中学校美術授業ノート

鑑賞授業3

叫び

エドヴァルド・ムンク

学級全体で一つのQを検討する

鑑賞授業の第3回です。今回の授業の要点は、授業の後半に学級全体で「Q&A」を行ってみることです。
授業は、次の3つの部分に分かれています。まず、授業後半に全体でQ&Aをすることを説明した後、

1 Q(A)をつくる ・・・・・ この段階は第1回同様に個人で進めます。
作品をよくみて「気づいたこと、感じたこと、考えたこと」を質問と回答のかたちにします。
ワークシート2-Aか2-Bに記入します。(実施はB4サイズの古い形式=鑑賞文欄が小さい、Qは7つ)
2 グループでQ&A ・・ 順番にQを出し、複数の友達からAをもらいワークシートに記入、最後に自分のAを言います。 
3 学級全体でQ&A ・・  教師からのQに、全員一斉に動作でAを発表します。時間があれば、意見交換をします。
この作品についての最終的なまとめの鑑賞文を書いて提出します。

有名な作品の鑑賞

この作品を見せると、たいていの場合生徒の誰かが「ムンクノサケビ!!」といいます。中学生が知っている数少ない作品のようです。そこで、いつもは最後の段階で伝える作者名と題名を、はじめに言ってしまうことにしました。鑑賞への影響はどうなるでしょうか。
ムンクは作者の名前で、ノルウェー人であること、「叫び」というのは題名であること

教師の鑑賞支援・・身体を使う方法、情報や知識への態度

1 鑑賞を方向付ける

Q$Aによる鑑賞をすることで、自分とはちがう見方、感じ方を知ることができます。グループで行うのは、親密で話しやすい状況をつくるためです。学級で行うQ&Aは、教師が鑑賞を支援し方向付けて行く手だてと考えています。

2 鑑賞の方法や態度を知ること ・・・・・ (1) 身体を使う方法  (2) 情報や知識への態度

今回、みんなで考える問題は「描かれた人物の動作を、全員一斉にまねしてもらうこと」です。短時間でお互いの鑑賞意見を知ることができ、生徒は自分と異なる友人のポーズに驚きます。その次に教師からの「なぜそう思ったのか」という問いに進んでいきます。
ポーズは 
口の前に手がある・・・・・ 叫んでいる?
耳をふさいでいる・・・・・・ 叫びを聞きたくない?
耳に手を当てている・・・・ 叫びを聞き逃さないように?
頬に手を当てている・・・・ 呆然として?
というような類型に分けられます。

次に「なぜ。そう思うのか」「絵のどこから分かるのか」を問うと、「叫び」という題名を根拠にした答えが返ってきます。

そこで、ムンク自身の言葉を伝えます。
『私は2人の友人と歩道を歩いていた。太陽は沈みかけていた。突然、空が血の赤色に変わった。私は立ち止まり、酷い疲れを感じて柵に寄り掛かった。それは炎の舌と血とが青黒いフィヨルドと町並みに被さるようであった。友人は歩き続けたが、私はそこに立ち尽くしたまま不安に震え、戦っていた。そして私は、自然を貫く果てしない叫びを聴いた。』

伝えた後で、もう一度、生徒の考えを聞いてみます。
「叫び」という題名と作品に描かれたことと、作者の言葉の関係を考えるのは、1年生にとってまだ難しいようです。

鑑賞文には、以下のようなものがありました。
ムンクの叫びは知っていたのに、よく見るとわからないことが多かった。なんだか吸い込まれそうな感じがした。この絵は、耳を隠しているように見えることを知った。他の人はほっぺに手を当てている人がいて、ビックリした。
一人歩いているときに突然自然の叫びがきこえてきて耳をふさいでいる。もしかしたら、そのせいで自分も叫んだりとか。全体に曲線になっているのは、自然の叫びを表現しているからだと思う。
私は最初、この絵は地球で最後の一人になって悲しくてさびしくて叫んでいると思ったけど、みんなの考えを聞いていくうちに、考えが変わってきました。
空間や、自分自体はゆがんでいるけど、他の人や、ヨットらしきものなどはゆがんでいないということに気づき、ムンクはどういう気持ちで描いたのかを知りたくなった。
この人は、病気かなんかでしんけいがやられてしまい、急に声が聞こえてきてさけんでいる。と思った。

生徒は「正解」を知りたがります。「先生それで本当はどうなの?」と、鑑賞の授業が終わってから聞きに来る生徒もいます。鑑賞文に「作者にきいてみたい」と書く生徒はもっと多くいます。この生徒たちの「知りたい」気持ちは重要なのですが・・・。作者の考えは考えとして、鑑賞者が鑑賞したことは大切だと思います。そこのところを、生徒にどう分かってもらうか難しいことです。私の考えでは、この人物のポーズは1~4のどれにも見えるような、曖昧さで描かれていることが要点だと思うのですが・・・。

3回目ということもあり、グループの鑑賞がかなり活発になってきます。そこから別なQがでて、検討することになる場合もあります。
50分では、学級全体での鑑賞の時間を確保するのが難しいときもあります。
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