっていた。
 「アイスソードが欲しい」と思った際に、なぜか「殺してでも奪い取る」という選択肢が頭に浮かんでしまったのである。
 どうしても欲しかったのだとしても、「相手を殺さないで奪う」という選択肢を飛び越えて「殺してでも奪い取る」という選択肢になってしまったというのは、あまりに異常な思考であった。

 では、ガラハドと冒険者に一体何が起きていたのだろうか?
 75年前にアルツールで非業の死を遂げたカール1世の側近の呪いのようなものかもしれないし(「アイスソード論V」を参照)、マルディアスという世界に組み込まれたプログラム・・・具体的には、「『アルツール』で『ローザリア王家に仕える者』が『アイスソード』を持つと『死ぬ』可能性が高くなる」というバグのようなものなのかもしれない。
 #つまり、『アルツール』、『ローザリア王家に仕える者』、『アイスソード』の3つが独立変数で、この3つが揃った時の従属変数が『死ぬ』となってしまう。
 #例えば、回復術法の回復量が特定のステータス付近で低下してしまうのも、マルディアスという世界のバグの一つである。
 真相については断定できないが、アイスソード強盗殺人事件はとにかく不思議な人知を超えた力が働いたことにより起こったことは確かであろう。
 

 長くなったが、上述のようにガラハドはナイトハルトの野望の一つである「フレイムタイラントの召喚具を入手する」ことを達成するために、ナイトハルトから密命を受けて動いていたのである。

(ii)ヒポクリシーの最期
 ローザリア国王カール3世から王国の政務の全権を任されたナイトハルトは、自身では領土拡張政策を押し進めつつ、配下のガラハドには「フレイムタイラントの召喚具を入手する」密命を与えていた。
 しかしながら、いずれも決して順調に進んでいたわけではなく、芳しい成果が得られないまま数年の時間が過ぎていた。
 「偽善」のヒポクリシーがナイトハルトに接触したのは丁度そんな時だったのである。

 ヒポクリシーはナイトハルトの前に姿を現し、語りかけた。
 「皇太子殿下・・・あなたの野望の達成に協力してさしあげましょう。」
 「ノースポイント、ウロ、・・・タラール族の村もですか・・・。王国に属すことに反対している連中を消し去ればいいのです。」
 「なーに、汚れ仕事は私にお任せください。」

 静かにヒポクリシーの話を聞いていたナイトハルトが尋ねた。
 「見返りは何を望む?」
 それに対し、ヒポクリシーは答えた。
 「さすが皇太子殿下、話が早い。・・・クリスタルレイクに宝石が一つ隠されているといいます。殿下のお力でそれを見つけていただきたい。」
 それを聞くと、ナイトハルトは微笑んだ。
 「分かった。確かにお前の力を借りたら、ローザリア北部の制覇が早まるかもしれないな・・・だが、断る!!」
 そう言うとナイトハルトはヒポクリシーを愛剣のガーラルソードで切り裂いた。
 ヒポクリシーはその一撃をかわすと「・・・愚かな・・・」と呟いて夜の闇の中に姿を消したのであった。
 戦士としても一流(大全集)のナイトハルトはヒポクリシーの人ならざる気配を感じ取っていたのである。
 ナイトハルトのこの行動は、彼の曽祖父カール1世が神々やモンスターの力に頼らなかったように(「アイスソード論V」を参照)、彼も人間の力、自分自身の力で自身の野望を達成しようと考えていたからのものであった。
 

 ヒポクリシーを退けると、ナイトハルトは父カール3世にヒポクリシーが言っていた「クリスタルレイクに隠されている宝石」について尋ねた。
 その質問に対して、カール3世は答えた。
 「クリスタルレイクの宝石か・・・我が祖父カール1世が国王になった時に、王位と一緒にデステニィストーンの一つ『アクアマリン』も継承したという。世界に二つとない宝石だ。そのアクアマリンの略奪を警戒したカール1世がクリスタルレイクの洞窟に隠したということだ。」
 その逸話を聞いたナイトハルトは人ならざる者がお伽話で聞いたデステニィストーンを捜しているということに言いしれぬ不安感を抱いた。
 「放っておくわけにはいかないな・・・。」

