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Title:001



何も持っていなかったあの頃。
それが俺にとっての強さだと思っていた。
血の匂いとその暖かさだけが全てで、それだけが世界だった。だから、何も怖いものなんてなかった。
心に蓋をして、目を閉じて耳を塞いでいればいい。そうすればいつの間にか終わっているから。初めは、今とは違っていた気がしたけれど、それももうわからない。
一人、また一人と居なくなっていく同類達。
それもいつしか日常の一部となって、ああ、いつもと同じ繰り返しだと気に留めることも無くなっていった。



始まりは彼女だった。
声を奪われた女中。
いつも綺麗に笑う彼女の真実を知った、あの日。
そこから少しずつ、ほんの少しずつ、何かが変わっていった気がする。
今でも彼女はあの頃のように笑っているのだろうか。そんなことを思う瞬間が増えた。



そして、親友のアイツ。
沢山の知らなかった世界を教えてくれた。知らなかった感情を俺にくれた。
今でも、あの頃を思うと心が締め付けられて泣きたくなる。
けれど、その想いを忘れたいとは思わない。きっと、それはこれからもずっと変わることは無い。
でも、それでいいのだ、と思う。
だから、これがお前と俺自身を繋ぐ絆だと思っても良いのだろうか。



「……………」
閉じていた瞼を開く。
横になったまま窓の外に首を傾ける。
時刻はまだ夜半過ぎだ。
夜明けにはまだもう暫し時間がある。
ふと暖かな温度を感じて隣を見やると、そこにはピンク色の翼竜の子がすやすやと眠っていた。
「……いつの間に」
入ってきたんだ。
今夜は少し冷えるからな、と小さく微笑む。
そしてその人よりも若干温度の高い体に、その眠りを妨げぬよう、そろりと触れる。
そして、思う。
あの頃とは違う心の通ったこの暖かさを失いたくない。今度こそ、いや、今度は
「俺が守るから……」
だから、どうか
この幸せがほんの少しでも長く、長く、続きますように。
そして、その小さな温もりを感じながら再び眠りに落ちる。
いつか来るのであろう夜明けを夢見ながら。





沢山のものこの手の中にある今。
あの頃よりも強くなった自分がそこに居た。





End.



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