今宵のつぶやき
私的感想
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no.20 |
『三月は深き紅の淵を』 恩田陸 |
一章を読んだ時、年寄りに翻弄される青年が可笑しくって、いつの間にか本に入り込んで自分が青年になったように感じて青年と同じ答えを出していました。老人の話す本に対する気持ちや読書論(?)はとても気持ちの良いものでした。私にも同じように思うところがあるとも思いました。二章は作家が誰であったか出雲に誘う時には出していました。きっとこの章は”誰が書いたか”が重要ではなく、どういう経緯で書き、結果どういう思いに至ったのかという事なのだろうと解釈しました。三章、ここには『三月は深き紅の淵を』は出てきません。少女たちは異母姉妹で死の謎を辿った女性が少女との約束を守り、その少女たちの事をいつか書くという話なのではないかな。そしてここまで読み進んで気付き、物語の深さを感じました。一章で「三月は深き紅の淵を」がどういった本であるのか説明がなされ、内容に似たカタチでここに表現されている・・・四人の老人が旅をする話はそのまま四人の老人の本への思いですし、失踪した恋人と友人を捜す旅の話は作家を捜す旅で、腹違いの兄に会う話は異母姉妹の話に通じてる・・・といった具合。それに”小泉八雲”かと思われる人物が必ず登場している。四章についてはなんともいえません。回転木馬状態です。グルグル廻っていますもの。それを狙っていたのなら間違いなく私は嵌りこんだようです。作中の本のKeyは柘榴だったように思われます。この本自体は”八雲”だったのかなぁ。幻の本『三月は深き紅の淵に』をホントに読んでみたいです。 |
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no.19 |
『屍蝶の沼』 司凍季 |
なんとも言えない真相でした。20年前どころの話ではなかった。怖い、あまりにも怖過ぎるし、実際にあっても可笑しくないと思いました。陸の孤島のため、原嶋一族という名士がいたため隠れてしまった暗部、騙され続ける町民。なんて話なんだろう・・・。真犯人の短絡殺人には最後に驚かされた。 |
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no.18 |
『3000年の密室』 柄刀一 |
なんなんだろ〜。意外な犯人と思えば思えるし、そうでないと思えば思える。犯人の気持ちは有りだと思う。"一番大切なのは自分の時間”。曽我部は結局どうなったの?何のためのミイラの密室なの?うぅ〜〜ん、面白かったのだけれど・・・。3000年前のミイラが殺人事件の被害者といった発想は夢(?)があるし、なかなかお目には掛かれないように思う。けれど”そういう事だったんだ”で終わってしまう。何かもう少し膨らみが欲しかったような気がしてしまった。重要なのはなんだったのだろうか。 現代社会を反映してか”コンピューター””バーチャル”といった事柄に対する事だったのだろうか。確かに価値観は一人ずつ違うのだから在宅勤務といった方向にはイイ部分はあると思うし、会議にしても何も一箇所に集まってやる必要性は無くなっていくやも知れない。真理子がずーっと抱えていた問題が解決する話だったのだろうか。それとも凝り固まった精神は何も生まないという事だったのだろうか。いろんな事象が在り過ぎてどうやら私は見失ったしまったみたい・・・で感想までわけのわからないモノになってる。 |
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no.17 |
『捜査官ケイト』 ローリー・キング |