 早速ナイトハルトは単身でクリスタルレイクに訪れた。
 もちろんアクアマリンを確保するためである。
 しかし、戦士としても一流(大全集)のナイトハルトは何か嫌な視線を感じとっていた。
 「・・・監視されている?・・・」
 そこで、ナイトハルトは父カール1世から聞いた洞窟の場所には行かず、別の場所でゴソゴソとやって小石を拾うと、そのままクリスタルレイクを後にした。
 そして、自分が監視されているのか様子を探るために、その足でイスマスに向かったのである。
 ・・・・・・
 アルベルト「洞窟のモンスターを退治してきました。」
 ルドルフ 「うむ、よくやった!」
 兵士   「ナイトハルト殿下がお見えになりました!」
 ルドルフ 「なに!皇太子殿下が?」
 このようにナイトハルトのクリスタルレイクからの帰路がアルベルトの初期イベントに繋がってくるのである。
 

 その夜、ナイトハルトの前に再びヒポクリシーが姿を現した。
 「皇太子殿下、クリスタルレイクに行きましたね・・・アクアマリンをこちらに渡していただこうか。」
 ヒポクリシーの言葉を聞いてナイトハルトは微笑んだ。
 「やはり見ていたか。・・・アクアマリン・・そんなもの、ここには無いわ!!」
 そう言うとナイトハルトは懐から取り出した小石をヒポクリシーに投げつけて、愛剣のガーラルソードを身構えた。
 「ぬぅ、これは石ころ・・・謀ったな。・・・ならばイスマスか!!アクアマリンは必ずいたたくぞ!!」
 そう言ってヒポクリシーは再び夜の闇の中に姿を消した。
 ナイトハルトがクリスタルレイクでアクアマリンを回収し、略奪を警戒してイスマスに置いてきたのだと誤解したヒポクリシーは、モンスター軍を率いてそのままイスマスを目指した。
 即ち、アルベルト初期イベントのイスマス襲撃とは、ナイトハルトがヒポクリシーの監視を警戒して行動した結果、ヒポクリシーがイスマスにアクアマリンがあると誤解したために引き起こされたものだったのである。

 ディアナとアルベルトを逃がしたルドルフ率いるイスマス軍はヒポクリシー率いるモンスター軍と死闘を繰り広げた。
 モンスターの大軍に立ち向かうルドルフとマリアの姿は、ヒポクリシーに90年前に砂漠の地下で見たクラウスとアイシャの姿を思い出させていた。
 「あの時は人間如きに後れを取ったが・・・今度はそうはいかんぞ!!」
 ・・・・・・
 モンスターの大軍と風術の達人ヒポクリシーの猛攻の前にルドルフとマリアは深手を負わされていた。
 そんな二人の前にヒポクリシーが近づいてきた。
 「アクアマリンを渡せ、そうすれば苦しまないように(ブラッドフローズで)殺してやる!」
 ヒポクリシーの言葉の意味が分からないルドルフとマリアであったが、最後の力を振り絞って剣を構えた。
 その後、争乱のイスマス城に一際大きな絶叫が響いた。
 「おおー、信じられぬー!!!」
 こうして本体で活動していたヒポクリシーは冒険者たちに会う前に消滅してしまったのであった。

 ヒポクリシーを倒してもモンスター軍団の怒涛の進行は止まらなかった。
 「イスマス城が襲撃された際に斬った魔物の数は200とも300とも言われている。マリアをかばいながら戦って最期まで城を守り、力尽きて遂に斃れた。」(時織人,ルドルフについての説明)
 その結末は「ルドルフ公夫妻は多くの兵士たちとともに広間に倒れておられた。激しい戦いだったのであろう。彼らの10倍以上のモンスターの屍が転がっていた。だが、多勢に無勢、一人また一人と倒れて、ついには公自身も力尽きたのだろう。」(ゲーム内の台詞)とナイトハルトから語られたのであった。
 

■ドラゴン系モンスター
 イスマス襲撃時のドラゴン系シンボル×3は見た目はドラゴン系であるが、実は中身はトカゲ系である。
 正体を隠して上辺を取り繕う・・・まさに「偽善」のヒポクリシーらしい仕込みと言えるでしょう。
 

