中学校美術授業ノート

鑑賞授業6

クリスティーナの世界

アンドリュー・ワイエス

鑑賞の評価について

この鑑賞の授業の目標は、鑑賞活動の方法や態度を学ぶことです。よく見て、感じて、考えることができているか、授業とワークシートを中心に、評価をしていきます。当初の目標では、生徒がQ&A活動に参加して、ある程度まとまった記入ができるようになればよいと考えていました。3年生の後半になると、この授業を繰り返してきた生徒たちは、注意深く見たり、関心に沿って感想をまとめたり、読み解いたりすることができるようになりました。そこで、もう少し鑑賞の内容に踏み込んだ評価方法はできないかと思いました。
鑑賞したことをQ&Aと、最終的な鑑賞文にしてもらうと、返ってくる内容はとても多様です。作文の能力も差があります。どうしたらよいか考えていたところ、下の参考資料に挙げた本に、鑑賞文を分析する方法がありました。それを参考に、生徒のワークシートの文を分類してみることにしました。

参考資料
美術鑑賞学習における発達とレパートリーに関する研究 石崎和宏 ・ 王 文純 風間書房2006

授業方法の定着と鑑賞の深まり、広がり

このワイエスの作品は、上記の本で鑑賞題材に取り上げられていたことから選んだのですが、生徒には好評で、鑑賞に意欲的に取り組みました。この段階まで進んでくると、繰り返してきた方法の説明などが省略できるので、鑑賞活動に時間をかけることができます。すぐにQ&A作成が始まり、自由な雰囲気で授業が進みました。

1 Q&Aをつくる ・・・・・・ 作品をよくみて「気づいたこと、感じたこと、考えたこと」を質問と回答のかたちにします。
ワークシート2-Bに記入します。(実施はB4サイズの古い形式=鑑賞文欄が小さい。Qは7つ) 
2 グループでQ&A ・・・・ 順番にQを出し、複数の友達からAをもらいワークシートに記入、最後に自分のAを言います。 
3 鑑賞をまとめる ・・・・・・  この作品についての最終的なまとめの鑑賞文を書いて提出します。
少しの時間ですが、学級で自由な発言の時間を作りました。

Q&Aと鑑賞文を分類してみる

参考資料の本にあった鑑賞文の分類方法は、分類1~3の、3つの軸を使って3次元的にわけるものです。本には詳しい説明があって、鑑賞レパートリーの考え方も出ていますので、直接、上記の本をご覧ください。
ここでは、私が理解できた範囲でつくった、授業の鑑賞文を分類するための作業表について書きます。

分類1 鑑賞行為 1連想 2観察 3感想 4分析 5解釈 6判断
分類2 1のレベル1~3 2のレベル1~3 3のレベル1~3 4のレベル1~3 5のレベル1~3 6のレベル1~3
分類3 作品の要素 A主題 B表現性 C造形要素 Dスタイル

例えば、A主題に関する1連想を、レベル1~3に分けます。
同じようにA主題に関する2観察もレベル1~3に分けます。
以下同様、全体として72に分ける表ができます。
【Q&Aデータ】に作成した表がありますので、ご覧ください。もとの参考資料の考え方では、立体的にブロックを積むようにして、レベル1から3へと、高まっていくイメージで説明されていたのですが、表では平面化した画面の使い勝手から、下へと深まるような描き方にしました。

生徒のワークシートから鑑賞文やQ&Aの部分を分類することは、想像以上に難しいことでした。とりあえず、すべての鑑賞文ではなく、気になった文を、どこに当てはめられるか考えて入れてみたのですが、今読み返すと入れた場所がちがうようにも思えます。ただ、それまで生徒の鑑賞文を読んで、どう評価すべきか迷うことが多かったのですが、この分類表をつくったことで、手がかりがつかめたような感じがしました。
そのとき表を使って分類した、生徒の文から抜き出してみると、以下のようなものがありました。(・からが一人の文です)
1連想 2観察 3感想 4分析 5解釈 6判断
A1・フランスのどこかにありそうで草原に座って気持ちよさそう ・タイムスリップ A3・家が大切な役割をしている気がする A1・さびしい所のようにも見えるし悲しい感じの雰囲気な所にも見えました ・独特な雰囲気がでてて現実味がなくて不思議 ・せつなさや、さびしさなど暗い思いを強く感じる作品だと思う ・この絵は女の子が無人島にいていつまでたっても逃げ出せなくていつもいつもひたすら出口を目指して歩いていた女の子が疲れて寝てしまった。起きたら海を見つけて希望をもった瞬間の絵だと思った A3・女の人の身体の動きと家から女の人の距離の遠さで悲しいことがよくわかった A3・さびしい感じがする絵。女の人の背中が明るく照らされていたり一人だけでいることから、この場面は現実ではなく、女の人の頭の中、心の中みたいな感じがする。遠くの家の方向が明るくなっていたり、その方向を見てへたり込んでいることから、影の中にいて明るいところへ行けない、家族がほしいのにもういない、会えないのかなあと思った D2・絵は描くときにたくさんうまいものを描けばいいわけじゃなんだなと気づかせてくれる作品でした
A3・昔読んだ継母に捨てられる娘の童話が思い浮かんだ「マッチ売りの少女」みたいな B3・家の方に手を伸ばしているから家の人に助けを求めている  B2・天気もくもりでその女の人の気持ちを表しているようにも考えられた B2・後ろを向いているのは彼女の心情の悲しさを表している ・どこか空っぽで淋しい感じがするのは辺りに何もないからで空も薄暗いからだと思った ・女の子が建物から追い出され孤独でいるということが感じられた。そのことを表すために建物の周りに柵をつけたりたてものとの距離感を表しているのかなと思った B1・望んでいることに手が届かないといった女の人の思いを感じた。ひとり取り残されて絶望しているように感じた。 ・作者はこの殺風景な風景の中、女の人がひとり倒れている姿をなぜ描くたかったのか不思議に思う。もしかしたら作者の今までの人生を描きたかったのかもしれない
B1・作者の気持ちを表している作品なのか C2・女の人がなぜ後ろ向きになっているのか ・草の色をいろいろな色を使って描いていて遠近法などを使ってさらに陰影法などを使って立体的に仕上げている ・建物を小さく女の人を大きく描いている  C3・ここはどこなのか、誰なのか、顔、表情が見えない中で、後ろと体勢だけで私には悲しみが感じられました。 B3・暗いような背景から明るい服を着た女性はとても強調されていて、女性が輝いているように見えました B3・女性の顔が見えないからこそ見ている人にいろんなドラマを思わせる
D1・写真かと思うほど鮮明 本当に絵ですか D1・CGのような ・細かくリアルな感じ、本物のような質感 ・絵がうますぎ D1・Q:作者はどうして女の人をこの位置づけで描いたのか A:いろいろな疑問が生まれると思ったから C2・彼女は何かの理由で絶望しているのだと思いました。なぜならばよくドラマなどで悲しんでいるときの体勢だからです ・女の人の気持ちがさまざまな色で表現されているなあと思う雲の色、草の色、どちらも暗い感じであるから女の人は悲しいと思う C2・女の人の服がピンク色で他が茶色っぽいから目立っていて女の人を強調したのではないかと思った

鑑賞の評価の工夫は

生徒の鑑賞文を毎回この方法で分類することは、私にはできそうもありませんが、授業での評価と指導に、役立てることができるのではないかと考えています。現在は鑑賞1のキリコから始めたところで、鑑賞を深めていく段階にたどり着くまでは時間がかかりそうです。そのときまでには、授業で使う分類表をつくれないかなあ・・と思っています。
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