街の神秘と憂鬱
ジョルジョ・デ・キリコ |
 |
QとAをつくることから鑑賞を始める
|
鑑賞授業の第1回です。今回の授業の要点は、「Q&Aつくり」という授業の仕組みを、体験して理解することです。これは3年間で、計画的に、鑑賞の授業を進めていく第一歩になります。
授業は、次の2つの部分に分かれています。
| 1 Qをつくる ・・・・・・・・・・ |
作品をよくみて「気づいたこと、感じたこと、考えたこと」を質問=Qのかたちにします。
ワークシートQに記入して提出します。 (できれば自分のAを書く) |
| 2 Aをみつける ・・・・・・・・ |
Qの答え=Aを、作品を鑑賞してみつけて発表します。
今回は、4つのQ=質問を教師が出します。
Qは1つずつ出題して、ワークシートに記入したAを、発表します。
生徒はワークシートAに記入、発表後、最終的な作品の鑑賞文を書いて提出します。 |
|
生徒はどんなQをつくるのか ・・・・ 選択した4つのQ
|
この作品を第1回にとりあげるのは、Qがつくりやすいだろうと考えたからです。参考資料の中で、アメリア・アレナスは作品選択について、あまり複雑すぎない作品、少し恐いような不思議な感じのもの、物語性のある作品など、最初の鑑賞作品の選択方法を挙げています。子供が登場するのも、私が選択した理由の一つです。
始めたばかりのころは、学級全体で検討するQは、実際にその場の授業で生徒がつくったものを、毎回、回収したワークシートから選んでいました。
生徒の「Q」は、例えば以下のようなものです。(2,3年にも実施した記録からとったので、透視図法的なQもありました)
| 夜か夕方か朝か |
なぜ暗い感じ |
どこの国を描いたのか |
女の子はどこに行くのか |
| 建物の大きさは |
なぜ影の位置が違うのか |
女の子の持っているものは何か |
空が暗いのはなぜか |
| 主役は何か |
暗い場所が多いのはなぜか |
消失点・図法に関する質問 |
誰が描いたのか |
| 名前は(題名) |
一番遠景の部分は |
窓の数は |
影は男か女か |
今は生徒のQをもとにつくった、次の4つのQを使っています。
Q1 ここはどこですか?
Q2 いつですか?
Q3 中央の黒いもの(指し示して)は何ですか?
Q4 1分後どうなるでしょう? |
Q1~Q3は、生徒がつくったQから抽出してまとめてみました。
鑑賞は、個別なものを見つけ出すことから始まるので、「これは何ですか?」というQがまずあります。生徒も個々の描かれたものを、見つけ出しながら鑑賞を進めていくわけです。まず、見つめること、気づくことです。
しだいに、全体像や関係性に鑑賞が移っていきます。Q1とQ2は、この段階のQです。この段階では感じたり、考えたりしなければならないことになります。 |
生徒はどんなAをみつけるか
|
Q1:ここはどこですか? と Q2:いつですか?
の生徒のAは、以下のようなものがあります。
| Q1 |
人通りの少ない町、小さな国 |
ローマ |
夢の中 |
どこかの港
絵の奥に海があるように見えたから |
ノルウェー
夏で白夜がおきている |
ヨーロッパ
ロンドンはこんな感じだった気がする |
| Q2 |
50年から30年ぐらい前 理由は道とかがアスファルトではないから |
昼間
影が目立つから |
作者がかいたとき |
秋だと思います
なぜかというとなんか乾いている感じがするからです |
中世 |
苦しい悲しいとき。さびしいとき 空が暗い色だから |
Q3:中央の黒いもの(指し示して)は何ですか?
は描かれた個別なものに関するQですが、、鑑賞者が「何の影なのか」想像しなければならない仕組みになっていて、この絵の要点の1つだと思います。
Q3の生徒のAは、以下のようなものがあります。
としよりの影
理由は背中が曲がっていて、杖を持っているから |
女の子のお母さん
(お父さん) |
兵隊の影
それはわきに棒があるから |
怪物
細長くのびているものを口と見れば見れないことはない |
少女をおそう悪い人物 |
この時代の歴史上の人物の影 |
銅像の影
人だとすると手のところが固まっているみたいで変だから |
何かを守っているように見える影 |
はんざいしゃ
上にいる人はざんこくな顔をしていたから |
馬車の馬とムチ
それはありそうなかんじだから |
影 |
街をおそおうとしている魔女 |
Q4:1分後どうなるでしょう?
は、生徒がつくるQには出てこなかったものですが、この絵が持っている「動き」は次の場面を想像させます。Q3の解釈とも関係するQですが、生徒がこの作品から何を感じて、どう解釈し判断したかが分かります。
Q4の生徒のAには、以下のようなものがあります。
| 女の子がころんで、怪物が近づいてくる。女の子が危ない!! |
暗黒の世界になる |
かげがあらわれる |
| 女の子はわっかを転がしながら家に帰っていく。少し暗くなっている |
遊びをやめてお父さんと家に帰る |
空が明るくなる |
女の子ともう一人の男の人があって、笑顔で話してる
理由:平和な感じの絵だから、平和なイメージを持った |
誰もいなくなる |
戦争がはじまる
人が避難しているかも |
| 中世の騎士たちが、ぞろぞろと建物から出てくる |
何か神秘的な出来事がある |
雨がザーザーで女の子があせって家に帰る |
Q4は興味深いAが返ってきますが、「鑑賞というのは自由に描かれていないことを想像していいのだ」と思ってしまう生徒もいて、他の作品の鑑賞で問題が出てくることがあります。なぜそう思うのかという根拠の問題は、まだ深くは要求しません。
ここまでの「A」を考えて発表する活動は、生徒にとって楽しい体験と感じられるようです。
そのことが、次の授業へとつながっていきます。
|