■未使用のバルバトス
 ヘイトがミノタウロス、ストライフがサイクロプス、ワイルがフローズンボディというようにゲーム内で登場した3人のミニオン達が巨人系モンスターを従えていたことから察すると、おそらくヒポクリシーは未使用モンスターのバルバトスを従えていて、イスマス襲撃には動員されていたことでしょう。
HP
647/653 20 28 20 20 20 20 20 0 20 4 × - -
- - - - - - - - - - - - - - - -
1:通常攻撃8
術法:なし

■イスマス東の洞窟のシリリーファズ
 大事典にはシリリーファズについて「イスマス城の東にある洞窟にはサルーインの紋章があり、それを守るための軍団長に任命されている。」と説明されている。
 サルーインの紋章は地上と封印の地(ラストダンジョン)を繋ぐ要所であるにもかかわらず、シリリーファズがアルベルトに討伐されても後任が配属されることはなかった。
 その原因は言わずもがな、任命責任のある北部方面担当のヒポクリシーがイスマス襲撃の際に消滅してしまったためである。
 

3.ナイトハルト、その後
(i)ナイトハルトによる「水」のアクアマリン獲得計画
 ヒポクリシーの監視を警戒したナイトハルトの行動は結果としてイスマスの崩壊につながったものの、ヒポクリシーのアクアマリン獲得の阻止にもつながった。
 しかしながら、ナイトハルトはヒポクリシーが消滅した場面を目撃したわけではなく、どこかでまだ監視されているかもしれないという疑念は持ち続けていたので、再度自分でクリスタルレイクにアクアマリンを回収しに行くことができないでいた。
 そんな時に、ナイトハルトのもとに姿を現したのがアルベルトであった。
 そこで、ナイトハルトはアルベルトに期待して依頼したのである。
 「私の祖先がクリスタルレイクの洞窟にアクアマリンを隠したのだ。世界に二つと無い宝石だ。それを取ってきてくれ。」(ゲーム内の台詞)
 #主人公がアルベルトではない場合も、アルベルトがいないとナイトハルトには謁見できないから、ナイトハルトからの依頼はアルベルトがいるからこそのものである。

 そして、無事に依頼をこなせば問題無いが、失敗すれば「アクアマリンのことはもういい。気にしないでくれ。」(ゲーム内の台詞)という言葉をいただく。
 このナイトハルトの台詞は、アルベルトが「既にありませんでした。」と虚偽報告をしたか、「すみません。無くしちゃいました。テヘペロ!」と素直に報告したかでニュアンスが異なってくるであろうが、いずれにせよ「これ以上はアルベルトに任せられる範疇では無い」という判断が伺える。
 おそらく、アルベルトが去った後には、「火の揺らめき」入手の密命をガラハドに与えたように、信頼のおける配下(ローザリア王国聖騎士団の団員)にアクアマリン入手の密命を与えたことでしょう。
 

(ii)ナイトハルトについての噂
 ゲーム内では語られることは無いが、文献には以下のようなナイトハルトの悪い噂も記述されている。
 「ディアナと婚約したのもアイシャを助けたのも全て計算ずくで、陰ではサルーインと密かに手を組んでいるという噂もある。」(大事典)
 「ディアナへの求婚も全て計算ずくで、サルーインと裏で手を組み、イスマス城をあえて襲わせたという噂もある。」(時織人)
 「偽善」のヒポクリシーに目をつけられたナイトハルトだけに裏では良からぬ企みをしていたのであろうか?
 以下ではこれらの悪い噂についての本稿での見解を述べる。

■ディアナとの婚約は計算ずく?
 「計算ずく」とは「物事の利害関係をあれこれ考えて、自分に有利な言動をすること」である。
 そういう意味ならばディアナとの婚約は「計算ずく」と言えるだろう。
 ただし、大事典や時織人の記載だと「サルーインと手を組んだ」という話と並列で書かれているために「計算ずく」が悪いことのように捉えられるが、そういう悪い意味での計算ずくではなく、良い意味での計算ずくである。

