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黒の月、第15の太陽の日

記し人 上位神官アストリーヌ


フェリアスのアホが、赤ん坊を拾ってきた。
どうしてだか、ヤツは厄介なことに自分から首を突っ込んでいく。
今回のこともそうだ。別に赤ん坊を拾ってきて保護することは人として大切な、特に昨今の人口減少を思えばむしろ誉められたことだ。
だから別に保護自体は問題ない。それに関してはオレも口出しをするつもりは毛頭ない。
問題なのは、そう問題なのは!
事もあろうにあのバカが、その赤ん坊を自分の子として育てると言い出したことだ。
アイツが既婚者でそれもその奥さんとの間には子供が望めないとか、先立たれた奥さんが居て、尚且つその女性との間に子供がなく、次の婚姻へも踏み切れないとかっ、何かそれなりの理由があればオレだってここまで反対するかっ!!
なのに、あのくそバカは、けろっとした顔でほざきやがったんだ。
『孤児院に入れるのは可哀想だし、最初に見付けた自分にも責任はある。それにオレは子供好きだしな』
ああ、そうだろうとも。オマエはオレと違ってお優しくて、お強いフェリアス様v(館の奴等の言葉だ!)だからな!
だからって、選りにもよって《カルラーナ》になる子供を自分の子にしなくてもイイだろうがっ!
赤子自体が悪い訳ではない。だが、それが長じて後にカルラーナの剣の保持者となる運命の子なら、これ程厄介なことはない。それもフェリアス自身の館での立場を鑑みると最悪だ。
常々思ってることだが、アイツは将来館を担っていかなければならない人間だという自覚が足らなさ過ぎる。
アイツがどれだけ否定しようが、力量、人望、資質のどれをとっても申し分ない。どう頑張ってもヤツが長になることは必死で、どう足掻いても上層部はそれ以外の人間を長とは認めないだろう。
現在の長はまだまだ現役でお元気でいらっしゃるが、それでも遅くてこの十年以内には次代候補が数名選ばれ、その者達が長の直属として動くこととなる。後は長が判断されることになるが、先例から言って、その数年後には次代が選出されて新長として就くことになるだろう。
まぁ、こんなことはどうでも良い。問題なのは、次代候補であり、おそらくは次代になるだろう男が別名暗黒の騎士となる子供を実子にするということだ。
運命をも左右する子供を引き取るのは些か軽率に過ぎる。
…………不本意だが、本当は分かっている。何故、フェリアスがあの子を実子にすると言って、尚且つ自分で育てると言ったのか。ものすごくっ!!これ以上は無いと言うほどアイツの心理が事細かに読み取れる自分が嫌になる。
そしていくらむかつこうとも、アイツが何を考えて、どうしてその行動を取ったかということもハッキリと分かっているオレは、館の上層部とアイツとの双方が妥協できる申し出をすることとなるだろう。
これについてはもう諦めるしかない。
それにあの赤子自身に罪はないことは重々承知の上、捨て子という意味ではオレと同じ境遇だから、館の誰もが一瞬は怪訝に思ってもすぐに納得もするだろう。
ああ、決定だな。
はあ、アイツのせいでいつもは適当に一日の出来事を記して終わる筈の日記が心中の吐露になってしまった。
明日はいつもの定期日記にしたいものだ。

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