最近ではありふれた感じのする「幼女誘拐殺人」を扱っているのですがそんな事を忘れさせてしまう。殺人事件というと陰惨な印象がある。けれどこの作品は殺人事件にはその印象があまりなく、その背景にあるものが方が悲惨さを誘いました。ボーンの半生は壮絶なものを感じます。絵を描く事がただ好きだっただけなのに取り上げられその為になお一層絵に執着していく。描く事でバランスを取りその他一切を拒絶しているようで・・・人としては生きていない感じがしました。事件が解決して瞳に光が宿った時ホッとしました。これで人としての人生がやっと始まる、そんな気がして。ケイトの頑張り屋さん振りには脱帽。女性差別、問題の起こりそうなことは人に押し付ける上役。そんな中で理解し行動する。なんか素敵でした。立ち向かう女性ではないかと思いました。彼女と恋人との事も最後で立ち向かい始めてるし。事件が彼女の人生観を変えたのかしら。犯人の執念深さには驚くものがありました。復讐の仕方もなんだか異質ですし・・・今時の事件に近い、そんな感じのする本でした。ケイトとアルのコンビの今後も愉しみです。 |
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no.16 |
『神の名のもとに』 メアリー・W・ウォーカー |
人が集まり集団となった時の怖さを感じずにはいられなかった。カルトである事と集団で物事を起こす事は違うと思う。他人を巻き込まず迷惑を掛けないのであるなら何をしようと、考えようとその人の勝手だと思う。けれど、自分以外の人を巻き込み従わせたのならば話は違うのではないかしら。集団となる物はあまりにたくさん有ると思う。社会と言った枠組みでさえそうではないのだろうか。集団の全てが悪いと思っている訳ではなく、長いものに巻かれる的行動及び言動に憤りを覚えてしまう。この作品は、カルト宗教の話を中心に人の集団化についても語っているように思いました。悪い例がカルト宗教とベトナム戦争時における国家かな。そして、良い例がデミングと子供たちなのではないかな?彼らは本当によく頑張っていもの。最悪の状況下で何が出来るか、何をしなくてはならないのかを見極め行動している。子供なりに現状を把握していたようでも有るし、生き残る術を身につける。この作家は、人の持つ心の傷がどういった方向に向くのかを書いているのだろうか?幼い頃受けた仕打ちによりモーディカイは狂信者となり、カルト宗教を主宰することとなる。心の闇は深く大きかったのだろう。しかし、それを理由に他人を傷つけて良い訳はないように思う。狂信者とはそう言ったものなのだろう?自分が一番正しいと思ってしまう。世の中に正しい事など無い様に思うのだが・・・。自分が正しいと思うほうに歩くだけで。本当の正しさを決める物差しは無いだろうに。人は皆間違いを犯しそれを正ながら生きているように思うのだけれど、違うのかなぁ?時代や環境で変わるものに正しさを求めるのはどうかと思う。あと、数が多い方が正しいなどと言うのも馬鹿げている。子供たちがこの試練を傷とせずに生きていって欲しいと心から願わずにはいられない。傷として抱えてしまい、暗い未来しか見出せなかったらあまりに哀しすぎる。新たに、イヌが登場している。このイヌもまた人と同じように傷を負っている。生きる事は、傷をたくさん作る事でも有るのかもしれない。そして、その傷とどのように立ち向かうかで人生が良くも悪くもなるような物なのかしら。あまり、深くは考えていないけれどそんな事を思ったりした。 |
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no.15 |
『処刑前夜』 メアリー・W・ウォーカー |
殺害されたのは、マクファーランドの二度目の妻だった。しかも前と同じような形で。久しぶりに面白い本だった。前に読んだ「理由」に似ている気もするが結構好きだなぁ〜リズムというかテンポがとても心地良いのだ。事件は死刑執行の1週間前に起こる。死刑囚が死刑という求刑を受けるに至った被害者の家族が殺される。しかもそれは前回を模倣していた。一体、誰が何の為に?死刑囚は、本当は犯人では無く、真犯人が居るのか?主人公である女性記者モリーはこの事件に係わった者としての使命とジャーナリストとしての使命に燃え、事件を追って行くと第2の殺人が起こる。結局、処刑されるのだけど、その場面は思わず泣いてしまった。モリ−を含め登場する人物それぞれがとても魅力的なのだ。モリ−は少女時代の傷を抱えたまま大人になった。それが、彼女の底力となっているように思う。だけれど、その一方で愛する相手との別離と生み出す結果にもなっている。この事件によりその相手である元夫で警部補のグレーディとの再会?を果たしている。この元夫婦の関係が今後どうなるのかが気になる。 |