 まず、ディアナは貴族(イスマス城主ルドルフ)の娘なので相手としては順当であろう。
 加えて、ディアナは「一見おしとやかだが実はかなり活発だ。乗馬や剣術などは男顔負けの腕を持っている。また正義感も強い。」(大事典)という魅力的な人物であり、ナイトハルトの組織するローザリア王国薔薇騎士団(大事典、時織人)に所属していた。
 薔薇騎士として活発に活動するディアナの姿を見てナイトハルトが彼女に好意を持っても全く不思議ではないだろう。
 一方のディアナもナイトハルトの求婚に対して「私、まだ信じられない・・・」と嬉しそうである。
 

 次、アルベルト初期イベントのタイミングで求婚したのはなぜか?
 この突然の求婚の背景にはヒポクリシーの出現があったであろう。
 つまり、ナイトハルトは自分が政務を任せられて、自身の野望の成就を目指して政策を進めてきたが、芳しい成果が得られずに焦りを感じ始めていたタイミングで邪悪な存在の接触を許したことを「自分が不甲斐なかったから、その弱みにつけこもうと邪悪な存在が寄ってきてしまった」と捉えたのである。
 そして、その己の弱さを払拭するために自身の野望の早急の進展を求めたのであろう。

 最後は、ディアナに求婚することがどうしてナイトハルトの野望につながるのか?
 若き皇太子の婚姻によってローザリア王国は祝賀ムードとなって経済が回り、それが富国強兵、軍拡促進、国力増強につながる。
 そうして手に入れた強大な軍事力を背後に、若きリーダーを中心としたローザリア王国の輝ける未来を演出することで、ローザリア北部の人々にローザリア王国に加わりたいと思う気持ちを芽生えさせることができると考えたわけである。

 このようにナイトハルトの野望の成就のためという広義には「政略結婚」的な側面があるので「計算ずく」とも言えるが、当人同士の気持ちを無視したものでは無いので決して悪い意味での「計算ずく」とは言えないであろう。

■アイシャの救出は計算ずく?
 「アイシャを助けたのも全て計算ずく」という言い方をされると全てが仕組まれていたように聞こえるが、アイシャがモンスターに敗北したのは事故であり、ナイトハルトがそこに居合わせたのも偶然にすぎないだろう。
 おそらく上述したヒポクリシーの出現による己の弱さの払拭のために丁度タラール族の村へ向かっていた時にたまたま事故現場に遭遇したのである。
 そして、「ナイトハルトは自分がタラール賊の人々に良い印象を持たれていないことを知っていたから、タラール族の娘であるアイシャを救出することでポイント稼ぎをしたのではないか?」というようにナイトハルトが「計算ずく」で救出したと考えるかもしれないが、決してそうではなく純粋に「モンスターに襲われている娘がいたから助けた」だけではないだろうか。
 と言うのは、アイシャの救出に入ったナイトハルトは「火、水、土、風、冷、雷、闇」の7つの攻撃属性と「不動、毒、幻、即死」の4つの状態異常属性に対する耐性を持っているという常軌を逸した状態になっているのであるが、これはナイトハルトが純粋な気持ちでアイシャの救出に入ったからこそ、その雄姿に心を動かされたエロールとニーサが恩寵として耐性効果を付与したのではないだろうか。
 #「アイシャ救出」イベントが起こる場所はエロールとニーサが奉られているガレサステップである。
 #ナイトハルトが装備しているブラックシリーズの防具には耐性は一切無い。
 

 次に、アイシャの初期イベントのタイミングでタラール族に保護下に入ることを強制したのは何故だろうか?
 これも当然ヒポクリシーの出現が原因であろう。
 ローザリア王国第3代国王クラウスとタラール族長アイシャの共闘以降、ローザリア王家とタラール族は長年友好関係を保ってきた。(大全集、「クラウス論」を参照)
 ナイトハルトが流暢にタラール語を話すことができるのは、ローザリア王家ではタラール族との友好関係を続けるためにタラール語教育が行われてきたからであり、また一方でタラール族も標準語を話すことができることから、タラール族においても友好関係を続けるために標準語教育が行われてきたようである。
 

