| 黒の月、第20の太陽の日 |
記し人 上位神官フェリアス アストリーヌは何が気に食わないのか、最近はいつも突っかかってくる。原因はあの子のことなのだろうが、そこまで腹が立つことなのか―――。 確かに、あの子はこの館で育つ方が良いとは思ってるが、別に彼が《カルラーナの騎士》だから実子にすると言っている訳でも、逆に彼が普通の子だったら孤児院に入れるという訳でもないんだがな。 あの子を一目見て、親となり守ってやりたいと思ったのがそんなにおかしなことなのだろうか。 それに多分、私は生涯婚姻をしない。そしてそのことを薄々父は察している。 そんな父に孫を抱かせてやりたかったのも事実だ。それがいけないことなのだろうか。 アストリーヌと一度ゆっくりと話をしなければならないが、今の熱くなったままのアイツには何を言っても無駄だろう。もう少し、アイツの頭が冷えて、私の話を聞く気になってくれたら一度時間を取ろう。 また一つ頭痛の種が出てきた。 最近は恒例になってしまったアストリーヌとのやり取りの後、秘書官長のソラルにさり気なく周囲には気付かれないように手招きされた。だからいつもそうした時に利用する蔵書室へと足を向けたら、すでにソラルは私を待っていた。 あの子の処遇問題で、父トルヴァンと長が険悪な仲になっていることを伺った。正直初耳でまさかと思いはしたが、長と一日一緒にいるソラルが言うのだから真実なのだろう。 はっきりとしたことは分からないが、どうも父に失言があったらしい。それに対して長はご立腹というより、お悲しみになっているとのことなのだが。 こっちは赤子のこととアストリーヌのことで手一杯だと言いたいのは山々だが、自分が原因で長と父が仲違いしていると言われればそうも言ってはいられない。 とは言え、あの人たちも大概私とアストリーヌと同じようなこともやっているなぁ。 親友同士で家族みたいな間柄だと同じような行動パターンに出るのだろうか……? ―――私も早く、アストリーヌとの仲を修復しないとな。そしたら次は長と父の仲を取り持たないと……。 頼めば一にも二にもなく協力してくれるだろうが、ソラルにも協力願おう。 |