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no.14 |
『あいにくの雨で』 麻耶雄嵩 |
人殺しの子供は人殺しなのか。親が殺人犯人と知り、子はどう生きていくのか。幸せな人間には不幸はわからない。家族とは。友人とは。学校とは。人と人の繋がりとは。人間関係の構築、人間形成の構築。考えてしまいました。闇雲に人を信じる事はひどく怖い。だけれど全てを疑う事も同じぐらい怖い事のように思う。だから失敗もたくさんしているのだとも思う。その中間でいるのはとても難しいだろうし、見極める目を持てれば良いのだろうけれど。子供の間はそんなモノは持っていない人の方が多いように思う。其れゆえ極端な行動に走ってしまい、偏った人になってしまう事もあるのだろう。でもそれはもう戻れないものなのだろうか?哀しい話だった、侘しい話だった。誰一人として救われないそんな話だった。子供達はこの後どう過ごしたのだろうか。 |
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no.13 |
『笑わない数学者』 森博嗣 |
犀川助教授の使う言葉がとても好きです。たぶん、私が使いなれてる言葉にとても近いからだと思います。読んでいても自分が話してるような妙な勘違いを生み出して不思議です・・・。とてもおこがましいですし、ファンの方が見たり、聞いたりしたら怒られそうな気もします。何言ってるのだと笑い飛ばしてください(冷汗)。さて、本題。オリオン象の答えはすぐに思いつきましたが正しいかは最後まで不安でした。こんなに簡単に出していいのかという事で。事件の方はというと「鈴木」が誰かと同一人物ではないかと疑ってみたり、博士に「宗太郎」か「基生」が化けていると考えてみたりとつい色んな推理(?)を展開し、犯人は「君枝」でどうだぁとまで・・・。でも結果は・・・またもや、討ち死に。残念なり。毎回、最近これですネ。この作品まで読んで思ったのですが森博嗣氏は事件自体は重要視していないのではないのかと。なんというのでしょう・・・トリックを思いついて話が出来るのではなくて話があってそこにトリックや事件が落ちていたという感じがして、要は人間関係なんのではないかと。そんな事を勝手に思ってしまいました。 |
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no.12 |
『不安な童話』 恩田陸 |
生まれ変わりを信じるかと聞かれれば、NOと答えると思う。信じている人を馬鹿にする気はないし、人それぞれで考えでいいのだと思う。前世の記憶を持っていると言われてもやはり答えは同じ。私はもし記憶があるとするのなら遺伝子に記憶されたモノと捕らえる。特殊な能力を持っていたために、生まれ変わりという特異な事柄が当たり前にように受け取られ真実味を帯びる。偶然が呼ぶ出会いなのだろうか。人と人との出会いは果たして偶然なのだろうか。決められた道は無いと言うのだけれど・・・。終局で語られる真実そして物語は終りを告げる。終わった事を見届けたにも係わらず、まだ本当は終わっていないと私に囁く、それは続きの話ではないとも。胸に漠然とした何かが突き刺さっていたような気がしてならなかった。それは恐怖なのだろうか? |
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no.11 |
『冷たい密室と博士たち』 森博嗣 |
大変面白かったです。最初の方で木熊教授と市ノ瀬助手の出身地が同じだったのですかさず年齢差を計算。もしかして親子だったりして〜と思ったりしました。それで最後までその事が気になって仕方なかったです。なんか間違ってるぞ>私。”純粋に推理を愉しまなくてどうする”と自分に突っ込みを入れました。ホントに上手いですよね。演出の仕方というのかしら? 読んでいて引っ掛りを感じて(嫌な意味でなく)進んでは戻りを繰り返して、それでも何に引っ掛ってるのかが自分ではどうしてもわからない。わからぬまま最終局面で納得。”あぁ、そう言うことだったの”と・・・。もう、やられっぱなしですぅ。討ち死にしました。 |