 ナイトハルト自身も幼少の頃から皇太子クラウスとタラール族の女族長のオングル討伐の逸話を聞かされ、タラール族と友好関係を続けなければならないという教育を受けてきたのであろう。
 それ故に、ローザリア王国の政務を任された後も、ガレアステップで軍事演習を披露するといったパフォーマンスを行うものの、無理やりタラール族を支配下に置くという手段をとることはできなかった。
 その結果、軍事拡張政策は思うように進展せず、それにより生じた焦りがヒポクリシーにつけこまれる隙となってしまった。
 その弱さを払拭するためには成果を得て「自分のやり方で正しいのだ!」という自信を取り戻すしかない。
 そういった考えから、ローザリア王国で長年守られてきたタラール族との友好関係を崩すという禁を冒してでも確かな成果を得ようとした結果が強制的な保護下入りだったのである。
 

 そして、救出したアイシャをクリスタルシティに招待したり、ニザムに対して「アイシャをクリスタルシティで教育する」という提案をしたりしたのは何故かだろうか?
 当然これらはアイシャを懐柔することが目的であるが、それぞれで意味合いは少し異なっている。
 前者はタラール族に直接ローザリアの文化に触れてもらうことで、その良さを知ってもらうことが目的であった。
 ナイトハルトも想定外だったことは、国王カール3世が皇太子クラウスと女族長アイシャの悲恋の逸話をアイシャに語ってくれたことであり、それによりアイシャのローザリアに対する捉え方は間違いなくいい方向に変わったことであろう。
 カール3世の昔話を聞きながら、ナイトハルトは心中で「ナイス!父上!」と感謝していたことでしょう。
 後者は無理やり保護下に入れたことに族長ニザムが心中では納得していないことをナイトハルトは理解していたので、孫娘のアイシャから説得してもらうために時間をかけてでもローザリアの文化の良さを理解してもらおうという意図があったのであろう。
 しかしながら、ニザムからしたらアイシャを人質に取られるようなものなので、断固拒否したわけである。
 

■サルーインと手を組み、イスマスをあえて襲わせた?
 本稿で述べたように、ヒポクリシーがナイトハルトに接触していることから、ナイトハルトとサルーイン側との繋がりを疑われてしまうことは仕方がないかもしれない。
 しかしながら、本稿で推察したように、ナイトハルトは決してサルーイン側と手を組むようなことはしなかったであろう。
 #ナイトハルトは彼が目標とするカール1世と同様に、人の力で野望を成し遂げようとする人物だと思われる。

 そもそも、「イスマスをあえて襲わせた」という噂にも疑問がある。
 イスマスをあえて襲わせたとして、それがナイトハルトにとってどんなメリットがあるのだろうか?
 バファル帝国との国境にあるイスマスの陥落はローザリアをバファル帝国からの侵略の脅威にさらすだけであり、ナイトハルトの「マルディアスを全土統一する」という野望に反しているだろう。

 また、時織人のルドルフの解説に「国境を挟んだバファル帝国ローバーン公の不穏な動きや、東の洞窟のモンスターの増殖に頭を痛めている。」という記述があることから、イスマス襲撃はサルーイン側と手を組んだローバーン公コルネリオが仕組んだものでは?という見方もあるかもしれない。
 しかしながら、仮にコルネリオが仕組んだのならば、権力を望む彼はイスマスの陥落を自分の手柄として誇るであろうが、ゲーム内ではそういった描写やイスマスに関わろうとする描写も一切無い。
 おそらくローバーン公の不穏な動きとは「ミニオン論V」で述べたバファル帝国皇位獲得計画に関わるものであろう。
 

 以上のように本節では「ナイトハルトは噂されているような裏で悪いことをしている人物ではない」と推察した。
 ただし、この結論は筆者がナイトハルトの「偽善」にまんまと騙されてしまったために、そのように考えさせられてしまっただけなのかもしれない。

おわりに:
 本稿では、ゲーム内では登場しない4人目のミニオン、「偽善」のヒポクリシーの存在を仮定して、その暗躍について言及した。
 あくまで筆者の推察にすぎないが、イスマスはナイトハルトとヒポクリシーの「水」のアクアマリンをめぐる駆け引きの犠牲になったというのが本稿の要点である。

 さて、以上で5本のロマ1論で展開してきたミニオン論は完結となる。
 全て合わせると膨大な文量になるが、それはロマ1の物語で出会う多くのイベントの背後にはミニオンの暗躍があったからに他ならないということである。
 ヘイト、ワイル、ストライフ、ヒポクリシー・・・ロマ1の物語を彩ってくれた立役者4名に感謝の意を表したい。


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